5/26/2014

フィレミニョンを「牛タタキ」として楽しもう!

私は大昔のエントリーで、フィレミニョン(テンダーローイン)について、ステーキとしてはコストパフォーマンスに合わないと申し上げた。フィレミニョンを鉄板(フライパン)でミディアムレアに焼いて、塩胡椒をしただけでは味気がなくて詰まらないからだ。レストランのフィレミニョンには色々なソースがかかっているが、あれらを家庭で再現するのは難しい。

しかしフィレミニョンを「牛のタタキ」だと割り切り、生肉ないしはブルーレアとして食べれば、こんなに美味しいものは無い。欧米の田舎町に住んでおり、新鮮な刺身用の魚が手に入らないような人にとっては、フィレミニョンは「日本人好みの赤味の刺身」として重宝できると思う。

それでは、フィレミニョンのタタキの作り方を論じたい。まず、フィレミニョンをスーパーで買うのだが、大きめの物が良い。小さいと、焼いた時に火が通り過ぎて、牛タタキにならない。そして、完全な赤い肉よりも、右の写真にあるように白い筋(つまり脂)が多い物の方が美味しい。そういうサシ入りの物は値段が高いだろう。小さな二切れで25ドルとか、そのくらいするかも知れない。牛肉の美味しさは新鮮さとは相関性が薄いので、アメリカ在住の人ならばスーパーマーケットの「Manager’s Special(安売り)」を買ってお金をセーブするというのも賢い選択であろう。


ミディアムレアステーキにする場合は、最低でも食べる1時間くらい前には冷蔵庫の外に出しておいた方が良いのだが、中身が生の「タタキ」を作るので、まあ調理30分くらい前に外に出して貰えば良いだろうか?調理した後に、中が「冷たいまま」という事だけは避けたいが、そこまでこだわる必要もないかと思う。冷凍したものを使う場合は、調理時には完全に「自然解凍」できている事が必須である。ステーキを作る時には電子レンジで解凍しないで欲しい。何故なら、電子レンジはステーキの内部を温めるので、肉が台無しになってしまうからだ。夕食で食べるなら、お昼ごろに冷凍庫から肉を取り出しておくとかして、自然に解凍する必要がある。

さて、調理前にケチらずに塩胡椒をしたならば、後は焼くだけだ。

フライパンを用意する。フライパンには「ちょっと多め」の油を敷く(最低でも大匙3杯)。油をしかないと焦げるし、味が淡白になりすぎるからだ。牛肉を焼くのであれば牛脂で焼くのが一番素材を大事に出来ると、私は考えている。ただし日本とは違い、欧米ではステーキを買っても牛脂をつけてくれない。そこで、リブアイなどを買った時に、余剰についている牛脂を冷凍庫で保存しておき、赤味の多いステーキを焼くときに使う事にしている。ベーコンを使う人もいるが、あれは邪道だ。バターを使うと後述の「日本人好みのソース」と喧嘩してしまうので、これもダメ。胡麻油は醤油系ソースとは相性が良い。意外に美味しく仕上がるのが、テンプラなどの揚げ物に使った後の油である(極端に古いものは駄目)が、調理する人にとっては匂いがキツイ。まあ、ベジタブルオイルでも、オリーブオイルでも、何でも良い。

さて、大蒜(ニンニク)を二かけほどスライスし、弱火でじっくりと油に味を移す。この時にあまりフライパンの温度を上げ過ぎない事!大蒜が焦げてしまう。ニンニクがキツネ色をすれば、大蒜を取り出し、強火にして油の温度を一気に上げる。そして、肉を入れる。1分半ほど肉に触らずに待つ。そして、焼いた側をチェックする。完全に「クリスプ(表面がカリッとなる事)」になったと思えば、裏返す。そうでなければ、もう少し焼く。裏返して2分ほど触らずに待つ(肉を入れてフライパンの温度が下がっているので、裏面を焼く方が通常は時間がかかる)。そして、同じように焼いた面をチェックする。OKであれば、横を焦がしていく。フィレミニョンは太いので、横側すべてにきちんと焦げ目をつけていきたい。その後、好みの問題だが、フライパンの上で適当に何度か裏返したり、押してみたり(フィレミニョンは軟らかいので、結構ぺちゃんこになる)して、出来上がり。理想は、肉の内部が生ではあるが、人肌より若干高くなっているくらいが一番おいしいような気がする。

肉を焼く理由は二つだけだ。一つ目は、表面をクリスプに焦がし、食感を良くし、肉汁を閉じ込める。二つ目は、牛肉の表面についている雑菌を殺す。タタキである以上、中は生でないと美味しくないので、二つの目的が達成された時点で肉をフライパンから引き上げる。つまり、焼き過ぎると台無しになるという事だ。ただし、厚いフィレミニョンを使えば、焼きすぎたくらいでも中まで火が通らない。料理に自信がない人ほど、厚めのフィレミニョンを使った方が良い。

肉をマナ板に載せる。そして、最低二分ほど待つ。そして、焼き肉に出てくるくらいの太さに切る。で、出来上がり。これをサラダなどと一緒に食べてください。肉は、表面に塩味しかついていないので、お好みのソースをかけることになる。どれが一番あうとかは、個人の問題なので、色々なソースを食卓に並べた方が良いと思う。レモンや刻み葱、すり生姜、大根おろし、パクチー(香菜)なども一緒に出して欲しい。炊きたてのご飯も忘れずに。フィレミニョンのとろける様な食感を楽しめる事だろう。(右の写真の肉は、正直焼き過ぎである。ここまで焼けば、刺身好きの日本人にとってはがっかりした食感になってしまう。)

以下に家庭で手に入る日本人好みのソースを列挙する。

1) わさび醤油(ワザビと醤油の日本人の定番)
2) 生姜醤油(醤油に生姜のすりおろし)
3) ポン酢+大根おろし
4) ゴマだれ(炒ったゴマをすって、醤油とすし酢を少々。でも、市販のゴマダレを買った方が「味の素」が効いていて美味しい)
5) タイ風ナンプラー味(ナンプラー大匙3、すし酢1、砂糖小匙1、生姜すりおろし、ニンニクすりおろし、香菜、ネギ)
6) スイートチリソース(アジア系のスーパーなどで売っている。右の写真を参照。甘く、全然辛くない。サラダや生もやしとも合う)
7) バルサミコソース(安物のバルサミコを小さなフライパンで熱し、容量が三分の一になれば火を止める。蒸発しすぎるとフライパンがダメになるので気をつけて。甘酸っぱい。一口目はとても美味しいが、すぐに飽きます。)
8)邪道ではあるが各種焼肉のたれ(味の素が効いていて、いい感じです)
9)アメリカのスーパーで売っているホースラディッシュ入りクリームソース(「洋食」として食べるのなら美味しいですが、ご飯には合いません)

このレシピを食べて「牛ステーキ」は美味しいとは言って欲しくない。これはあくまでも「牛テンダーローイン(フィレミニョン)のタタキ」である。ミディアムレアに塩胡椒をして、フォークとナイフで食べるステーキとは意が異なる料理である。

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