11/07/2012

シアトルがアムステルダムに。ワシントン州、歪んだ「リベラル路線」をとる

12月6日、いよいよワシントン州でマリファナが解禁!注意事項などについて


大統領選挙の影に隠れて、ワシントン州の知事や上院議員などの選挙もこっそり行われていたのだが、アメリカでは選挙のときに州民投票のような事もする。今回、ワシントン州で話題になったのは、ゲイマリッジ(同姓婚)とリクリエーショナル・マリファナ(嗜好品としての大麻草の少量所持・使用)の話である。で、二つの法案は両方とも州民に支持された。

シアトル市は今後、アムステルダムの様になるのだろう。同性愛者はドメスティックパートナーではなく、結婚と言う法手段の行使を許可されるわけだ。さらに、連邦法、つまり国が禁止薬物に指定し、使用や栽培が禁止されている大麻草が、ワシントン州では医療目的及び少量の嗜好目的でも許可されるわけである。承認された提案によると、ともに21歳以上なら1オンス(約28グラム)以下の大麻を所持したり、使用したりしても罪に問われなくなる。今後1年かけて販売規則を整備。販売価格に25%課税する。タバコ税が1パック$3.025、つまり60%-100%くらいなのを勘案すると、えらく安い課税である。

この数ヶ月、このふたつの法案に関するコマーシャルキャンペーンが繰り返された。同姓婚に関しては賛成の宣伝が多いものの、何故ドメスティックパートナーだけではいけないのか?という反対の宣伝もあった。

しかし、問題はマリワナである。「地下経済を許すぐらいなら、州政府がコントロールして税金を取り、その金を教育に使おう。州の経済も発達します!」「ギャングは若者にも薬物を売るが、州政府がコントロールすれば若者の大麻草使用を防げます。常識で選びましょう!」などというふざけた広告がひっきりなしに流された。気持ち悪いのは、嗜好用大麻草使用を反対する広告にお目にかかったことがない事である。普段は喫煙に目くじらを立てる雰囲気の街で、嗜好目的のマリファナ使用はOKというのは筋が通らない。州政府関係者は、マリファナ関連の利権で一体どれだけ儲かるのだろうか?

私はどちらにも反対である。別に人の自由にとやかく言うつもりはない。しかし、アメリカのリベラルの意見がコンサバティブの対極として、ぶっ飛んでいると感じるのだ。同性愛者を嫌っているわけではないし、同性愛者の良い友達も大勢いる。だが、結婚という何世紀にも行われてきた社会的契約を再定義する必要があるのであろうか?すでにパートナーシップ制度があるわけだが、寧ろ結婚と言う手段以外で同性愛者を救済する政策をつくるべきだと思う。あるいは、男同士で「結婚」していた人間が、離婚して女性と「再婚」できるのだろうか?本人同士はいいが、子供や養子達はどう思うのだろうか?こういう事を法的に許可すると「わがまま」による家庭崩壊や「結婚詐欺」などまで法律が許す可能性がある。第一私は、結婚は義務であれ、権利だとは信じていない。

今後はマリファナの使用も州法で許可されるようになる。マリファナの使用が違法であれ常態化している現実を打開したい事は理解できる。ただ、国連の麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約との整合性はとれないし、連邦法と州法が矛盾するという大問題がある。つまり、州政府の許可を取ったマリファナの育成や販売は、州の警察に逮捕される事がないとはいうものの、FBIに逮捕される可能性があるという事である。喫煙者の権利は奪うくせに、国連の禁止薬物に指定されている大麻草使用は許可する方向で、しかも合法のタバコよりも税金が安い。こんな馬鹿な話がまかり通っていいはずが無い。

アメリカのリベラルの政策はヒッピー文化を良しとするようなふざけたものが出てくる。動物愛護であったり、環境保護であったり、健康促進であったり、違法移民に目を閉じたり、国際養子を推進したり。極端にばかり走らないで、もう少しバランスと言うものを重視して欲しいと思う。リベラルが社会問題のモラル是正に努めているという、単純な先入観を持っている人が多いが、こういった法整備がどれだけ多くの利権を生み出しているのかという、社会経済的な側面もじっくりと観察して欲しい。

小言になるが、日本では属人主義で大麻の使用自体が違法となっている。アムステルダムであれ、デンバーであれ、シアトルであれ、日本人が大麻を使用する事は違法となる(注:コメント欄を参照)。当たり前だが、それを理由に日本の警察に罰せられる可能性はゼロに等しいのだが。万が一、あなたが有名になってしまった後(例えば政治家になったりして)、ブログなどで国外で大麻使用を告白した事などがバレたら社会的な制裁を加えられる事は目に見えている。(従って匿名であれ、私は個人的な大麻の話にはブログ上では絶対に触れない。)何度も繰り返すが、ワシントン州で大麻の使用が譬え合法になろうとも、アメリカの連邦法では違法である。それを理解したうえで、個人の責任に則り「遵法精神」と「リスク」をしっかりと考慮して大麻草を使用して欲しい。私は法律の整合性の話をしているだけであり、マリファナの是非については個人が自由に判断すれば良い事であり、興味がない。

2 件のコメント:

通りすがり さんのコメント...

大麻取り締まり法に使用罪はないはずですが。
最近では大麻抽出物の使用で癌が治るという報告もあります。Rick Simpsonの活動など。

筆者 さんのコメント...

「大麻の輸入・輸出・栽培・譲渡し・譲受け・所持等の罪は、刑法2条に従い、国外犯も処罰対象である(24条の8)。」という条項において、法解釈の上で、「所持」や「譲受け」をどのように解釈するのかが問題になります。法律の不備を誤魔化すため、大麻使用が「脱法」行為であると都合よく解釈されているのが現状です。本文でも書きましたが、海外で大麻吸引をしたからと言って、日本で身柄を拘束されるような事態になる可能性は「ゼロ」です。

私は大麻使用や喫煙の良し悪しについては個人の自由であると思っています。ただ、法律がすでにあるのも事実です。ワシントン州の決定に関しては法的な不備が多すぎます。個人の権利を守るため、国連法、アメリカ連邦法、日本の国内法を現状に見合った形で改正するべきだと考えています。大麻の使用に関しては、現実社会との整合性が取れていないことが問題です。

いずれの形で法律を換えようとも、そこに発生する利権の移動に関して社会はもう少し敏感になるべきでしょう。ワシントン州の場合は、ギャングから州へと利権が移動し、マリファナミリオネアが大勢生まれる事でしょう。

健康や法律などのつまらない理由を捏ねないで、吸いたい人が自分の意思と責任の下で吸いたい物を吸える社会が望ましいと考えます。