7/09/2011

JR東の鉄道復旧、効率が悪い半国営企業

津波の後、三陸地方の沿岸部の鉄道路線が壊滅的な被害を受けたのは記憶に新しい。JR東の清野智社長は4月の定例会見で、「責任を持って復旧させる」と明言した。その会見をニュースで知った際に、私は違和感を感じざるを得なかった。普通の感覚を持った一般の民間会社の社長がこのような発言をする事はまずあり得ないと思う。当時、東電の腐敗体質が連日槍玉に挙げられていたので、東電やJR東などの偽民営企業の傲慢体質について思いを巡らせた。

JR東が地震や津波によって負った金額的被害は莫大なものだ。清野は「責任を持って」復旧させるといったが、清野の言う責任とは、「金額的負担の責任」なのか、或いは「政治力学的な責任」なのか。JR東は民間会社という事になっているので、普通の感覚を持ってすれば、「金額的負担を言っているもの」、と考える。ただJR東が優良黒字企業だからといっても、公表されている財務表を見れば単独で復旧の責任を持つ事は不可能である。

毎日新聞によれば、被災した鉄道の復旧には国と市町村が事業者に事業費の4分の1ずつを補助する制度がある、という。しかしこれは「原形復旧」が条件で、黒字企業は補助金を受けられないという制約もあり、JR東は対象外だという。この制度を念頭に清野が「責任を持って」発言をした可能性もあるが、要するに半分は税金を使いたいという事だ。しかも「原型復旧」などという、今回のようなケースでは長期的な国益に反する縛りがある制度が存在している。さらに「黒字企業は対象外」だといった縛りは、共産主義である。要するにこの制度は赤字企業を救済する為に、税金を勝手に使おう、といった制度なのだ。こういった国の利益に反するような制度が存在している事実に怒りを覚える。

現時点の政治状況を鑑みると、国は赤字路線の復旧に回すような財源の確保は出来ないと思う。JR東はバスなどの代替交通手段を提供すればいいのであって、何も鉄道にこだわる必要はない。バス路線を充実させて、そこに補助金を一時的に出せば、被災地の雇用創出にもプラスに働く。民主党はこういった事に頭を使うべきだろう。ただ、一時的にバス路線を拡充させたりしても利権が生まれないので、あまり誰もやりたくない。

JR東は国土交通省の認可を受ける必要があり、その体質ゆえに、社会的なコストを最低限に抑える、といったような議論は出来ないのだと思う。しかしJR東はどんな形であれ税金を使うのだ。それならば、国や納税者も含めて、50年先の三陸地域の現実を直視し、社会コストを最低限に抑え、かつ社会利益を最大限に保てるような政策を話し合う必要がある。

現在の半国営企業の問題点は、政府の縛りが多すぎること。経営陣は「いかに国から金を引き出し、雇用の窓口を増やし、会社を拡大し、内部で金を貯蓄するか」、という誰のためにもなりえない事に頭を使っている。こういった経営力学が収縮する経済の下では通用しない事は誰の目にも明らかである。日本では過去十年ほど、物やサービスの値段がデフレの圧力を受けて下がったのだが、交通料金や電気水道代などは高止まりしている(高速道路代だけが良い意味での例外)。言い返せば、日本国民の交通料金や電気水道代の負担は実質的に騰がっているということになる。当たり前のことだが、交通や電気水道料金は、経済活動のコストなので、騰がれば騰がるほど経済活動にマイナスに働き、下がれば下がるほど経済活動にはプラスに働く。

インチキ半国営企業が株式を上場するも、法律や国の認可に縛られて何も出来ない。そして、経営陣は「責任を持って」税金を掠める事しか考えていない。一方で一般の国民は税金と料金の二重負担に苦しむ。それでも民主党や自民党の一部の利権派は大きな政府を作りたいのだろうか?

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