5/04/2008

ダライ・ラマ14世法王の公演を聞く

もっと早く書くべきだったかも知れないが、先日シアトルを訪問されていたダライ・ラマ14世の公演を聴きに行った。冗談ではあるが、ダライラマ14世ことテンジン・ギャツォがテロリストであるか、生き神であるかを確認しに行ったわけだ。


結論から言うと、非常に良かった。ダライラマ14世と会えば、多くの人が尊敬の念を抱くであろう、という事が解った。ダライラマ法王は80歳の高齢でありながら、冗談を愛し、機知の富んだ話をされる。私は、常日頃、冗談の上手さで相手の知性を測っている。大抵において、冗談が上手い人は非常に頭が良いものだ。このようなレンズで判断した所によると、ダライ・ラマ14世は、非常に頭が切れる人物であった。だが宗教家にありがちな、全てを知っているという態度を全くとらず、自分の専門外の事は解らないとはっきりとおっしゃった。知らないという事をはっきりと言う事は非常に難しいことだ。ダライラマ14世は、頭の切れと、謙虚さを兼ね備えた人物であるのだ。多くのアメリカの文化の端切れを齧った人のせいで勘違いされがちではあるが、謙虚さは日本だけではなく西洋でもはっきりと尊敬を持って受け入れられる物であるという事はここではっきりと記しておきたい。

ただ一つだけ悲しかったことがある。会場の外に、中国人学生(明らかに年上の連中も混じっていた)のグループが反ダライラマのデモを行っていたことだ。情報が閉ざされている中国国内でダライラマの事を悪く思うのは仕方ないのかもしれない。しかし、情報が溢れるアメリカに在住し、両方の立場から公平な情報に触れる機会を持つ中国人留学生がダライ・ラマに対して、反対のデモを行うというのは、理解に苦しむ。もう一つ理解に苦しむことがあった。中国人学生がダライラマに対して反対している映像は、中国人コミュニティーや共産党政府にとって非常にネガティブなものになるということだ。中国人が徒党を組んで、共産党政府が流布している信条を繰り返している光景は、多くの民主主義国家で生きている人間の目からすれば異様である以外の何物でもない。
恐らく中国共産党政府は、対外イメージ政策のことなど何も考えていないのだろう。共産党の一党支配が齎す幾千もの矛盾や不公平感の中で、どのように国内の人々を支配するかだけに興味があるとしか思えない。聖火リレーで、その都市に住む中国人を導入して歓迎行事をさせた映像を国内で流し、共産党政権の人気取りをする。それ以外に何も興味は無いのだろう。私は、いつの日か近い将来、中国共産党の縛りが解けた中国人の生徒達と、対等な立場で、タブーなく色々な事について討論できる日がやってくるものと信じている。ヤンキースファンとレッドソックスファンの怒鳴りあいのような状況は、球場とそのまわりの酒場だけにとどめておいて欲しいものだ。

ケンタッキーダービー、撃沈。

ケンタッキーダービーは、ご承知の通り、大外20番のビッグブラウンが、妙にゆったりとしたペースに功を奏してかなり強い勝ち方でゴールした。一番人気を得ていたので、バウンダリー産駒でケント・デザーモが騎乗したこの馬が勝つのも、しょうがないと言えば、しょうがないのだが、どうも合点がいかない。過去に3戦しかせず、ダービーをあっさり勝つなど、ヨーロッパの貧弱な競馬のようだ。東海岸で西海岸で中2週くらいのペースで、三冠が終われば故障しても何でもいい、といった酷使する競馬こそがアメリカの売りだったはずだ。今回のビッグブラウンの勝ちは潮流変化さえも感じさせる。

もう一つニュースは、2着のエイトベルズがゴール後に両前足を骨折して、予後不良になったことだ。牝馬で唯一の参戦で、2着を得た同馬は賛美に値する。先行で我慢して、埒沿いをしっかりと追い込んできた。ただ、ビッグブラウンの勝ちよりも、エイトベルズの悲劇のみがニュースで繰り返されるのは競馬ファンとしては不愉快だ。悲しくはあるが、競馬ではある程度予後不良が発生することは、仕方ないといえば仕方ない。このニュースをもって、チャーチルダウンズを全天候型のポリトラックにするとか、PETAが騎手を制裁するべきだなどと言うのは、あまりにも見苦しい討論だ。政治的な主張のために、競馬の歴史を変えるのはどうかと思う。が、ポリトラック導入の動きは、恐らく止められないだろう。そういう意味でも、今回のダービーはアメリカ競馬の変化の曲がり角にいるような気がしてならないのだ。

