6/16/2012

牛ステーキの部位と食べ方


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夏になるとステーキを食べたくなる人たちが大勢出てくるのか、友人やその奥さんから牛に関する質問を良く受ける。当ブログのアメリカステーキは何故美味しいのかという偏った記事が一番読者を集めているようである。私自身も牛ステーキが大好きである。アメリカにも美味しい食材がたくさんある。ここパシフィック・ノースウェストでは、生牡蠣、大きな蛤、サーモン、ビンチョウマグロ(アルバコア・ツナ)、銀鱈(ブラックコッドやセーブルと呼ばれる)、ラムのフレンチラックと並び、以下の牛肉類は期待を裏切らない食材である。しかも品質の違いはあれども、どこのスーパーで何時でも手に入ると言う点で、アメリカにおいて牛肉が一番便利なグルメ食材と言っても過言ではないだろう。アメリカ人は幼き頃から牛肉を嗜んでいる為、スーパーのパッケージでどの部位をどのように食べるべきかを知っている。牛のカット法は国によって大きく異なる。アメリカのプライムカットと日本のカットが若干違うため、日本からアメリカに来て間が浅い人は、スーパーなどで牛肉購入時に戸惑うようである。ステーキ用の肉と言う事で、以下に値段順に肉の部位を並べる。










  • テンダーローイン(Tenderloin)
  • 牛肉の一番柔らかく、脂肪の少ない部位である。フィレミニョンはテンダーローインのショートローイン側(牛の頭側)の一部を指すが、スーパーによってはテンダーローインを全てフィレミニョンと表記している場合もある。理由は、御察しの通り、フランス語で呼べば高級で美味しそうに聞こえるからである。真ん中部分は、シャトーブリアンステーキに使われ、シャトーブリアン(人名を関した調理法の名)とテンダーローイン(牛の部位)をごっちゃにする人も良くみかける。この部位の筋肉は一頭の牛から僅かしか取れない為、自ずと高価になる。

     私の意見では、テンダーローインは家庭の「ステーキ料理」としてはかなり難解な材料である。焼いて塩コショウだけをかけると、かなりガッカリしてしまうのだ。高級店に行くと、テンダーローイン系にはソースがかかっている。オ・ポアブルのようにコニャッククリームソースをかけたものや、レッドワインソースをかけたものが出てくる。これらは、バターで脂肪を補っているのだ。が、家庭でこれらの味を模倣することは難しい。ベーコン巻きのテンダーローインなどもあるが、脂肪分が少なく柔らかいというキャッチがテンダーローインの売りの筈なのに、豚の脂肪分で淡白さを補うという、意図不明の料理になってしまう。公然の秘密だが、日本のステーキ屋の味がさっぱりしているテンダーローインステーキは、注射器で牛脂を注入してジューシーさを補っている。
     テンダーローインは「安物」と「高級でサシが入っているもの」で、味が天国と地獄ほど違う。ただ、サシが入ったテンダーローインを買おうとすれば、大枚をはたく必要が出てくるだろう。火を通した牛ステーキを食べる事が目的であれば、スーパーで高価なテンダーローインを買う事は避けるべきだ。ただし、テンダーローインは生肉として食べると驚くほど美味しいので、テンダーローインで牛タタキを作る方法という記事のリンクを貼っておく。テンダーローインは刺身(カルパッチョ)かタタキとして食すのが最適ではないか?というのが私の結論だ。











  • Tボーンステーキ(T-Bone)
  • このステーキはT字型の骨に二つのステーキがついており、一度で二度美味しい。小さい側は上述のテンダーローイン。大きい側は後述のショートローインである。ショートローイン側の脂肪分がテンダーローイン側の淡白な味を補う。ガーリック風味のミディアムレアで塩コショウだけで美味しく食べられる。単発で一度だけステーキを食べるとして、値段がリブアイよりも高いとなれば、私はTボーンよりも次のリブアイをお勧めする。薄く切ったものをステーキにすると中まで焼けすぎて全体的に食感がイマイチになるので、厚めの物を買いたいものだ。調理法は後述のNYステーキ(ショートローイン)と同様で良い。











  • リブアイ(Rib Eye)
  • 日本ではリブロースと呼ばれている部位である。 ステーキに詳しくなければ、リブアイを買っておけばまず後悔しない。リブアイを食べて文句を言う日本人はまずいないのだ。見た目からして、脂肪分が適度に入っており、ジューシーで美味しそうだ。家でステーキを作るなら、調理するかなり前に冷蔵庫から出し室温に戻し、調理直前に塩コショウをふっておく(ケチらない事!)。牛脂を外して溶かし、にんにくを入れて高温にする。表面を焦がし、三、四分くらい放っておくと、大概の人が喜ぶシューシーなミディアムレアのリブアイになる。「サシ(牛脂)」の量が多ければ、ちょっと長めに焼いたほうが美味しいような気がする。基本的に、赤みはレアのまま、脂はきっちりと焼く方が美味しい、と信じている。フライパンは洗わずに、野菜類や麺類をそのまま炒めると、脂肪や肉汁を余す事なく食べられる。

