7/16/2013

ジマーマン事件の感想をフェースブックに載せると、「差別主義者」と罵られる。

ジマーマン事件、特集

ジョージ・ジマーマンの事件で色々思う所があったのでフェースブックに書き込みをした。日本語に翻訳して要約すると「今回の件は銃が問題であるのに、メディアは人種問題にばかり光を当てている。これを一番喜んでいるのは銃規制に反対する者たちだけだ。」というかなりオブラートに包んだ表現を使ったのだが、結構評判が悪かった。私のアメリカ人の友人にはリベラル系が多いのだが、「人種こそが今回の事件の元凶である」や「黒人のお母さんの気持ちを考えよ」などといった「リベラルな」意見を沢山頂いた。酷いものになると「お前は差別主義者だ!」と来た。アメリカ人に差別主義者と罵られたことは、ある意味嬉しかった。いつもは「Like」を押してくれる友達も、羹に触りたくないのか、反応はかなり悪かった。

私の主張ははっきりしている。
  1. ジョージ・ジマーマンがトレイボン・マーティンを殺した今回の一連の経緯に、人種差別はなかった。
  2. フロリダの法律に則ると、ジマーマンに下された無罪判決は予想通りの常識的なものであったし、それこそが「正義(ジャスティス)」である。
  3. フロリダの銃に関する法律は、混乱が生じないように積極的に改良するべきである。
  4. 出来る事であれば、国家レベルで長期的な視点をもって銃規制に力を入れるべきである。
  5. アメリカの人種問題、特にアフリカ系アメリカ人の貧困は深刻な問題であるが、それは今回のケースとは別の社会問題である。

ただ、1と2は、アメリカの感傷的な左派には到底受け入れられなかったようである。私は理路整然と、今回の一連の話を考え続けた。が、どんなに努力しても、人種問題がこの事件に直接影を落としているようには考えられないのである。しかし法廷の外では人種が問題とされた。メディアは視聴率稼ぎの為か、人種問題に焦点を絞り、事件の「台本」を作った。そして一部の人、特に格差是正などのデモをしている人たちが、この事件を人種差別の象徴と使い始めたのだ。

NCAAP(全国有色人種向上協会)がマーティン家の弁護士を務めたり、法廷外のデモを主導していたりするのだが、この団体が事件を人種問題と結び付けたいようだ。NCAAPは国民の公民権問題で数十年前には色々な功績を残したが、近年は人権圧力団体に成り下がっている節がある。この団体は、銃規制についてはほとんど触れないし、そっちの方向に話が行かないように気を付けている節すらある。NCAAPは、ジマーマンが人種プロファイリングした事を問題視している。

人種プロファイリングとは、人種帰納とも呼ばれ、「人種」によって不審人物かどうかを推測して、職務質問などをしたりする事である。黒人が分譲住宅地の中を歩いていたと言うだけで、ジマーマンはマーティンを怪しく思い、尾行し、最終的に射殺に至った、と言う物である。つまり、マーティンが黒人でなければ、マーティンは殺されていない、という事になる。

私が法廷のやり取りを掻い摘んで聞いた情報から推測する物語とは、かなりかけ離れている。ジマーマンが住む分譲住宅の敷地内で、空き巣などの被害が相次いでおり、黒人少年が逮捕された。しかし、いまだに空き巣の被害は減っていないので、自警団であるジマーマンは、警察の対応に不満を募っていた。ある寒い雨の夜、黒人の少年がフードを被って、家々を物色しながら、裏地を歩いていたので、不審に思った。しかも、薬物等を使用している様子すらあった、というのが事件公判で明らかになっている。

勿論、この話がジマーマンの都合に合わせて作られていないとは限らない。ジマーマンは警察に電話をし、「最近この辺りは空き巣にやられているのですが、明らかな不審者がいるのです。この男は、多分良からぬ事を企んでいるのか、それともクスリか何かをやっているのか、そんな感じです。」と告げた。それに対し、電話交換手の女性が「その男は、白人ですか?黒人ですか?それともヒスパニック系ですか?」と聞いたのを、ジマーマンが「黒人みたいです」と受け答えをしている。

