5/18/2013

馬鹿げたチップという制度。15%が基本なのか?

10年以上もアメリカに住めば、アメリカの良い所も悪い所も見えるようになる。私がアメリカで最も嫌いなことは、チップを払う事である。チップはアメリカだけの文化ではないのだが、アメリカにおけるレストランでのチップ制度は以下の理由で非常に腹が立つのだ。

ウェイター・ウェイトレスに対するチップの相場は、税金を足す前の額の15%-20%が基準とされており、最低それだけおかなければならない事になっている。もし、15%以下のチップの場合は、チープ(ケチ)だと見做されるという。ウェイターやウェイトレスの給料が低いので、チップをもらわなければやっていけないとする一般論がある。確かに州によっては、連邦最低賃金しか渡しておらず、ウェイターやウェイトレスはチップなしでは食べていけない。因みに、連邦最低賃金は2.13ドル。これは馬鹿げている。一方で、シアトル近郊では最低賃金の9.19ドルが保障されており、チップクレジットは認められていない。これにチップを足すと、かなりの手取りになる。州の政策によって、チップ制度に歪みが生じているのだ。計算上、ウェイターがもらうべき給料を考えると、チップクレジットを最低賃金に勘案していない西海岸地域(ワシントン、オレゴン、カリフォルニア)で15%以上を渡すのはあげ過ぎだと思うのだ。一方で、タックスクレジットのある米南東部やニュージャージー州などでは20%くらいあげなければしんどいだろうなぁ、とも思うわけだ。

レストランの経営者側も、ウェイター達も、チップ制度は維持したい。何故なら、ほとんどの人が、現金で得たチップは申告しないからだ。税金逃れが蔓延っており、チップの大部分は統計上、闇経済となっているのだ。しかも、一部のレストランでは、違法就労者を無賃で雇い、その人たちはチップで全額生活費を賄っている。皆が知っている制度上の不備であるが、当事者たちが一応喜んでいるのであるから仕方ない。

テーブルに着く外食をすると、大体10%の税金をむしり取られる。そこに15%から20%を足すと、25%から35%の余計な出費が食費につくことになる。普段はスーパーやウォルマートやガソリンスタンドで1セント単位の割引に必死になっているくせに、何故レストランでは気が大きくなってチップを弾む人が出てくるのか?結論から言うと、お金にうるさいアメリカ人は思っている以上に少ないという事だ。結構、みんなの財布の紐は緩い。が、一部にはガメツイ人達もいる。アイオワ州立大学の研究によると、チップの平均額(ミーン)は16.1%で、標準偏差は6%であったという。つまり、15%以下しか払っていない人も結構いるのだ。

昔は、朝ごはんや昼ご飯は10%、ディナーで15%と言われた。最近では、バッフェで10%、ランチで15%、ディナーに20%とかいうプロパガンダを説く人たちが増えてきた。勿論、ウェイターの立場で言うと、多ければ多い方が良いだろう。ただ、私自身の時給を鑑みて、テーブル一席だけをサービスして、仮に支払いが40ドルだったとして、8ドル(20%)は貰いすぎだ。ウェイターは普通複数の席を同時にサーブするし、食事を食べても30分程度で席を立つこともある。特に高めのレストランでは、食費も高い。20%渡すのは、正直ふざけていると思う。私は、レストランでウェイトレスがいくら程稼ぐのかを考えることがあるのだが、流行っているレストランのウェイトレスは、多分時給100ドルくらい軽く稼いでいると思う。ただ、多くのウェイターやウェイトレスはそんなに貰っていない。可哀想な人も大勢いる。しつこいようだが、自分が自給900円のアルバイトで日本でウェイターをやっていた事と比較すると、アメリカのウェイター・ウィトレスは貰い過ぎだ。

アジア人やユダヤ人の中には、私のような「ケチ」な意見を抱く人たちが多い。アジアでは基本的に欧米のようなクラス階級意識がなく、ウェイターやウェイトレスを下の立場として扱わないからだ。ウェイターやウェイトレスの生活を考えろ!という人もいるが、それはレストラン経営者が悪いのであり、客の問題ではない。或いは、国の制度の問題だ。だから、レストランでアジア人の客は嫌われる。財布の紐が固い、と。白人や黒人には見栄っ張りな人が多い、というのが真相のような気がするが。