     脂肪分が多い為フライパンよりも直火で焼いたほうが美味しく調理できる。従って、BBQにも合う。逆に肉の中の脂肪分が多すぎるのがリブアイの欠点でもある。ニンニク抜きの塩コショウだけでも美味しいのだが、タレにつけるとより美味しくなる。この辺りの判断は難しいのだが、リブアイはステーキよりも寧ろ「焼き肉用」であるという根強い意見がある。タレに数時間つけておくと美味しく、さらに柔らかくなり、値段は張るがショートリブよりも数段上であろう。
     日系のスーパーなどで、リブアイの薄切りが売られている。あれをすき焼きやしゃぶしゃぶなどに使おうとする人は以前記述したように、肉の味が解らない可哀想な人達だ。
     肉をガツンと食べたい時はショートローイン系のステーキの方が食べ応えがある、と言うより私は次の「ニューヨークストリップステーキ」がステーキの王様だと信じて疑わない。












  • ショートローイン(Short Loin)別名ニューヨークストリップ
  • ショートローインは地域によって呼称が違う。ストリップステーキ、特にニューヨークスストリップ(NewYorkStrip)として売っている場合が多いが、カンザスシティーステーキなどと呼ばれる事もあるようだ。南部などでは、NYというヤンキーの街の名前を嫌うのか、ただのローインとして売られている場合が多い。テンダーローインと違い、大きなカットで売られている。骨がついている場合とついていない場合がある。一方の側に脂肪が固まっているのが特徴だ。早くに冷蔵庫から取り出して(季節にもよるが1時間くらい前)、室温にする。リブアイと一緒で、事前に塩コショウしておく(ケチらない事!)。余分な牛脂をトリミングして、フライパンで溶かしてゆっくりとニンニクを炒める。溶けた脂に香りがつけば、箸かトング(ハサミ)で肉を持ち、脂肪分がついた側を二分ぐらいしつこく焼く。それから、両方の表面を焦がす。そして暫くフライパンに3-4分も乗せたままにすれば完璧なレアのショートローインの出来上がり。赤みが多いので、焼きすぎるよりも生が残るくらいが美味しい。

     フライパンに油が結構残るので、麺や野菜を入れて副菜として調理して欲しい。肉は焼き立てすぐというよりも、2~3分経った頃の方が肉汁が暴れずに逆に美味しくなるのだが、勿論時間が経ち過ぎれば肉が台無しになる。従って、野菜や麺類(スパゲッティー、ショートパスタ、中華系の焼きそばなど)は肉が焼きあがる前に用意を済ませておき、肉を取り出した後は2-3分ほど炒めるだけで出来上がる状態にしておく必要がある。 物凄く貧乏臭い話だが、 ショートローインやTボーンの骨は、屑野菜と煮る事でソースやスープ用になるので取っておくことも出来る。私の一番好きなステーキと言えば、ニューヨークストリップの骨付きのレアである。ステーキは薄いと中まで焼けすぎるし、食感の変化が乏しいのでいけない。なるべく厚めのものを買って、少しじっくり目に焼くが中は少し生、といった位が絶対に美味しい。よだれが出てきた。











  • サーローイン(Sirloin)
  • 安物のレストランのステーキメニューで、日本人がアメリカでがっかりするのがサーロインステーキだ。サーロインは腰の上と言う意味であり、トップサーロイン、ボトムサーロイン(トライティップTri-Tip)とサーロインに分けられる。どれも片側に明らかな脂肪層がついているが、上述の肉のような肉中の脂肪分が少ない。日本の牛の切り方では、ニューヨークストリップなどもサーロインとなるため、サーロインが高級な肉と言うイメージを持つ人が大勢いる。が、アメリカ風のプライマルカットでは、サーロインはギリギリステーキで食べられる程度の安い部類の肉である。上述のショートローインと同じような調理法で、ステーキとして塩コショウだけで食べても悪くない。
     ただ肉質にもよるが、脂肪分が足りなかったりする為、物足りないと感じることも多い。そんな時は、醤油やポン酢、赤ワインソースなどの調味料を使い、味を誤魔化すことになる。糖分を入れて甘くするか、脂肪分を足せば、グレードの劣る肉は美味しくなる。
     私のお気に入りのメニューを紹介しよう。塩を少なめにふってサーロイン肉を少しだけ置いておく。先ず余分な牛脂をトリミングし、それを溶かしてニンニクを炒める。そして、ニンニクは焦げる前にどけておき、フライパンを高温にし、肉の四方を充分に焦がす。砂糖を1スプーン入れカラメル化させ、醤油を同量入れる。少し煮立てて、まな板の上で二分ほど放置し、包丁で切る(こうすると肉汁が溢れない)。レアな肉をサラダの上に載せるか、熱々のご飯の上に乗せて丼として食べる。トライティップなどの中には、全体に脂肪が満遍なく乗ったものがあり、塩コショウだけでもかなり美味しく頂ける。











