12/30/2012

時間切れ間近。財政の崖問題:バッドディールよりはノーディールを望む


フィジカル・クリフ(財政の崖)の問題が大詰めを迎えようとしている。年末の期限までに決められなければどうなるのか?ブッシュ政権下で導入された大型減税策が2012年末で期限切れとなり、このまま新年を迎えると自動的に増税となる。さらに、大規模財政赤字削減が強制発動され、国防費を中心に10年間で最大12000億ドルの歳出削減が実施される。

テレビをボーっと眺めている人にとっては、「財政の崖」は早急に議会が折衝して法案を通すべき問題であるのかもしれない。対策をとらなければ米国経済はマイナス成長となる可能性が高く、景気後退に陥る危険性がある。だからこそ、バーナンキがこの問題を大袈裟に財政の「崖」などと比喩したのである。法案が決められないのは共和党がサボタージュをしているからであり、オバマや民主党が選挙で勝ったのだから、わがままを言わずに早急に通せば良い。CNNなどを見ているとこういった意見が主流のようだ。

年末までに議会が何も決められず「財政の崖」から落ちる事態になると、具体的にどのような結末が待っているのだろうか?年収が500万円程度の個人であれば17万円ほど、子供が二人いる家庭であれば19万円ほどの増税となる。年収が2000万円程度の個人であれば75万円ほど、子供が二人いる家庭であれば63万円ほどの増税となる(1ドル100円で計算)。かなりの額である。さらには、健康保険、教育、失業保険などへの歳出が減らされるため、それ相応のサービス低下が発生する。失業保険は減らされ、職がない人には厳しい。住宅ローン減税なども下げられ、負担が増える。

様々な助成金も削減される。例えば酪農家に対する助成金が国から来ており、それがなくなってしまうので、ただでさえ日本より高くて不味い牛乳の値段が倍増する恐れがあるとされている。

連邦政府(国)から州政府に多くの金が流れているため、州ごとに色々な影響が考えられる。カリフォルニア州など一部の州では、税金から州へ行く額が増えて、州の財政の足しになる。ただ州税に関しては不確定要素が多くなるため、納めすぎた税金の返還が遅延する可能性が言われている。

一部の州では相続税が「いきなり」復活する。年を越えて親が死んだ家族は大損する。どうせ死ぬなら大晦日までに死んで欲しいものだ。一番の問題は企業の特殊減税措置のうち失効したり変更されたりする物が出てくることだろう。株の配当に対する税金もあがる。すると株から他の資産、例えば国債に資金が流れ、株価が大幅に下落することが考えられる。

ただ長期的な財政の問題は劇的に良化する。アメリカも日本と同様に歳出過多が続いており、早晩に財政問題に手をつける必要がある。現状ではFRBのツイストオペレーションにより長期国債の利率は物凄く低止まりしているが、景気低迷時に長期利率がじわじわと騰がりかねない事態は、どこの国でも歓迎されない。

シーホークス対ラムズの消化試合を見ながら、現在この文章を書いているのだが、時間切れの時計は30時間を切った。新しい法案には、ミュニシパルボンドの配当に課税する、など個人的に嬉しくないような案も含まれているようである。財政問題の小手先の改悪をすると、アメリカもそのうちスタグフレーションや財政破綻に直面してしまうだろう。

個人的な見解として、ノーディール(取引なし)で財政の崖を落ちる方がバッドディール(悪い取引)よりはマシだと考えている。アメリカの長期的な発展のためには思い切った歳出カットと増税は避けて通れないからだ。下手にデット・シーリング(債務限度)を取り払うなど、政治家好みの政策にすると、再び米国は国債の格付けを落とされる事態になる。政治がこじれたフリをして、財政の崖から態と転落し、財政問題を解決すれば、その後の政策決定が比較的簡単になる筈だ。

まあ年末までに同意できなかったとしても、大袈裟にいわれているような崖から落ちてしまうイメージではない。一月から影響が徐々に出始めるが、なんらかの同意がなされれば影響はとても小さなものに抑えられる。

短期の利をとり長期的な凋落傾向を選ぶのか、短期に苦しみ中長期の問題解決に向かうのか?残念ながら、多くの人が前者を選んでしまうから民主主義に財政問題は任せられない。

仮に「財政の崖」問題を一部解決したとしても、来年二月には再びデット・シーリングが来る。DCは再び民主党と共和党の間でカブキダンスを踊る事態になるのだろう。長期的な視野に基づいて、アメリカ全体の繁栄だけに目的を絞って政策決定をして欲しいと願う。アメリカの場合は、(日本とは違って)政党の後ろ立てに優秀な頭脳があるので、そういった人達の決定は最善である、と信じたい。だから私は気を病むことなくフットボールを観戦する。ゴー、シーホークス!

