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5/16/2013
橋下風俗発言と外圧。遅れているアメリカ社会
少し前にも、ありもしない外圧を日本人が恐れているという話をした。今回の橋下風俗発言を聞いていて、同じような感覚を持ったので、その話の続きをする。
個人的な話であるが、仕事柄、日本の人達から、アメリカで働く私のところに、日本の役所関係の人に話しをして欲しいと言われることが多々ある。日本人同士で話をすると「どうぞご理解ください」などと言われて、役所関係者は聞く耳を持たないという事である。しかし、私が要望や質問の草案を作って、適当なアメリカ人の署名を入れて日本の役所に届けてもらうだけで、役所関係者は真摯に対応してくれるのだ。いかに日本が欧米の影を恐れているのかが解るエピソードである。(外圧を気にしすぎるというよりも、日本の役所関係者や政治家は、一般の日本人の話を、上から目線で無視することなく、もう少し真面目に聞くべきだと思う。完全に国民は嘗められているのであろう。)
で、橋下市長は、大阪市民によって選ばれた政治家である。マジョリティーの大阪市民は橋下氏を応援している訳だ。当たり前だが、応援している理由は人それぞれ違う。大雑把に総じると、橋下氏が建前論をこき下ろし、本音を語る政治家である、という印象に対して、多くの大阪市民が酔狂しているのだと考える。橋下氏は選挙民の心をきっちりと掴んだ名マーケターなのだ。
大阪に住んでもない人間が、橋下氏が政治家に値しない人物であるとこき下ろしている記事を読んだりする。勿論、人それぞれ、どんな意見を抱いてもいい。ただ、外野は勝手に言っておけば良い。橋下氏は大阪市民の大多数に支持されたわけであり、品が無いなどと言ったことも含めて大阪市民は支持している訳である。品がないから橋下氏の政治家としての能力がないなどと言う意見は、大阪のマジョリティーの選挙民を馬鹿にしているのも同じである。橋下氏が建前に縛られることのない「喧嘩の出来る」人間だと見せているため、橋下氏を市長として選んだのだ。橋下市長が嫌いでごちゃごちゃいう人達は、平松前市長でも携えて、京都にでも出て行けばいいのだ。
政治家は「建前」を言うものであり、「本音」を言う事は人間として劣っている、などと言った馬鹿げた事を信じている人にも出くわす。正直、救いようがない人達である。民主主義社会において、政治家は単なる水商売である。どの国であれ、政治ほど汚れたものはない。政治に必要なのは知性ではない。民主主義のわが国において、政治家の力は「人気」に左右される。人気を取ってなんぼの商売だ。そこに、格も品もへっちゃくれもないのである。マーケティングに長けた者が勝つ弱肉強食の世界が、民主主義社会の政治なのだ。橋下氏は人気を集めている、つまり優秀な政治家なのだ。(そういった意味で、政治家は性風俗業従事者と共通することが多い。)
許由ではないが、マツリゴトの話は汚れているので、聞けば穎水で耳を洗わなければならない。政治は綺麗なものではない。目的(金)の為なら何でもする(体を売る)物なのだ。政治家こそが立派なプロスティテュート(売春婦)なのであり、それ故に政治家は尊敬に値するのである。
米高官に対して、風俗を使えば如何か、などという意見を言ったという事であるが、これは「ナイスジョブ」であると思う。綺麗事を抜きにして、まさに正論なのだ。こういった正論を言いたいアメリカ人は百万といるが、態々虎の尾を踏む勇気など誰にもない。管理売春に賛成したい層は意外と少なくない。米軍内の女性士官に対する痴漢事件が、確認されているだけで普通の社会の二倍以上に上る、などといったニュースが報道が最近されている。こういった時に、管理売春を解禁すればどうか?と心の中で考える人は多い筈だ。しかし、先日書いたように、アメリカの公人は決してそれを口にしない。
ただ、こういった事を外国人に外野から言ってもらえば、溜飲が下るアメリカ人がどれほどいるのだろうか?アメリカ社会にも、自身のタブーを破る外圧が必要であり、橋下発言はそうなり得たナイスなサジェスチョンであり得るのだ。しかし、橋下発言は日本の英字メディア以外では完全に無視されている。自由などと言いながら、実際は同調圧力が強いアメリカ社会の歪みが、こういう所にも露呈されているのである。
ニュースを見ていると、日本が保守的で右寄りで女性を蔑ろにしているから風俗を許容しているなどといった馬鹿げた意見を読んだ。一方で、売春を認めて税金を取っているオランダやスイス、ドイツはリベラルだという。どう考えてもダブルスタンダードだと思いませんか?ただ単に、アメリカが売春問題に対してナイーブで保守的なのである。アメリカでは、銃問題にせよ、中絶問題にせよ、物凄く保守的であり、そういった層に配慮して、ニューズメディアも報道を自主規制している。この風俗問題にしても同じであるのだ。
米国の報道官などにこういう事をわざわざ質問すれば、怒った顔をして「No!」と言われるのは火を見るよりも明らかである。人気取りが必要でない公人は、立場上、ふざけた意見に物分かりが良い振りをしたところで何も得るものがない。一般論、つまりは綺麗事を言うしかないのである。記者が煽動するために質問したのである。しかし、報道官の発言を日本に対する攻撃と受け止めるのは、被害妄想以外の何物でもない。
風営法による風俗営業には、性的なサービスを行うもの以外、ギャンブルなども含まれている。性風俗という従来の法律隠語が庶民にはかなり浸透している。性風俗と言っても、女性だけが搾取をされている訳ではなく、マーケットが狭いとはいえ、性的なサービスを行う男性も存在している。突き詰めて考えれば、女性問題と性産業問題はイコールではない。こういった問題において、快楽主義を許容している日本は「無駄に保守的なアメリカ」の30歩先を行くリベラルさを有している。私は、これは誇るべきことであると考えている。こういう事を、アメリカに認めてもらう必要はない。アメリカ人が怒っているのではなく、アメリカ人はこの記事を黙殺し、日本のメディアが日本国内向けに騒いでるに過ぎない。冷泉氏のようにプリンストン大学で教えているかのような経歴詐称紛いの事をして記事を書いている人が、日本版のニューズウィークで「米国は日本を厳しく見ているぞ!」みたいなことを風潮しているのが、この問題の真相なのである。
私たちは、自分たちの先達が作って来た快楽主義を良しとする文化を、自分たちで磨いていけばいいのである。戦後、日本では売春行為と性風俗を分けて、独自の文化を発展させた。私は、こういった自由闊達で柔軟な日本社会が大好きです。アメリカが世界の常識ではない。宗教的な二元論が強いアメリカは、禁欲主義を良しととしたり、国連の決まりに逆らってマリファナを解禁したり、人身売買に不賛成である立場ながら第三国からの養子を推奨したり、かなりわがままな政策を押し通している。アメリカに追従するでも、反発するでもなく、アメリカの政治を理解して、日本は普通に友人として上手く付き合えばいいのだ。私たちは、アメリカに気に入ってもらおうとするのはやめるべきだし、叱ってもらう必要もないのだ。アメリカは比較的常識的な大きな島国なのである。そして、アメリカ人の意見は、決して一枚岩ではない。
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