  • 上記の肉よりも劣るもの
  • 最近ではフラットアイアンステーキやデンバーカットなど、聞きなれない肉が良く売られている。安物の肉をそのまま売ると損するので、ステーキクラスのカットとして売り始めたものだ。安いレストランではこれらの肉をステーキとして供しているようだ。ランプやチャックのステーキ用にしても、然りである。安いといっても、これらの肉はそこまで安くない。なら1ドルか2ドル余分に払って、もう少し上等な肉を買った方が満足度を総合的に判断すると「お得」と思われる。ラウンドなどで、驚くほどのサシが入った大きな肉の塊を売っている事もある。おそらくは日本でいうイチボの部位なのだが、こういうのはステーキ用としては最適だ。ただ目を鍛える必要があるので、初心者にはお勧めできない。

    プレートやフランクは基本的にステーキ用ではない。ただ、日本ではこれらの肉の一部をカルビとして扱っている。オーブンでローストするショートリブ(アバラ肉)などもこの部位から来る。だがカルビも薄切りであるように、焼くのであれば薄く切らねばならない。その上、質が落ちる肉の性で、タレに長時間浸けて肉質を柔らかくしなければ話にならない。そういった意味で、これらの肉はステーキ用というよりは、BBQやロースト用であると言えるかも知れない。たまに驚くほど上質の焼肉グレードのプレートやフランクがスーパーで安く売られているので、目を光らせて欲しい。繰り返すが、安物の肉は、基本的にたれ等で一晩ほどマリネにしてからじっくりと調理して欲しい。

    勿論、部位よりも牛肉そのものの質が味を決定することは言うまでもない。USDA(米農務省)が牛のグレード表記を義務付けている。US Prime, US Choice, US Select, US Standard, US Commercialの順に質が悪くなっていく。経験上、これらは美味しさと相関関係が高い。プライムやチョイスなら、まあ、ガッカリしない。店の牛の管理体質も味に影響するので、その店の肉が信用できるかどうかは、ある程度試さなければわからない。同じ系列のスーパーでも、店舗が違えば肉の質がかなり違ったりするものであるからだ。ワギュー、コービービーフ(神戸牛)、あるいはアンガスなどと言うのは、牛の種類であり、牛の美味しさとの相関関係は試さなくては解らない。コービービーフの癖に柔らかくない、アンガスと書いてあったが不味かった、などと言う事はしょっちゅう起こることだ。最後に、ジューシーさを求めている人が、グラスフィードと書かれている牛肉を買うと、かなりがっかりします。

    焼き加減
     焼き加減が解らないという人が良くいる。焼き加減は個人の好みの問題である。生っぽいのが好きな人もいれば、良く焼けた物が好きな人もいる。牛肉は焼き過ぎても普通に食べられるし、中が生でもお腹を壊すことはない。もし焼けすぎだと思えば次に作る時は焼く時間を短くすればよいし、生過ぎると感じれば焼き直せば良い。焼き方の好みに個人差があるので、絶対に失敗しない万人受けするステーキの焼き方など存在しない。
     個人的には、外はカリッとクリスピー、中は生に近い人肌、といった所が好きである。さらに、ステーキの厚さで焼き時間は驚くほど変わってしまう。厚い場合など、一度焼いたら20分ほど寝かしておいて、二度焼きした方が上手くいったりする。そして塩加減も意外と難しい。何度か試して経験を積むことだ。始めて牛ステーキを焼いて、自分好みの納得できるほどの焼き加減になるという事はまずあり得ないだろう。
     偉そうな事を書いている私も、未だに五回に一回くらいは自分が思っている焼き加減には決まらない。毎回同じように出来ないからこそ、ステーキと言う料理は深いのだ。こぼれ話だが、チェーン系のレストランでは、温度計を使って焼き加減が均一になるように調節している。基本的には、肉を早め(1時間くらい)に冷蔵庫から出して室温に戻しておくこと、そして高温で一気に外を焦がす事。この辺りは守った方が美味しく焼ける可能性が高くなる。試行錯誤を繰り返しながら、色々な部位のステーキを焼いて、自分好みの焼き方や部位を見つけて欲しい。そうする事で、あなたも牛ステーキの魅力に引き込まれるだろう。

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