先日、ロンドンを訪れた。英国は物価が高いと溢す人が大勢いるが、そこまで酷いとは思わなかった。税金を考慮したうえで円換算をして日本の物価と比べると、むしろ安いと思った。ドル換算をして、アメリカと比べると少々割高だが、そこまで言うほどではなかった。むしろ、ロンドンに比べると、バンクーバーの方が物価がずっと高いように思えるのだ。
G8の中で、実は現在カナダの物価が一番高いのではないだろうか?理由は、カナダドルと米ドルがほぼパリティー(等価)であるからである。
カナダでは、習慣的にアメリカドルの1.4~1.5倍くらいの値段のカナダドルで定価がつけられている。例えば、チェーンのコーヒー店のコーヒーがアメリカで2.50米ドルだとすれば、カナダでは3.50カナダドルとなる。何故なら1USDがおおよそ0.7-0.67カナダドルの時代が長かった為である。しかし資源バブルの波に乗り、資源大国と思しきカナダのルーニーは米ドルベースで投機的に買い漁られた。さらにはサブプライムの問題でアメリカの住宅市場が崩壊する。アメリカにあった資金がカナダに一時的に避難したのだ。
カナダは積極的に移民を受け入れ、バンクーバー、トロント、カルガリーといった都市の人口が爆発的に増加した。そして、移民富裕層がだぶついたお金で買うものといえば、不動産である。アメリカの住宅の値段が崩壊するのを余所に、バンクーバーやカルガリーの住宅やマンションの値段は騰がり続けた。世界同時不況などと言われていたが、ここシアトルから二時間半ほど車で北に走ると、調子の良い国があり、世界同時不況と言う言葉がまやかしである事は誰の目にも明らかであったのだ。
ワシントン州北部のベリングハムなどには、ブリティッシュコロンビアの車が押し寄せる。ショッピングセンターはカナダ人で満員。ガソリンスタンドはカナダの車で長蛇の列である。エベレット近郊にアウトレットがあるのだが、そこも半分以上の車がブリティッシュコロンビアのナンバープレートである。ブリティッシュコロンビアから、特に北米に来て間が浅い中華系の人達がアウトレットに大挙訪れるのだ。
バンクーバー中心部のマンションは、日本円換算で二億、三億が当たり前。シアトルと比べると四倍~六倍といった感覚だ。旗艦となるような産業がなく、野球やバスケットボールなどの経営すら成り立たないようなゴマメ都市のバンクーバーに、それ程の「力」があるとは思えない。新しい移民の豊富な資金力、それと米ドルから資源関連に資金を移す投機家の思惑、バンクーバーの不動産を正当化できる説明はないわけだ。
カナダ政府は、30年の住宅ローンを基本廃止し、最長返済期間を25年に短くした。そして、どうも夏ごろから、バンクーバーの不動産がだぶついているという話を良く耳にするようになった。引き締めもある程度効いているのだろうが、どうも豊富な資金力を持つ移民たちの本国で「火事」があったために、バンクーバーのセカンドホームを手放す必要が出来た人達が大勢いるようだ。
中国経済が崩壊に向かい、それがカナダの経済を根本から揺らがそうとしている。カナダの一連の住宅バブルは弾けるだろうし、ルーニーも米ドルベースで今後は軟着陸していくことだろう。カナダ銀は、カナダドルが高止まりしている状態では下手に利下げをする事が出来ず、結構難しい政策選択を迫られることになるだろう。
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