ギリシャ債権問題の第二次救済案が愈々煮つまろうとしている。ギリシャ問題は、アメリカの8月2日問題と同じで、「絶対に解決する問題」であるため、投資家も投機しやすいようだ。日本の地震やジャスミン革命など、真剣に将来予測が困難な物については様子見をするのが市場である。しかし、ギリシャやアメリカの債権問題は短期で見れば、絶対に解決する問題であるので、政治家に無意味なプレッシャーをかける意図もあり、市場が乱高下している。長期投資家であれば、一件落着に全部を賭ければいいし、短期投機家の人はボラティリティーで遊べばいいのである。郵便局に貯金したり、生命保険にお金を入れたりするのは平気なのに(実は危ない日本国債を買われているだけ)、ユーロや米ドルの債権が債務不履行を起こす展開を心配しているというのは、自分の心配をよそに他人の家の懐事情を気にしている皮肉な行為だと思うが、どうだろうか?
ただ今回一つだけ気になる事は、デフォルト(債務不履行)の扱いだ。金融が専門ではない新聞などを読んでいると、デフォルトが起こると世界の終わりがやって来るようなストーリーが仕上がっている。そもそも、デフォルトか否かという極端な世界のみが存在するのではない。デフォルトは債権の紙屑化を意味するわけではない。たしかにそういう事態が過去に何件か起きている。しかし、債務不履行には色々なレベルがある。履行遅滞や不完全履行もデフォルト(債務不履行)の一種である。
ギリシャの場合は、銀行などの大口投資家のクーポンを少し減らしてもらう、などと言ったデフォルトが起こる可能性が示唆されているが、債権自体が紙屑化するわけではない。アメリカの場合は選挙前なので、共和党も民主党も引くに引けず、下手すると期日の8月2日までに法案が通らずに、クーポンの支払いが一回遅れる可能性が出る、というだけの話である。
問題は、そういう事態が起これば格付け機関が該当する債権の評価を落とすことで、投資家のリスク判断が上がり、割引率を上げざるを得なくなり、債権のフェアバリューが落ちてしまうという事だ。市場は全てが繋がっているし、レバレッジが働いているので、それが原因で世界規模の金融不安が起きる可能性がある、と言われているわけだし、そう言われている故に、多くの投資家が好む好まざるに関わらず、市場全体のインプライド・ボラティリティーを上げているのだ。すでに最悪のシナリオが言い尽くされているわけで、そういう状況下で政治が市場をクラッシュさせるわけがないので、完全不履行など起き得る筈がないわけだ。
債権問題は欧米の政治問題であり、経済問題では無い。こんなつまらない事を記事にしたり、考えを巡らすくらいならば、自分の国が将来直視せざるを得ない債務不履行に陥る可能性とそうならないための対策について、もう少し真剣に議論するべきだと思う。
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