12/28/2012

神風特攻を目指す麻生財務大臣

DCのヤラセの歌舞伎ダンス、「財政の崖」討議には辟易とするが、それが色褪せるほど日本の話題が金融界で活発に議論されている。日本の金融問題が世界経済の卓上に上がるのは久々の事であるが、必ずしも良い意味で上がった訳ではない。専門家の意見は、日本は最後の賭けをするつもりのようだという事で一致している。この社会的な実験次第で、今後の世界債券市場がひっくり返る可能性もあるからだ。

まさに実験が始まろうとしているのだが、麻生氏が次期財務大臣となったのは、非常に面白いと考えている。外国のメディアに対しても、かなり目立っている。安倍氏が首相に再登板したのを見て、自分も財務大臣として活躍する事で、再登板を狙っているのかも知れない。

財務大臣としての会見が開かれたようだが、報道のされ方に非常に違和感があった。会見にのぞんだ記者の質問のレベルが低いのはいつものことであるが、「一段の金融緩和が、世界的な通貨安競争に発展しかねない」という意見に対して麻生大臣はどう思うのかを問われた。

こういった意見に対して「通貨は市場が決めている、私たちは日本の経済成長のために仕事をするだけだ」と言えば良かったのに、麻生氏は反米自虐史観のような意味の解らない受け答えをした。さらに、円安傾向に対して他の国に兎や角言われる筋合いはない、と取られかねない発言をしたようだ。そして、日本の事に干渉するなと言った矢先に、ドルが強くなる事がアメリカの利益である、とアメリカには意見したとされる。これは、ブラジルの大統領ではなく、日本の新しい財務大臣の意見であるのだ。

初めに、記者が質問した「カレンシーウォー」などというのは投機筋が作り出した作り話である。通貨が切り下がる事で喜ぶ産業がある事は確かだ。必要以上に通貨が高くなりすぎると(日本の様に)弊害もある。しかし、通貨安を国の意志としている国など発展途上国だけである。アメリカがドル安を、イギリスがポンド安を望んでいると言った意見が流布されているが、陰謀論以外の何物でもない。中央銀行の政策に対してシティーやウォールストリートの色々な意図が働いてポンド安やドル安に誘導していると言うのが実態である。ドル安やポンド安が政治の意志であり、日本はセーフヘイブン、などとメディアで吹聴しているのは投機筋が儲けるためである。しかも、会見の冒頭には「最近の円高は投機筋の行き過ぎた行動」と述べた矢先に、投機筋のプロパガンダを繰り返したのだ。麻生氏の実力が解るひとコマであった。

最近、安倍や麻生の発言を報道する際、CNBCのアンカーなどはあきれ加減に笑いながら報道している。コメントを求められるゲストも、苦笑しながら解説しているのが面白い。普通の経済学で考えて、安倍-麻生路線はぶっ飛んだ神風特攻にしか映らないのだ。つまり「アベノミクス」は絶対に失敗すると見られているのだ。しかし、それに乗りかかろうとしているのだ。

財政の崖の問題は残っている物の、日本売りは加速し、安倍や麻生が思っている通り、円安は進んでいくだろう。この流れをどこで止められるのか?私たちも恐々と波に乗るしかないのだろう。絶対に崖から落ちるチキンレースと理解しながらも。「2013年の世界ファイナンスニュースの中心は日本になる」、そういって憚らない人達が大勢出てきた。現状の財政状況下での円安誘導と財政出動。経済を齧った事がある人で、これをヤバイと思わない人はいないと思う。

日本の神風特攻「アベノミクス」が凄腕のミセス・ワタナベを含む投機筋に弄ばれて、或いは一般人の理性的な防御策が日本売りを加速させ、インフレ傾向にブレーキがきかなくなった場合、元首相のアホ二人が責任を取ってくれる訳ではない。コントロールできずに破綻するよりは、霞ヶ関が体力のあるうちに人為的にハードランディングさせようと企んでいるのかもしれない。自爆政策を遂行するには、少し知能指数の低い元首相二人を担ぐことが都合が良いという事なのかもしれない。

12/24/2012

シーホークス、プレーオフ確定。我等のルーキーQBラッセル・ウィルソン

2013-2014シーズンについてはこちらから。この記事は2012-2013シーズンの物です。
シアトル・シーホークスが、QBのアレックス・スミスを欠くサンフランシスコ・フォーティーナイナーズをシアトルのセンチュリーズ・フィールドであっさりと4213で下して、二年振りのプレイオフ進出を手中にした。

同一リーグの好敵手との試合という事で、ゴールデンチケットとなった1223日の試合である。シアトルでは、チケット売り場から一定以上離れてさえいれば「ダフ行為」は合法である。ダフ屋やネットオークションによって、この日のチケットは一番安いチケットで197ドル。平均は457ドルとなった。中には、2000ドルで買った「バブリー」な人もいたようである。

