私は日本で育ったため、地震、津波、台風などの自然災害の際にどうするべきか、という事は解っているつもりである。どういった規模の災害で、どのような状況であれば、命が無くなる虞がどのくらいなのか?リスクをある程度把握していると信じている。
アメリカの大西洋北西部では、数百年に一回という規模の大地震以外は、自然災害はほとんどない。大雪が降っても、嵐が来ても、洪水に見舞われようとも、命を落とす危険はあろうが、局地的な話である。
米国の南東部にやって来た。この地方ではグレートプレーリー地方ではないにせよ、竜巻(トルネード)が起こりうる。春は竜巻が特に多い季節であり、引っ越してきて既に竜巻警報に遭遇した。新しい土地で、地名も解らず、ウェザーチャンネルを見ても、私が住む場所が危ういのかどうかも解らない。どこに行けば安全なのかの知識もない。テレビもラジオも番組を中断して、警報を知らせる不気味な音が響き渡る。家の奥に逃げろと言う。急にゴルフボール大の雹が降って来て、あたりが暗くなる。そして、間断なく雷が鳴り響く。風が強くなり、雨がバケツをひっくり返したように落ちて来た。視界は不良で、20m先も見えない。停電して、テレビもラジオもない。どうして良いか解らない。トルネードは来るのか?クローゼットの中で待つこと20分。やがて雨が収まり、電気が戻る。トルネード警報も解除され、新しく移り住んだ町でトルネードの危険は去った、とラジオの気象予報士が告げる。正直、かなり焦った。
翌日、同僚に話を聞くと、そんな事は日常茶飯事らしい。私が経験した竜巻警報は、とても些細なものであったようである。いわば、小型の台風が室戸岬に上陸して、暴風警報が出ているので学校は一応休み、くらいの物であったようだ。
その後、トルネードの速報に対してはアンテナを張り巡らしている。ウェザーチャンネルでは、トルネードが発生する確率をToR:Conという数値にしている。例えば、ダラス4/10だとすれば、ダラスから50マイル以内の地域で、40%程度の確率で何らかのトルネードが確認される、といった具合である。
トルネードが来ればどうすれば良いのか?「地下の部屋に籠る」である。これ以上の答えはない。
もし、地下がなければどうするのか?家の最下階の、なるべく奥に囲まった、窓のない部屋で過ごす。たとえば家の奥まった場所にあるトイレ、それもバスタブの中に伏せて身を潜める。トルネードの中心では、猛烈な風が吹き荒れる。例えば、一番強いトルネードであれば時速300KM、新幹線から手を出すようなものである。それに巻き込まれた街路樹、木材や建材、金属片などが空を飛んでいる。それらが家に当たったとしても、家の中心部、例えば壁を3枚ほど隔てれば、助かる可能性は高い訳だ。窓のすぐ横や、シャッターのあるガレージなどは論外で、窓が割れたり、シャッターが剥がれたりすると、大怪我をする。この方法では、改良藤田スケールで4や5のトルネードが運悪く真上を通過すれば、ほぼ助からない。地上の物は根こそぎ引っ剥がされるからだ。
トルネードが多い地域では、トルネードシェルターなるものが売られており、それを常設した家も多い。そういう所に逃げると命が助かる可能性が上がる。
運悪く運転中にトルネードに遭遇した際は、橋梁を見つけ、橋と橋台の下の隙間に隠れると、生存率が上がるそうである。
トルネードは30分ほど前に予報が可能であるうえ、進路が比較的解り易い。トルネードがおこりそうな日は、常にウェザーチャンネルなどをチェックし、どこにトルネードが通るかを見極める必要があろう。可能であれば、トルネードが通過すると予報されている地域から出来うる限り早く逃げ切るという手もある。
地震も怖いが、トルネードも恐ろしい。オクラホマシティー近郊で起こったトルネードにより、ムーアは大ダメージを受けた。ウェザーチャンネルでは、トルネードの発生から、通過、消失までをヘリコプターからライブで完全に中継されていた。恐ろしい光景であった。小学校などが被害を受け、多くの幼い命も犠牲になった。亡くなった方の冥福をお祈りするとともに、迅速なる復興を期待したい。
因みに、ウェザーチャンネルに出てくるグレッグ・フォーブス博士であるが、フォーブス博士はシカゴ大学の偉大なトルネード研究家・藤田「テッド」哲也博士の生徒であり、前述のTor
;Conを開発したのをはじめ、改良藤田スケールの開発にも携わっている。
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