今回のダービーを観戦して、私の脳裏を掠めたのは、サニーブライアンがあっさりと二冠を取った時の光景だ。ゆったりしたペースを作り出し、人気の追い込み馬が不発で、皐月賞を勝った。ダービーではサイレンススズカの上村が控えて、またしてもゆったりとした流れになり、二冠をとった。クリスザブレイブがいたなら、或いはサイレンススズカが飛ばしていれば、サニーブライアンの活躍はどうなっていただろうか?今回も、ウォーパスが元気で殺人ペースで飛ばしていればなあ、と思ったのは私だけだろうか?

何事も無ければ、プリークネスはあっさりビッグブラウンが勝つだろうし、使い込まれていない強みで、以外にあっさり三冠をとる可能性もかなり高い。そもそも、他の馬が弱すぎる。カジノドライブに、ベルモントSで嫌がらせのように、ぶっ飛ばしてくれることを期待する。ビッグブラウンは良い馬だろうが、三冠に値するようなレベルではないと思っている。

5/02/2008

Kentucky Derby 2008

まったくブログを更新することなく、またもや五月の一週目がやって来た。今年のシアトルの春は酷く寒く、春が来た感じなどしない。ケンタッキーダービーがあるので、仕方なくここに予想する。

実力は別として大本命と目されていた二歳王者のウォーパスが故障。よって、大混戦が予想されている。しかし、よく見ると、三頭抜けた馬が存在する。カーネルジョン、パイロ、そしてビッグブラウンだ。ただ、それぞれ問題を抱えており、簡単にこの馬が勝つ、と断言しにくい状態である。そこで、一頭ずつ見ていくことにする。

カーネルジョンは、終いで物凄い脚を使う。過去の映像を見る限り、私はこの馬を買いたいと思う。しかし、問題がある。一度もダート競争を経験していないのだ。出走した過去の六レースが全てポリトラック。ポリトラックで使える鬼脚がダートでも通用するのか?ただ、稽古で5F57秒をつけているし、楽観できないでもない。鞍上のナカタニも、距離が長ければ不安材料でしかない。父はティズナウで、マンノウォー系の貴重な担い手。

パイロも同様に鬼脚を使う。届いてはいけない場所からやって来る。パイロの場合はカーネルジョンと正反対の問題がある。前走のトヨタブルーグラスステークスで初めてポリトラックを経験し、10着と撃沈した。出遅れて、内埒沿いを中断で折り合った後、三コーナー過ぎから、まるでやる気を無くした様に沈んでいった様は、どう判断していいのか解らない。父プルピットに母父がワイルドアゲインという本格的な血統だけに大舞台では大いに期待できるし、直線の長いチャーチルダウンズならなんとかなりそうな気もする。昨年のストリートセンスと比べるのもなんなのだが、まあ、前走度外視といっておこう。

ビッグブラウンは一番人気になるだろう。フロリダダービーで逃げて好時計で勝った。直線ではどんどん後続を引き離した姿は見事の一言だ。CNBCなどでは、ビッグブラウンが共同馬主であり、新しいビジネスプランであることなどが紹介されていたが、それは日本では日常の事なのだが。ただ、前走の価値時計は優秀とは言え、ガルフストリームパークは圧倒的な先行優位の競馬場。これが、2001年のモナーコスのように追い込んで勝っていれば価値はあろうが、逃げでフロリダダービー制覇は、私としてはあまり評価に値しない。父はバウンダリー、祖父ダンジグ、そして母父ヌレイエフ。上手く逃げれば強そうな血統だが、二戦の経験でダービーが勝てるほど甘くはないだろう。あのバーバロでさえ、六戦の経験を要している。大外というのもあまりに危険な臭いがする。直線は長く、時計は早いチャーチルダウンズ。デザーモもここ一番で信用に足りないジョッキーだ。

まさか、簡単にビッグブラウンを逃がせるほどケンタッキーダービーは甘くない。勝負足りえない馬が玉砕覚悟で前に行くに決まっている。かかり気味のビッグブラウンが先行集団を率いて自滅というのが、私の予想だ。そうなると、勿論、パイロとカーネルジョンの一騎打ち。この二頭のエグザクタで勝負。三着争いなら、ガイアゴ(父ギルデッドタイム)、母父サンデーサイレンスのテールオブエカティ、アドリアーノ(父APインディ)あたりで。ビッグブラウンは完全に無視。