昨年はクオーターバックのジャクソンが話しにならず、テネシー・タイタンズに移ったハッセルバックの穴を埋められないまま、シーズンはあっさりと終了した。

今期は誰をクオーターバックで使うのかも不明なまま、プレシーズンが始まった。監督のピート・キャロルはグリーンベイから獲ってきたマット・フリンではなく、なんとルーキーのラッセル・ウィルソンをQBに指名したのだ。背が低いウィルソンは、ドラフト三巡目での指名であり、そこまでは期待されていなかった。昨年のジャクソンよりは断然に良いまでも、ルーキー特有の甘い試合が目立ち、二歩進んで三歩交代するような内容のフットボールが続き、44敗で10月を終えた。シーホークスはウィルソンでは勝てない、などというスポーツアナリストも現れた。

しかし、そこからである。ラッセル・ウィルソンは持ち前の機動性に富んだ動きを生かす。しかも、パスの精度が確実に上がってきた。ここぞと言う時には大きなプレーまで決めるようになる。フロリダで惜しい星を落としたものの、シーホークスの連勝が止まらない。12月に入ってからは無敵である。アリゾナ相手に580という高校生VSプロのような点数差を決めると、カナダのトロントでのバッファロー戦では二週連続で50点という恐ろしい鬼記録を残す。

そして、相手は手負いだったと言うものの、同地区一位のナイナーズを下し、プレーオフ進出を決めたのだ。圧倒的な内容であった。コーチであるピート・キャロルも大はしゃぎである。

ラッセル・ウィルソンは、白人と黒人のあいの子。会見では白人のような喋り方をし、物凄く知性が溢れる。白人のごつい奴が多い中で、有色の小さなQBという珍しいポジションを取り、かなりキャラ立ちしている。このシーズンを通して、ラッセル・ウィルソンのファンになりました。ラッセルウィルソンのおかげで、タイトエンドやランニングバックの動きすら良くなっている節がある。今年のシーホークスを文字通り「変えてしまった」と言えよう。まさにサプライズである。

さて、ルーキーオブザイヤーはRGIIIこと、ワシントン・レッドスキンズの黒人QBで駄目チームをプレーオフに導こうとしているロバート・グリフィン三世で確定かと思われているかも知れないが、ラッセル・ウィルソンも十分な資格を持つ。どころか、ペイトンマニングが抜けた後の最下位インディアナポリス・コルツをプレイオフに導こうとしているスタンフォード出身のQBアンドリュー・ラックを含めて、今年はルーキークオーターバックの当たり年である。三つ巴のルーキー・オブ・ザ・イヤーになりそうで、レベルの高い争いである。

さて順調にこのままいけば、プレーオフの第一戦はロバート・グリフィンIIIのレッドスキンズとシーホークスがDCで対峙する事になるかも知れない。ルーキー同士の真打ち対決の様相も呈する。「期待通りの黄金ルーキー」対「小さな雑草の新星」。かなり面白い試合になる事請け合いだ。楽しみが増えてきた。

12/16/2012

予定通り安倍氏が再選。市場はリスクオン。短期間で儲けられるだけ儲けよう!

「アベノミクス」は歓迎である。方向が明確に定まっており、市場が動くのが確実なので、波に乗るだけで儲かるからだ。円安と短期間の株高路線は疑う余地がない。私もその線でポジションを取っている。投資家らからすれば、こんなにありがたい政治家は今までいなかった。安倍氏はまさに兜町、輸出製造業そして土建屋のヒーローである。

ただ、投資家の儲けは必ずしも日本の経済成長に繋がらない事がポイントであるし、その事については何度も当ブログで書き続けてきたので省略する。が、日本経済がスタグフレーションで酷い事になろうとも、短期で儲かれば良いと考えている人が大勢いるのだろう。日本人もアホじゃないので、投票率が低かったのは、こういったふざけた意思が完全に国民に見透かされており、安倍首相を積極的には支持できなかったのが原因である、と信じる事にしたい。

選挙戦略のための口先だけであり、実際に安倍氏が「負けるのが見えている危険な賭け」を実行しなければ、それは素晴らしい口先介入だった、となる。不要な民主党議員の首を切って、口先だけでモメンタムを変えて、メデタシ、メデタシとなる。ただ、日本のマスコミの嫌らしさは半端ではないので、そんな事は許されないと考える。安倍氏が一年以上総理大臣の椅子に座りたければ、言った事を実行するしかないのではないだろうか?安倍氏は前回の反省もあり、有言実行してくる可能性が高いと思っている。

外務大臣と財務大臣は将来の首相候補にやらせて来たのが自民が強かった頃の伝統だ。ただ、余裕がなくなって来たのか、昨今はこれが崩れてきた。麻生元首相を財務大臣に据えるなどと言った無意味な人事案が出ているようだが、危険なアベノミクスを実行するためには余程のリーダー力を持った識者をこのポジションに置く必要があると思う。或いは、失敗が見えているので使いやすい人を持ってくると言う考え方もあるだろう。

日銀総裁人事はさらにややこしい。白川総裁は切るのが確実であると考えられており、来年三月の二人の副総裁を初め、ハト派で固めるようだ。竹中平蔵教授のような人の名前も出ているようだが、マクロ経済が専門でない有名人に白羽の矢を立てても仕方ないし、本人も辞退するだろう。次期日銀総裁は史上最低の日銀総裁の称号が授与される可能性が高い。アベノミクスを押し付けられて、日銀バランスシートを毀損しなければいけない事が解りきっている。はっちゃかめっちゃかな政策を駆使しなければ、名目物価高3%など達成しようがない事は火を見るよりも明らかだ。そういったシナリオの上で日銀総裁の椅子に座りたい人がいるとすれば、変人かアホかのどちらかだろう。

日銀に失業率の改善まで押しつけるという話もある。アメリカのFRBは既にそうしているのだから、日銀もするべきと言う事だ。こういった言論をする人達は、経済学を理解していないだけではなく、国際間の社会情勢を全く理解していないと言うしかない。日本の労働市場は硬直的であり、アメリカの様に柔軟に従業員のクビは切れない。フィリップス曲線が何を動かすのかをしっかりと考える必要があろう。これは少し長くなるので、次のコラムで書く。

いずれにせよ安倍氏が有言実効すると、円安と短期間の株高が巻き起こる。過去数回の選挙の後の様に、選挙が終わったら材料が出尽くして株価は下落、という事はないと思う。安倍氏は「過去の失敗」から学んだ筈なので、本当の意味での「痛みを伴う改革」は封印し、バラマキをもたらし、財政状態をますます悪くすることがほぼ確実である。

やがてスタグフレーションで我が国は次の5年ほどは血を流す事になる。スタグフレーションの話は少し先の話なので、今は、まあ短期間しか続きませんが、儲けられるだけ儲けて、状況が悪くなってきたらお金を逃がしましょう。私は選挙にすら行っていません。他の国民が選んだ首相が面白い事をするようなので、短期の利益を追求すると言う理性的な行動を取る事には文句を言われる筋合いはありません。

12/14/2012

大韓民国大統領選。保守本流の朴槿恵と左派お笑い候補たち


2012年は選挙の年だという事で、中華民国から始まって、ロシア、フランス、アメリカ、中国と色々な国の未来について占ってきた。最後を締める筈だった大韓民国だが、まさか日本が先に政権交代を果たす事になるとは思わなかった。

韓国の大統領選に関して言えば、もし大韓民国の人々がまともであるとすれば、朴槿恵が儒教の色が濃い北東アジアで、近代史において始めての女性の国家トップとなる事になる。左派の文在寅は泡沫お笑い候補の極左・李正姫のせいで、反李明博票を取り合いする。結果は、朴槿恵にまともな票が流れる事となろう。レイムダック化を必死で防ごうと反日カードを切らざるを得なかった月山 明博さんだが、振り返ってみると韓国の歴史上でもトップクラスの大統領であったと思うのだが、どうだろうか?

朴槿恵が大統領の座につけば、お決まりの前任者逮捕は今回は起こらないのではないだろうか?ただ、韓国は大統領の任期が51季のみであり、政権末期は政権が必ずレイムダック化してしまう。この制度を変えないことには、韓国の民主主義は成熟しようがない。

大統領選を見ていると、衆愚的なパフォーマンス合戦が目に付く。さらに、候補者やメディアの国際常識の欠落した韓国でしか通用しない常識がやたらと目に付くのだが、まあ、そういう事は敢えてこの記事では書かない事にする。民主主義が衆愚的になるのは、どこの国でも仕方ないものだ。東アジアの発展のためにも、是非とも朴槿恵候補に頑張ってもらいたい。

12/08/2012

ワシントン州でついに大麻解禁!注意点など

仮にあなたが大麻草を吸うためにシアトル旅行を画策している場合、下記の理由で、早くとも2013年12月までシアトルを訪れる事はお勧めできない。残念ながら、現時点では旅行者が気軽に大麻草を手に入れられる環境にはない。

ご存知の様に、ワシントン州では議案502が州民投票により可決されたため州法の下、2012126日より21歳以上の成人が1オンス(約28ミリグラム)以内の大麻草を保有しても違法ではなくなった。スペースクッキーや72オンス以内のマリファナ使用液体類、例えば大麻オイルなどについても保有が認められる。議案は1年の期間を経て、マリファナの流通や栽培、販売に関する免許制度を構築する、としている。