チップがかさむので、外食を控える人も多い。或いは、ファーストフードを利用するという手もある。そうすればチップを払う必要がなく、15%分浮くからだ。これは経済活動にとってはかなりのマイナスであるし、まわりまわってレストランオーナーの収入を削ぐ事になる。国にとっては税金を徴収できないし、違法行為が罷り通る。

で、誰がチップ制度を止めさせたいのか?外食を利用するアメリカ人の大半は、チップ制度をなくして明朗会計にするべきであると考えていると思う。チップ制度を止めさせれば、経済的にもプラスになるだろうし、雇用も増えるはずだ。チップ制度を残して欲しいと考えるのは、逆にレストラン業界従事者である。チップのおかげで、上手くやってると勝手に考えているウェイターやウェイトレスも多い。ファストフードチェーンは、レストランのチップのおかげで自分たちの客が増えていると理解している筈なので、チップ制度の存続を望んでいる。長く続いていた文化なので、急になくせないのだろう。

私は、ケチだと言われようが、ランチ10%、夕食15%を四捨五入して押し通したいと思う。申し訳ないが、チップに20%払うような余裕はない。私は仕事をしてもチップなど貰えないし、給料もそれほど高くない。

PS チップがいくらか計算する際に、税金を二倍にすれば良い、などという人がいる。外食につく税金は場所(市単位)によって全く異なるため、この作戦をする際は気を付けてほしい。18%のGratuityがすでに加算されている場合は、チップは払う必要がない。大人数(6人以上)の際は、チップを多めに払うというのが常識であるといわれている。

チップを弾むのが格好良い、と考える粋な人は多い。人それぞれであるので、そういう人はこの記事を読んで、「大阪出身の糞ケチ野郎のブログが!」と吐き捨てて、自分の心情に沿って行動して頂きたい。アメリカ人に、「どのくらいチップを払うべきか?」と聞くと、綺麗事で「15-20%」と答えるだろう。ただ、本当の支払い額を見ると、かなりばらけている。凄く気前のよい人もいるし、言っている事とやっている事が異なる人もかなり多い。バラつきがあるので、額面通りには受け取らない方がよい。アメリカ人は結構計算できない。

勘定をもらった後、さくっとスマートにお金を払いたいと考える旅行者がいる。しかし、多くのアメリカ人は、勘定をもらった時と、チップを計算するときには、かなりの時間を要する。日本人の感覚からすると信じられないくらいゆっくりと支払いをする(個人的な話だが。私は時間の浪費が大嫌いで、アメリカ人が非効率に支払いをダラダラするのが許せない)。日本人の慣れていない旅行者が、日本の感覚でサクッと支払いをしたいと考えるのだろうが、地元の人は支払いに時間をかけるものである、と覚えておいてほしい。慣れていないのなら、ゆっくりとスマートフォンで15%を計算すればいいのだ(多くのアメリカ人もそうしてる)。

アメリカのレストランでは、ウェイターやウェイトレスが何度も席に寄ってきて、全てOKか聞く。あれは「チップを忘れるなよ!」という催促であると考えてほしい。お洒落なレストランではレシートに18%、20%、25%のチップならいくらですよ、と書いてあることが良くある。だが、細かい話だが、税金を足した値段の18%を計算していたりして、いんちきっぽい事も良くある。ケチナ私は態々税金前の値段の15%を計算しなおしている。(糞ケチ野郎と呼んでください!)

学術的な研究では、ウェイターやウェイトレスのサービス内容とチップに相関関係は余りなかったらしい。寧ろ、ウェイターやウェイトレスの容姿などとチップの額が比例するようだ。アメリカのレストランを利用した人なら解るだろうが、ウェイターやウェイトレスは必至でチップの値段を上げようと頑張っている。が、計算して15%丁度を渡しておけば、何の問題もない。世の中はそこまで甘くないのだ。

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