しかし、左寄りのNBCは、このテープを編集して「This guy looks like he’s up to no good. He looks black.(こいつは、良からぬことを企んでいる。こいつは黒人だ)」としたのだ。このように続けられると、かなりの印象操作である。NBCのニュースで何度も流されたのだが、これを聞けば視聴者はジマーマンが黒人だからマーティンを追いかけたと考えても仕方ない。しかも、下の二組の写真を見て欲しい。上の写真の代わりに、下の写真が使われていたのだ。かなりイメージが違うだろう。

この日は二月の雨のフロリダにしては寒い時期で夜7時だったので、ジマーマンは「Fucking Cold!(糞寒いなぁ)」と言った。それを、左寄りのCNNもジマーマンが「Fuckin coon!」と言ったと誤報道したのだ。Coon(クーン)は黒人に対する差別用語である。クーンと言えばラクーン、つまりアライグマの事でもあるが、それとは関係ない。奴隷貿易の時に、「Barracoon」と呼ばれる檻に入れられて黒人がアメリカ大陸に運ばれていたことから、黒人をクーンと蔑むようになったという。こんな事がニュースに伝えられれば、色眼鏡で見てしまうだろう。

メディアのレベルの低さや、視聴率目当ての誘導的な手法を批判しだせば、5冊くらい本が書けるところであるが、その話は脇に置いておこう。私は、この「射殺」事件の背景には人種問題はなかったと信じて疑わない。しかし、何故黒人たちを中心に、そこまで人種の問題が取り上げられるのかが理性的に理解できないのだ。ニュース番組に出てくる人種問題根拠説を唱える人達は、物凄く感情的である。勿論、あの人たちの知能指数が足りないので、メディアにころっと騙されて、ジンマーマンに対して感情的で不公平な逆差別をしている、などと断じる事は簡単かもしれない。しかし、それでは腑に落ちないのである。

マーチンは暴力を振るったにせよ、所詮は未成年である。黒人の不良なら、正当防衛の名の下に殺されてもいいのか?黒人の不良が虫けらの様な扱いを受ける社会は、おかしいのではないか?私は、色々な点でこの意見を支持することは出来ない。まるで、素行不良を容認するような発言であるし、黒人やラテン系を中心とする未成年のギャングメンバーによる殺人事件が後を絶たない社会の現実を無視しているようにすら思うからだ。しかし日本でも、偏差値の足りない未成年がお祭りでバイクなしで暴走族の真似をするような事もあり得るわけだし、カツアゲ行為などをしている人達も多くいるわけだ。アメリカでなら、これらの子供同士が殺し合いをしたり、一般人を死傷させたり、正当防衛の名の下に殺されたりすることもある訳だ。アメリカでは「ワル」をすると命を失う可能性が高いわけだ(注:日本でもワルは良く死亡事件に巻き込まれています)。何故か?アメリカでは簡単に銃を手に入れることができ、人を簡単に殺すことが出来るからだ。

しかし、NCAAPは銃ではなく、「プロファイリング」を問題としている。言うまでもなく、人種によって人を犯罪予備軍と見做すことはおかしい。特定の人種が悪名高くとも、ほとんどの人は善良である。ベイズの簡単な式を使って考える。例えば、ある町では犯罪者で逮捕した者の80%が黒人であるとする。この町の住民のうちの30%が黒人であるとする。犯罪率は1:1000人である。こういった状況で、黒人をランダムに職務質問して、その黒人が犯罪者である確率は0.3%に満たないのだ(ベイズによりP(犯|黒)=P(犯)*P(黒|犯)/P(黒))。つまり黒人のうち、375人に1人しか悪い奴はおらず、残りの374人は善良な市民という事になる。374人の善良な市民は悪くもないのに職務質問を受け、気分が悪くなる。その犠牲のもとに、1人の犯罪者を検挙することは社会的に許されるのだろうか?これがNCAAPの主張である。まあこれはランダムに選んだ場合にいえる事であって、実際にプロファイリングする際は人種以外の要素も考察されようし、明らかに悪そうな奴もいる。だが、実際に黒人は日常的に不審な目で見られることがあるようで、イラつく事も多々あるようだ。

