大阪で生まれた私は「クジラ」という食材に愛着がある。つまり、クジラ料理が大好きだ。ただ、ICJの判決を受けた後、知ったかぶりするコラムニストたちが、「鯨肉は不味い」などというちんぷんかんぷんなコメントを多発しているので、少しだけ意見したい。
結論から言うと、鯨肉は固くて、生臭さが残る。私は鯨「肉」そのものが食材として一流であるとは到底思えない。私の親の世代では、鯨肉が給食に出てきたそうだが、鯨肉を毛嫌いする子供が多かったと聞く。私がクジラ料理を愛する理由は、クジラ脂と鯨肉の出汁からでる芳醇なコクが好きだからである。鍋料理などに脂の乗ったクジラを使うと、鍋の中の食材の味が一変するのである。私はクジラの「生臭さ」も含めてクジラのコクが好きなのである。
鯨肉を刺身などで食べている人がいるが、私はクジラ肉の刺身が秀でた食事であるとは思えないのだ。馬刺しも同じだが、生臭さを消すために生姜と醤油の味が強烈過ぎて、安物の赤味だと特に、コクが感じられない。ただし、雰囲気の良い居酒屋などで、馬刺しやクジラの刺身を食べると、何故か美味しいと感じてしまう自分がいる事も否定できない。まあ、そういう店では、馬もタテガミを付けたり、クジラも尾の身とか鹿ノ子とか、高級な物を選んでいるのだろうが。あと、クジラベーコン、おばけ(さらしくじら)、塩クジラは論外で、あれは不味い食べ物である。あんなものは、人間の食べるものではない。
個人的な好みとしては、クジラの照り焼きが一番好きだ。醤油と生姜に漬け込み、フライパンで焼くというよりは煮込んでみる。こうすると、まるで魚と豚か牛かレバーが一緒に調理されているような複雑な味になるのだ。はりはり鍋も好きだ。しかし、ハリハリ鍋に関しては、クジラは出汁を取っているだけと割り切った方が良いと思う。クジラの出汁でミズナを食べる、と考えて欲しいのだ。後は、このブログでは何度も紹介した、コロを使ったおでんである。あんなに美味しいものは考えられない。竜田揚げに関しては、家で作った事がないが、外で食べると味にバラつきがあるのであまり注文しない事にしている。もう一度言うが、クジラは筋肉を楽しむものではない。寒い海で育った、その脂の中に美味しさが蓄えられた素材なのである。
まあ、話を元に戻す。南極海での捕鯨調査に関しては、政府の中でも意見が一枚岩ではない。モラトリアムの網の目を潜るために、商業的な捕鯨を調査捕鯨だと主張している事は誰の目にも明らかだ。もし現在行っている事が純粋な調査捕鯨であるならば、南極海でクジラを殺すことなく調査を継続すればよいだけの話だが、そんな主張は皆無である。調査捕鯨に多量の税金が投入されているため、調査捕鯨を中止したいと考える政府系の役人は多い。一方で、水産庁の一派は、捕鯨を護る為の団体を大量に抱えており、南極海での捕鯨賛成の世論作りに励んでいる。
国際司法裁判所の場合、原告(南極海の資源を主張するオーストラリア)が訴えても訴えられた側(日本)が受けなければ裁判は成立しない。IWCのモラトリアムを額面通り判断すると、裁判を受ければ日本が敗訴する事は確実だろう。政府内の支出カットを考えている人達は、調査捕鯨を継続しない理由を必死に探していたとしか考えられない。
ミンククジラは高級食材であり100グラムあたり、安物の赤味でさえも1500円、高級な尾肉や霜降りだと数千円などで売られている。しかし、恐らく本当のコストはもっと高いのだと思う。何人もの大人が南極まで行って持って帰ってくるのだ。100グラムあたり数万円のコストがかかっていると考えられる。つまり、クジラ肉を売るために政府がどれほどの補助金を捻出しているのか、という事である。
政府は南極海で調査捕鯨を止めたかった。南極には行かないが、近海の調査捕鯨は違法とされていないし、小型鯨類はIWCに管理されていないので、日本の捕鯨文化は死なない。しかしニュースを売るために、マスメディアは未だに文化論などとして、「日本文化が欧米に見下されている」という台本でこの問題を取り上げる。
IWCはジョークである。が、南極海のクジラやオキアミは、人類にとっての数少ないサステナブルな資源だと思う。IWCは率先して、クジラを資源として最大限に有効利用する方法を真剣に話し合ってほしいと思うのだが、如何なものか?
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