11/04/2012

天に唾を吐く中国人暴徒たち。朴訥とした日本の田舎者たち。

尖閣の問題について当コラムでも色々書いているのだが、1)尖閣諸島はどの国に属しているのか?という問題と、2)何故あそこまで反日デモが起きるのか?という問題は分けて考えなければならない。初めの問いに関する答えはとても簡単である。尖閣諸島は日本が占領している領土であり、中国共産党の主張は、言った者勝ちの暴論であるという事だ。この件に関して、日本人も中国人エリート層も国際社会の知識層も完全に同意してくれると考えている

二つ目こそが最も重要な問いかけであろう。この問いに対しては、残念ながら憶測しか持ち合わせていない。つまりは、中国の非支配層(貧困層や若者)が天に唾を吐いているのが暴動であり、共産党中央政権の誰かがその人達を利用して出世を目論んでいるのであろう、という事だ。

中国の非支配層が何を思って暴れているのか?不満があるのだろうが、正直私には完全に理解できない。それは、アメリカで虐げられた過去を持つ黒人連中の怒りが白人たちにとっては解らないのと同じだろう。或いは、在日朝鮮人や部落の人たちが持つ社会的な怒りが、その他の国民には理解できない事と似ているのかも知れない。

虐げられている中国の非支配層の人達の怒りを理解しようとしても、文学的なコンテクストでしか結論は出ず、最終的には人間社会の謎にぶち当たってしまう。残念ながら、論理的ではない暴徒達は「アホ」である、という結論に達してしまうのだ。暴れたって解決するわけがないのに、逮捕の危険まで犯して暴れている人達は「アホ」に決まっている。この視点は事の本質を突いている正論なのかも知れないが、暴れている本人達に「ふざけるな!」と叱責されても仕方がない。

中国では農村や都会の下流家庭に生まれた人達に未来がある可能性は限りなくゼロに近いブルーである。「関係(クワンシー、要するにコネ)」も無ければ、教養もない。そうであれば、いわゆる低賃金のマクドナルドジョブをするしかないのである(中国でマクドナルドの職を手に入れれば中級程度の幸福な生活が送れそうだが)。夫婦共働きで、一年に一回程度しか田舎の家族や自分の子供にも会えない。或いは若者の場合、中学や高校を出ても職も無い。働いて、疲れて、僅かながらなの賃金は貰える。しかし、働けなくなれば終わりである。競走馬のように屠殺されて食肉になることはないだろうが、悲惨な未来が待っている。どこにも行けない袋小路。なのに人々は言う。中国は発展しているのだ、と。未来は明るいのだ、と。

日本の工場に石を投げる。むかつくからだ。日本もむかつくし、工場もむかつくし、工場で定職に就けた他の中国人もむかつく。日本車を攻撃する。日本という概念に腹がたつし、車に乗っている連中もむかつく。だから暴れる。不毛かどうかは解らないが、暴れずにはいられない。天に唾を吐けば、自分にかかって汚れるだけだ。それでも唾を吐かずにはいられない。その人達は深く考えていないのか、或いは無知なのか、本気で外国が中国を搾取していると信じている。我々が弱いと外国に乗っ取られるのだ、と。

私には彼らが何をしたいのかは解らないし、解りたくもない。私の周りの中国の大陸人エリート層の中に、デモに参加している人達の面影は見られない。こういった話題を振っても、殆どの人が冷静に政治や経済を分析している。そして暴れている連中を醒めた目で、或いは哀れみをもって見ているように感じる。そして、それこそが中国が抱える本当の闇なのであろう。

一方、日本に目を向ける。不景気の波の中で、ネット右翼などという言葉が市民権を得た感がある。外国のファンドが日本の森林を買い込んでいると言うニュースが新聞を賑わせた事があった。理性的に考えると、誰も買いたくない田舎の不動産を外国人が買ってくれるのだから、喜ぶべきことなのだと思う。アメリカやヨーロッパではTIMOというRIETに似た不動産投資が人気であり、日本でも田舎にお金が流れるきっかけになるかもしれない、と考えた。しかし事はそうは進まない。信用できない外国人が山林を買えば水を奪われる、などと言ったアポロ11号もビックリの仰天陰謀論が新聞紙上に堂々と掲載されるのだ。あんた、本当に水が欲しけりゃ、東京で水道捻ってもって帰りますわ。誰がわざわざ交通の便の悪い山から水を運んで中国の砂漠に持っていくのだ?要するに、六本木や新大久保に行った事のない田舎の人達にとって、外国人は怖い存在であるのだ。都会に育って外国人に慣れている私には全く理解できない発想である。

解らない、知らない、そして解りたくない。問題の本質は、擦れていない田舎っぽい日本人や中国の貧乏人たちが多様性に十分に晒されていなかったり、経験的な教育をきちんと受けていないことにあるのだと思う。残念ながら、社会は短期間で解決できない問題に直面している。グローバリゼーションが一気に進み、英語やジャバ言語が話されている世の中には活躍の場が五万とある。しかし、その世界に置いてけぼりを喰らった人たちや、搾取される側に回った人達。クラス(階級)の壁なのか、何なのか。搾取される側と搾取する側がいるから、資本主義社会は上手くまわる。

そして、それらの搾取されている人達を、まるで勝ちあがれない未勝利馬のように嘲笑うかのような文章を、匿名でブログに書いている自分がいる。人間とはそもそもが衝突を繰り返すように出来ている物なのかもしれない。

0 件のコメント: