5/10/2013

日本の物価は異様に安い(2):衣食住編

物価の安い高いを比較する際、EIUの生活費の高い都市ランキングなどが発表されている。それによると、2012年度の世界140都市で、生活費が一番高い都市は東京であり、第二位は大阪であった。この統計を見て、東京や大阪の生活費が、オスロ(4位)、ズーリック(7位)やジュネーヴァ(10位)よりも高いと考えるナイーブな人がいるのだろう。知っている人であれば、はっきりと言うだろう。そんなアホな!と。この統計は、あくまでも欧米人が雇用者を海外赴任する際の費用ランキングの目安であり、現地の物価を反映している訳ではない。

衣食住が生活の基本であるが、グローバル化が進んだ世の中において、「衣」に関しては、世界中で大差はない。アメリカが安い。ソウルや香港や台北や東京は安いものもあるが、ブランドものはかなりの値段がする。ヨーロッパは思っているよりも安い。ただ、税金の差があり、高税の地域では物価が高く感じる。ただ衣服の税抜価格に関しての価格差は無視しても良いほどのものである。発展途上国、たとえば中国などでブランド品を買うと無茶苦茶高い。

住であるが、これがかなりミスリーディングである。東京で働く外国人は赤坂のなんとかヒルズとかに住む。すると、軽く20万から50万くらいの家賃となる。下手をすると、100万くらいするところもあるが、東京で働く外国人は、会社を通してこういった物件に入ることができる。しかしながら、普通の一般の東京で働く人は2LDKでも10万円前後の物件に住んでいる。便利さを追求した東京という町で、人々は広さを犠牲にしている訳だ。びっくりするのは、12万円ほどの家賃に「東京の家賃は高すぎる!」などと不平不満を言う人達がいる。部屋をシェアしないで、トイレと風呂がついていて、比較的新しい環境で12万円前後で住めるのなら、国際的には決して高くない。香港やシンガポールも、東京に肉薄した、もしくは東京以上の家賃相場だ。台北やソウルに行くと、東京の半額くらいになる。上海や北京では安い所に外国人が住むのは無理であり、1000ドルから2000ドルを家賃として計上する必要がある。

ニューヨークの便利な場所(ダウンタウンに地下鉄で20分以内)でワンベッドルームのアパートに住めば、月2500から5000ドルくらいする。サンフランシスコでもNYと余り変わらないくらいである。シアトルなら、ダウンタウンで2500から4000ドル、少し離れれば900から1800ドルの間くらいになる。これが、アメリカの田舎に行くとぐっと安くなり、500から1000くらいの間でワンベッドルームが借りられる。が、文化的な生活が送れないほどの田舎での生活を強いられる。アメリカで他人から隔離されて一人で暮らす場合は最低月1000ドルを家賃として考えなければならない。シェアなどをすると、500ドルくらいからで住めるだろう。これよりも安いものを探すのは、ほぼ不可能である。パリやローマやミランもシアトルと似たような相場だ。ドイツに行くと、少し安くなる。ロンドンはNY並に高く、北ヨーロッパはサンフランシスコ並みである。東京のように5-6万円で一人暮らしはできない。ただし、1ドルは100円、1.2ユーロ、1.5ポンドと考えている。安全が保障されていない街では、外国人用の賃貸はおしなべて高いものだ。シドニーやバンクーバーのような、新興都市の家賃がブル相場である事も付け加えておく。

重要な点は、一人で住むのなら、アジアであれば広さを犠牲にして、割安で済むという事だ。欧米では、安く住みたいのなら他人と同居するしかない。欧米では他人とシェアするシステムが発展しているため、容易に相手を探せるが、アジアではヒッピー以外には「シェアの文化」は浸透していない。こういった文化的背景を抜きにして、住居費を比べるのは難しい。

食であるが、これはアジアが圧倒的に安い。バンコクや台北なら、ビジネスランチが300円ほどで食べられる。東京なら900円、大阪なら750円、ソウルや香港で700円、シンガポールでも800円ほどだ。上海や北京が意外に高く、まともなものを食べると(段ボール入りの饅頭や、鼠の串焼きを食べるのであれば話は別である)、台北よりも高くつく。これらの街の食事は、文化的背景が似ているため、比べ得る。知っていると思うが、アジアでは、欧米の舶来の物はまだまだ高い。フレンチ料理、ステーキなど、こういうものは、店の雰囲気にもよるがNYの倍はする。

アメリカの食費は、ユニットプライスで見ると安いが、支払いは高くなる。マクドナルドなどの$1メニューなどもあるが、まともな人は普通にセットを買っている。ランチを食べられるレストランで食事をすると、チップと税金を入れると10ドルは支払わなくてはならない。私が渡米した10年前は、7$+アルファでランチが食べられたのに、インフレのせいか随分と高くなったものだ。量が少ないが安いという物は売られていない。

フランス、イタリア、ドイツ、イギリスはアメリカと似ている。店の中に入って食事をすると、チップと税金を入れると10ユーロ(或いは6-8ポンド)は支払わなくてはならない。そのためか、ピッツアテリア、クレープ屋、ケバブ屋、サンドイッチ屋など、お持ち帰りが出来る店が流行る訳だ。その辺りだと、半額で食事を摂れるからだ。そういった店の殆どは、中東出身者に運営されていることも書いておかなければならない。イギリスなど、パブに行くと、食べ物が意外に安いし、美味しいことも書き記しておく必要があろう。スカンジナビアやスイスは糞高い。バーガーキング以外で食事をすると、一番安いものを食べても2000円は覚悟しなければならない。

ここまで読めば、如何に日本が安いのか解ってもらえると思う。フレンチレストランのランチセット(コーヒーとデザート付)が1200円で提供されている国などない。食事に関しては、質と価格と迅速さにおいて、日本に勝てる国は東南アジアの一部の国を除いて、ない。

次回は、教育、医療、交通、各種サービスなどについて考えたい。

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