私が以前住んでいたシアトル近郊の町で、ある時期に空き巣が頻繁に起こった。ある日、私の大家が不審な黒人を見つけ、警察に通報した。連絡を受けて駆け付けた警察が職務質問をした結果、その不審な黒人が連続空き巣犯である事が判明した。私の大家は警察から感謝状をもらった。どうも電話したのは私の大家だけではなかったようで、何人かが感謝状を受け取ったようだ。何故私の大家が警察に電話をしたのか?その人物が不審であったからだ。それが偶々黒人であっただけである。今回のジマーマンのケースと全く同じである。NCAAPの主張に沿えば、これも人種差別なのか?

もし、NCAAPの主張が正しいとして、NCAAPは一体どんな政策を提案出来るというのか?もし人種によって、犯罪のプロファイリングが禁止されれば、不審者がマイノリティーであった場合に警察等に電話することを躊躇う事態が出てくると思われる。不審かどうかなど、直感に頼るしかない訳だ。理性的に判断などできないし、予防的な措置が犯罪を防ぐ可能性もある。フォールスアラームもあろうが、犯罪者を捕まえる事が出来る方が良い、と私は考える。警察は、不審者を見かけたらすぐに通報するように、市民に促しているではないか。

NCAAPが差別のない社会を作りたい、肌の色が障礙にならないような社会を築きたいという理想論を説くのは自由であるし、私もそうなって欲しいと切に願う。しかし現実問題として、社会の安全性の中で、犠牲にしなければならないものも多くある。プロファイリングを責めるのは、個人の心の領域に踏み込む行為であり、社会の安全を脅かす可能性も考えられ、自重するべきであると考える。社会に対してマイナスが大きすぎるのだ。私は怪しい人物を見かけたら積極的に通報しろと言っているのであって、黒人を見つけたら通報しろ、と言っているのではない。ましてや、人種差別を助長している訳でもない。逆に、行動を起こす人種差別主義者や、面白がって差別的な主張を繰り返す者たちは、社会の福祉に反する犯罪者であると考えている。差別のない社会を作るべきであるが、教育の向上など、気長に投資していくしか解決方法はないのではないか?

ジマーマンに対するレッテル張りは、黒人社会と「普通の」白人社会の間に溝を作る行為である。ジマーマン自体は警察ではないし、でしゃばり過ぎた。しかし、正義感に溢れたコミュニティーを大切にしたいタイプの人間である、と私の目に写った。メディアが面白がって人種問題を扱えば扱うほど、政局が二極化して、法案も通らなくなるだろう。フロリダなど、米国南部でいまだに健在な自己防衛法の在り方など、社会的に議論することは山ほどあるというのに。

今回の事件ではマーチン側にも自己防衛の権利があった筈だ、と論じる人もいる。状況証拠からは、マーチンが最初に殴りかかったものと考える方が妥当なのだと信じているのだが、目撃者がいないので100%そうだとは言い切れない。仮に、マーチンがジマーマンを撲殺していたとしよう。銃をもった男に脅された為に、自己防衛したのだといえば、無罪放免になる可能性もある訳だ。「もしも」の話をしだすとキリがない訳だが、スタンド・ユア・グラウンド法がどれだけの悪法かが解ると思う。ただ、法治国家では、悪法も法なり、であり、悪法故に個人を裁くことはあってはならない。気に入らなければ、選挙によって選ばれた政治家が法律を変えるしかない訳だ。

まあ、一つ学習したことは、SNSで政治発言をすると危ないという事だ。匿名のブログの中だけで好き勝手言います。長文に付き合わせて、申し訳ない。

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