大統領選もいよいよ大詰めを迎えようとしている。先週のオバマ対ロムニーの討論では、オバマがソフト過ぎるという批判を浴びており、ロムニーが討論の勝者であるとされている。だが、統計を見る限り、誤差範囲(Margin of Error)と多少の不確実性を見越しても、オバマ優勢は不動のものであるといえる。勿論この時期にそんな事を断定してしまうと、共和党からの批判がややこしいし、テレビの視聴率が揚がらない。従って、アメリカのマスメディアは必死に接戦を演出している。
昨日(10月11日)はバイデン副大統領とライアン副大統領候補の討論が行われた。全体の感じから言うと、42歳の若いライアンを、老獪なバイデンが感情を込めてやり込めるといったやり取りが繰り広げられた。ライアンは緊張を顔には出さなかった物の、常に水を飲むという緊張に由来する行動を終始とっていた。今回の討論において、私はバイデンが圧勝したと考えている。ただ、マスメディアの反応を見ていると、バイデンの老獪な立ち回りや、ライアンの意見に対してにやけた表情や首を振ったりする仕草、ライアンの発言を遮った反論に対して、批判的な意見が多いのも事実である。
オバマは前回の大統領選で様々な約束をした。しかし、ティーパーティーや極右勢力に耳を傾ける共和党の議員団が、ありとあらゆる事に反対して、政策が通らなかった。共和党の議員団は、政策があって反対しているのではなく、将来の選挙戦略として大統領の政策に反対していたのは明らかである。その結果、オバマの約束は有名無実化し、通ったとしてもオバマケアーのような骨抜き政策になってしまった。共和党の議員団で、特に勢いがあったのは70年生まれの若きウィスコンシンの下院議員、ポール・ライアンであった。
ライアンをはじめとする共和党議員団は、目的があって大統領の政策に反対していたのではない。目立つために、反対するために反対していたのである。案の定、ベイナーの下、かなり目立った若きライアンが副大統領候補に選出されたのだが、副大統領候補としては反対するだけでは職務を全うできない。自ら建設的な政策を打ち出す必要がある。建設的な政策を立てると、どうしても以前のスタンスと矛盾してしまう。そこを見事にバイデンに突かれた訳である。自業自得だ。政治戦略に傾倒しすぎると、どうしてもそういう事態が発生する。日本でも、政権を執った民主党が政策を反転させた論理矛盾を記憶されている事と思う。
ライアンは、サラ・ペイリンのような馬鹿ではない。だが、強硬右派の意見を代弁しており、政策に柔軟性を持たせる事ができないようである。ロムニーすら、ライアンの極端な政策を頻繁に否定している。共和党内でのパワーバランスと、五大湖周辺の票のためにライアンを指名したロムニーであるが、この選択がどうでるのだろうか?(でも、オバマが最後は勝つ)
バイデンは老獪さでライアンに自らを批判する隙を与えなかった。しかし、何故オバマが四年前に約束した事が殆ど未解決のままであるかの説明はなかった。四年前に約束した事が実行されていないにもかかわらず、現在約束していることを今後四年でどうやって実行するかの説明も果たさなかった。共和党の下院を批判することは可能であるが、副大統領の職務は評論家ではない。
米国も捩れ国会という課題を抱えている。捩れたものはどうしようもない。大統領の権限など、システムの前に瓦解している訳である。私は、オバマでも、ロムニーでも、基本的にはどちらでも良い。二人とも、大統領として相応しい人物であると考えている。ただ、いずれが大統領になろうとも(オバマになるだろう)、約束したことは実行されそうにない。それをリーダーシップの欠如と呼ぶのは、あまりにも可哀想である。
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10/12/2012
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