シアトル市内においては語弊があるかも知れないが、既にマリファナの所持や使用に関しては半ば認められていた。2003年以降、40gまでのマリファナを個人の使用目的で所持する事に関して、法執行をしないという、灰色のシアトル市「議決75」と呼ばれる条例があったのだが、今回のワシントン州「議決502」により、少なくともシアトル市条例とワシントン州法の間にあった法のグレーゾーンが消し去られた形となる。

現時点において医療目的以外のマリファナの売買は違法である。ただし使用や保有に関しては州法下では問題がない。シアトル警察は大麻草に関しては、連邦法を無視して州法を遵守する事に決めた。ただシアトル警察は、連邦政府による法執行についてはシアトル警察の管轄外であり、これを予測もしくは制御する立場にはない、という見解を発表している。極端な話、ワシントン州内でマリファナの使用をすると、連邦政府の管轄であるFBIに検挙される可能性があり得る。連邦政府(国)がどう動くのかはこれから見極める必要があろう。

マリファナの保有は認められるものの、公共の場でマリファナを他人に見せることは出来ない。ワシントン州ではマリファナを公共の場で使用することも、公共の場所で飲酒ができないのと同じ理由で禁止されている。逮捕はされないが違反者には切符が切られて罰金を課せられる事になる。禁煙区域において(玄関から数フィート以内など)、マリファナを喫煙する事はもちろん違反となり、罰金の対象となる。

ワシントン州は、2013年の12月1日を目処に販売などについての法整備をするとしている。つまり、来年の年末までは医療目的のマリファナを除き、ワシントン州内でマリファナを栽培したり購入する事は違法となる。嗜好目的のマリファナを合法的に購入する事は、免許制度が整備される2013年の12月までは出来ないのだ。従って、現在のマリファナの保有は違法な闇マーケットを通している。従って、今後一年間は大麻草使用に関しては灰色の部分が多くなり、マリファナ所持や使用が警察に発見された場合、なんらかの口頭の注意を受ける可能性があるらしい。逆に、2013年の12月1日からは免許を持つ大麻販売者からのみ、合法的に嗜好目的の大麻を購入できる。それ以降でも大麻を免許のない闇ソースから買う事は違法である。

未成年(21歳未満)のマリファナ使用は厳格に禁止されている。使用が発見されれば直ちに逮捕される。21歳未満の未成年者は絶対にマリファナを使用したり所持したりすることがないよう、注意して欲しい。

マリファナを使用した後に車などを運転をすることは出来ない。運転を止められた際に、警察や警察犬がマリファナの使用を疑った場合は、血液検査を受けさせられ、これは拒否できない。現時点では、1ミリリットルの血中に5ナノグラムのTHCが検出された場合は、ドライブ・アンダー・イントキシケーション(DUI)となり違反切符を切られるか、豚箱行きとなる(この数字は今後変更されることが濃厚と言われている)。マリファナ使用によって事故を起こした場合は、飲酒事故と同等に厳しく罰せられる。

日本国籍を保有するものは、「法の理論的」には日本国の大麻取締法の影響下にある。「大麻から製造された医薬品の施用を受けること」はできない。及び「大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は」、五年以下の懲役となる。これらは、刑法第二条に従うため、「日本国外において」も「すべての者に適用」される事となる。(笑)

こういった事を理解したうえで、ワシントン州の大麻草の合法化を盛大にお祝いください!

注意:このブログの内容は2012年12月8日現在に解っている事のみを著者の法解釈と伝聞により書き綴ったものです。法律は頻繁に変わります。法は異なる解釈をする余地があり、著者の解釈が適当でない可能性があります。このブログの内容について著者は一切の責任を持ちません。なお、当記事は大麻使用を推奨する目的で書かれたものではありません。

12/03/2012

リフレ政策で日本経済崩壊(7):社会は国民がつくるもの、クレームは何も産まない。

日銀など政策決定者の本当の政策目的は、長期金利が高騰しないようにすることであるのだと思われる。長期金利の高騰は、金融機関における巨額の損失発生だけではなく、日本国中の資産価値を下落させるという破滅的な影響をもたらすからである。そのために日銀による長期国債の購入が必要なのだ。しかし、その政策が長期金利を低下させるにあたり、副作用として物価は低水準に留まっている(いわゆるデフレ)。この方法以外に、財政赤字の多い日本が生き残る道は考えられない。白川総裁はそれを完全に理解しているのだが、市場の暴走を恐れて手の内をばらす事はできない。よって、ああいう奥歯に物が挟まっているような態度を取っているのだろう。白川総裁が日銀の総裁であり続け、きちんと独立性を保たれた上で意思決定をしてくれるのであれば、「最悪の事態」だけは回避できそうであった。 

しかし、ここに来て政権交代である。クレーマーになる事は容易い。特に民主党を批判する事はアホにでもできる。自民党は漁夫の利であっさりと政権復帰を果たす事になりそうだ。ただ安倍首相の遊説を掻い摘んでチェックしていると、上記の日銀政策を無視して物価上昇を政策目標として掲げているのだ。それは非常に危うい。 日本の財政については回復不可能であると考えるに至っており、遅かれ早かれ長期金利は上昇し始め、円は暴落する。どうせ日本経済はハードランディングに陥るので、どうでも良いと言えばそこまでなのだが、それでも安倍首相の金融政策については危惧している。安倍氏はネット右翼化したのか、過激な政策を提言している。大方の識者は、これを口先だけの実現不可能な政策と捉えているようだが、マーケット的には様々な思惑が生まれやすい「面白い」環境になっており、評価は立場によって変わってくると思う。 

12月16日の選挙の後、間違いなく自民党に政権が移譲され、安倍氏が次期首相に返り咲く事だろう。安倍氏が言っている政策を仮に実行すると、日本財政は間違いなくハードランディングする。今言っている政策を実行しなければ、来年の参議院で自民党はボロ負けし、再び国会が捩れる。またもや一年以内に首相交代であろう。 私がこのブログ上に書いている事など、ほとんどのエコノミストにとっては常識の範疇である。ただ、どのような結論が日本マーケットに待ち伏せしているのか、非常に興味深い。

いずれにせよ、日本型の民主主義が非常に脆く危ういものであるかを皆が知るようになった事だろうと思う。政治家は自分の身の上が第一であり、国民の事などを真剣に考えている節もないし、考える能力もないようである。政治不信と財政問題は、落ちるところまで落ちなければ仕方がないようである。

 最近はCNBCに張り付いて、毎日冷や冷やしながらマーケットを注視しており、本業が疎かになっている。クリスマス前の忙しい時期であるので、一旦このあたりで国債崩壊に関する連載は打ち切ろうと思う。「安倍さんはアホだ。」「日本の財政はとんでもなく悪く、解決のしようがない。」「金利が騰がれば資産価値が下がる。」私は、識者の中では常識の事柄を主張しているだけだ。そんな解りきった事を、一銭にもならない匿名ブログの上に書いている私は、間違いなく安倍さんよりもずっとアホである。しかもアメリカに滞在しているのを言い訳に、選挙権すら行使しないつもりである。どうしようもない最低野郎である。 

それでも、何故このような記事を書くのか?それは長期金利が騰がって資産価値が下がって日本経済が酷い事になったときに、日本国民に「想定外」という言葉を使って欲しくないからである。公共事業やハコモノバラマキ政策を認めた事も、銀行に公的資金を入れずに不良債権問題を長引かせた事も、小泉改革を否定してバラマキを再開させた事も、頭のおかしい反資本主義者を首相に仕立て上げた事も、総ては民意であった。今回の選挙で自民党を選ぶという事も、公共事業の増加や安易なリフレ政策を民意で追認するという意味である。よって、国民が日本経済のハードランディングを選択するという事なのだ。これは想定外ではない。民主主義の我が国においては、国民が私たちの国のあり方を決定している事を決して忘れないで欲しい。 

批判するための批判、或いは現実解決策に対するモラルを盾にした批判がマスコミに溢れている。酷い場合はレッテル張りをして個人攻撃をする。対抗案を出さずに、責任を取らなくても良い批判はクレーマーがする事である。クレームをつければ社会が良くなるのであれば、私は喜んでクレームに加担する。しかしクレームは憎悪を生み、主義主張を固めて柔軟性を台無しにし、不安定さのみを齎す。不平不満が溜まるのは仕方がないだろうが、国民の責任は権力に対してクレームをつける事ではなく、永田町や霞ヶ関とともに社会を良くするべく義務を果たす事だ。こんな甘えた考えを抱いている私は、恐らくどうしようもない馬鹿なのだと思う。

12/01/2012

リフレ政策で日本経済崩壊(6):国のバランスシートを都合よく曲解する人達


この匿名のブログにも、読者からのコメントが時に寄せられる。態々国債崩壊シリーズを読んでくださった読者から、痛烈な意見が来た。面白おかしく要約すると「この毛唐野郎め、日本国債は借金ではなく、日本の資産だろ。日本国債ほど安全なものはない。日本国債崩壊を煽動しやがって!ボケが!」といった内容だ。まあ「崩壊」という派手な言葉を使っているが、著者の主張はこの国債崩壊シリーズを読んで頂ければ理解してもらえると考える。ただ、所謂「国家バランスシート」論が物凄く気になる。以前取り上げた、維新の石原党首の発言などにも、バランスシートを誤解した考え方があった。少しばかり説明する。

インチキをしていない限り、財務諸表が企業の経営状態をおおよそ反映している事は事実だ。バランスシートを見ることで企業の健全さをチェックできる。しかしバランスシートを作る上での、技術上の問題が多々知られている。従って、バランスシートを鵜呑みにすることは危険である。さらに、バランスシートはある時点の企業の状態を反映したものであり、時間が経てば色々な価値が刻々と変化する。価値が変化すると特別損益や利益が発生するわけだが、財務諸表はクオーターごとにしか発表されない。

もし財務諸表が絶対的であると仮定すれば、PBR(株価簿価倍率)の低い会社の株を買えば良い。あるいは、PBRが1を切る会社の株を買えば「絶対に儲かる」はずである。しかし現実には損をする場合が多い。貸借対照表の資本の数値は、必ずしも企業の経済的実態を真っ当に評していないことがあるからだ。たとえば、貸借対照表に計上されている資産の中には継続企業を前提として金額が評価されているものも多く、破綻して清算する場合には換金価値が無く資産金額が目減りしてしまう場合があるからだ。

プロはバランスシートを元に、その裏側を読もうとするわけである。ウォレン・バッフェートは財務諸表を読むのが趣味と公言している。村上ファンドがバランスシートを見て阪神電鉄株を割安と判断した事など、例には困らない。

そういった企業のバランスシートの考え方を国の財政に応用することも出来る。しかし、そのバランスシートを曲解して、色々な「とんでも意見」を出している人達が後を断たない。こんな事に付き合っているほど暇ではないので、最近目にした得に酷い主張を3点ほど並べておきたい。

  1.  政府が借金をすると、家計の金融資産が増える:家計の金融資産を貯金すると、銀行が勝手に国債を買うので、国の負債になる。従って、政府の資産側にその額が積み足される。勿論「バランスシート」なのだから借金が増えれば資産も増える。だから何?
  2.   国は資産が多いので、倒産しない:固定資産に計上されているもの、例えば道路や空港、港湾や箱物。どうやって売るの?道路なんて、一体誰がその額で買うの?負債を計上して作ったものなので、会計学的にコストがそのまま資産に計上されているだけの話。第一、利益がでる資産については、長期金融が騰がった瞬間に評価額が目減りする。まともな会計基準を用いれば、莫大な「特別損失」を計上しなければいけない事態に発展するのだが。
  3. 個人金融資産が約1500兆円あるので、このカネを政府が使えば良い:市中の銀行に貯金した時点で、ほとんどが勝手に国債に変換されています。1500兆の大半が国に借りられたままになっているのですが…

私が勝手に想像するに、大学で経済学や金融論の基礎知識を身につけずに、会計専門学校に通ったり、会社の会計の研修を受けたりして「テクニカル重視」の訓練を積んだ人達は、「曲解バランスシート論」に靡く傾向があるように思われる。経済問題を理解するためには、技術法だけでなく、コンセプトをきちんと理解して欲しいと思う。

長期金利が高騰すると、日本国中の資産価値を下落させる。すると特別損失と言う形で国のバランスシートに破滅的な影響をもたらす。簿価はあくまでも、昔の値段。今現在の価値(他の人が買い取ってくれる値段)は色々な要因で常に動くんですよ。こう説明すれば「バランスシート派(笑)」の方たちは納得していただけるだろうか。簿記価格とフェアヴァリューが違うからこそ、株を買うときに鞘取りの機会が生まれるのです。そして経済的に意味があるのはフェアヴァリューだけなのです。金融の基礎が解らない人は、物凄く単純化したとはいうものの、なるべく丁寧に説明したつもりなので前の記事を読んでください。

リフレ政策で日本経済崩壊(5):スタグフレーションで日本中の資産価値は暴落


意外にも金融の基礎が抜けている人が多いので、少しだけ説明する。経済学者でさえも、結構金融の常識を理解していない事があり、びっくりする事がある。経済学を勉強しているのに株や金融に興味がないとか、ちょっとおかしいと思う。まあ、悠長な前置きをする必要はない。国債のバリエーションから説明しよう。


例えば額面価格が1万円の20年国債を買ったとする。現在の利率が1.68%なので、毎年168円貰える事になり、20年目には1万168円を受け取る(細かく言うと一年に二度、84円ずつ受け取る)。割引率に長期金利と同じ1.68%を使うと、現在の評価額は1万円丁度である。ただ、期待利率はデフレを考慮すると年間-0.5%が次の20年間続くと推定した場合、この国債の評価価値は14591円であり、買った瞬間に4591円の鞘取りが出来るわけである。多くの銀行は、今後ともデフレが続くと見ており、計算上、長期国債を買うことが得だと考えている訳である。
 しかし安倍首相の号令の下、人為的にインフレ率が1%引き上がったとしよう。すると、国債の評価価値は8356円となり、購入者は1635円(16.4%)の含み損をする。2%インフレ率が引きあがった場合、フェアヴァリューは7044円となり、3000円ほど(3割近く)の含み損を抱える事になる。
 一般の国債は毎年支払われる利子が変わらないため、利率が上がると計算上の評価額が下がるわけだ。逆に、インフレ連動債のように、インフレに従って支払額が変わるような国債の場合は、割引率が上がろうとも、評価額は変わらない。


長期金利の上昇で被害を受けるのは、国債だけに限定されない。長期金利に基づく長期ローンの数字が、あらゆる資産の評価価値を決めるための割引率として重要な指標となる。
 
仮にあなたが月に5万円で貸せるマンションの一室を持っていたとしよう。年に60万円が入ってくる計算にとなる。税金、維持費、空き室が出る事などは一切無視する。銀行の長期ローンがおよそ3.5%なので、これを割引率として使う。すると、この部屋のフェアヴァリューは、60万円÷0.035=1714万円である。この部屋がこの額よりも高かったり、低かったりすれば、鞘取り機会が生まれるわけだ。安倍さんの鶴の一声で、急に長期国債の利子が2%騰がったとする。すると、銀行のローンも5.5%くらいになる。すると、この部屋のフェアヴァリューは60万円÷0.055=1091万円まで落ちる訳だ。実に、36.4%の目減りである。

 もし家賃も毎年2%づつ上げる事ができれば(良いインフレ)、評価額に変化はおこらない。しかし、長期金利が騰がっても不景気が続き、インフレ分を家賃に転嫁できなかったら(悪いスタグフレーション)、評価額が上記のように下がるわけだ。月に5万円の家賃を、来年は5万1千円に、再来年は5万2千円に上げていかなければ、この物件の所有者は損を被るわけである。
 供給がだぶついている為にデフレが起こっているのであり、お上がテクニカルな利率を変えたところで、家賃に転嫁できるわけがない。家賃を上げれば、借り手がよそに出て行くだけだ。誰でも知っているように、いくらでも空き家はあるのだ。住居用の賃貸ならまだしも、商業用の家賃などは、競争が激しく、上げたくても上げられない。

 それではどうすれば良いのか?良いインフレをおこせば良いのだ。それにはどうしたらいいのか?経済が良くならなければならない。経済を良くして、期待インフレ率を上げなければ仕方ないのである。期待インフレ率とは、経済がよくなりそうなので、未来は値段があがるだろう、という期待を国民が共有する事である。残念ながら私は、日銀や安倍さんが何をしようとも、景気が良くなるというような楽観的なシナリオを抱く事はできない。人為的にインフレにしたらスタグフレーションがおこり、あらゆる資産価値が人為的に下がってしまい、経済が大混乱するのが関の山だ。


最後に、あなたが飲食店を経営しているとする。一年間に500万円の利益を生み出すと仮定する。ただ、競争が激しく、残念ながら未来の成長はあまり見込めないとする。銀行のローンは3.5%なので、店の評価額は500万円÷0.035=1億4300万円である。しかし、人為的なインフレで長期金利が2%騰がったとする。儲けが増えない状態では、店の評価額は9000万円まで減ってしまう。やはり36.4%の目減りである。しかしインフレと円安のせいで、食料原価が高騰する事が考えられる。しかし、同業他社が溢れている状態で、競争は依然激しく、客の財布は固い。原材料の値上げ分を店の儲けには転嫁できないとする。たとえば毎年、じわじわとスタグフレーションの影響で1%ずつ利益が下がるとする。すると7692万円まで店の評価額が下がる。実に46.2%の資産が一瞬で消えてなくなるわけだ。

配当や利子がインフレと同じペースで増えないスタグフレーション下では、国債の評価額は勿論の事、不動産の評価額も、会社の評価額もすべてが大きく下がってしまう。日本国中のあらゆる資産の価値が目減りしてしまう。

 景気は悪いままのスタグフレーションが起こると、日銀がツールを使う事はできない。短期金利を下げて、イールドカーブを急にしても、元の木阿弥だ。

 野田首相はインフレが金持ちに優遇だと言った。まったくの的を完全にはずした意見である。安倍政策のリフレシナリオではスタグフレーションが起こり、資産家が大損するのだ。金や外貨を持っていない人は資産は等しく総て目減りする。
 
しかしこのリフレシナリオを階級闘争という観点からみると、決して間違っていないようにも見える。安倍さんをかついで、国債崩壊に端を発する階級革命を起こせるかもしれないからだ。借金はチャラになり、資産を持っている人が血を流す。持っていない人や固定で借りている人にとっては、徳政令のようだ。ニートやネット右翼が安倍さんを持ち上げるのは、ある意味正しいのだろう。