11/15/2006

北京烤鴨


私は北京人に対してあまりいいイメージを抱いていない。今まで出会って来た北京出身の人達は、例外なく何か鼻にかけるようなところがあり、余りいい印象を私に与えてくれなかった。私は大阪人であり「金に汚い」為、伝統としきたりを重んじる北京人とは馬が合わないのかもしれない。同じくプラグマティックな台湾人や上海人とは妙に上手く馴染むという事実もある。優雅なふりばかりをし、他人を小馬鹿にする京都人やニューイングランドの連中にも余り良いイメージが無いので、このステレオタイプだらけの低劣な仮説も、あながち間違いではないのかもしれない。私が北京出身のエリートばかりと接して来た為、サンプルに問題があったのかもしれないが。

空路で北京に着いたとき、上述した北京人に対する悪いイメージや、政治的な理由などのせいで、やたらと身構えていた。まるで敵の本拠地に来た様な気がした。北京訛りの巻き舌の中国語を聞く度に身が強張った。しかし、タクシーで建国門路と東三環が交錯する中国大酒店に近づくと、私の強張りも徐々に取れてくる。世界には素晴らしい楽園が余り無いのと同様、思っている酷い街も少ないのだ。砂埃かスモッグで覆われているとはいうものの、街は結構綺麗だ。自転車は全く走っていないし、公安が数メートルおきに立っているといった雰囲気もない。人民服を着ている人など皆無である。映画の世界で触れていた北京の街とは大きく違った。さらに嬉しいことに、北京は中国の他のどの街よりもアジアの大都市の雰囲気を持っていた。オリンピックのせいか、街中が文字通り建設中で、いかにも発展しているぞ、という感じがする。余り事情を知らない人が見れば、まんまと騙されてしまうかも知れない。

北京では全聚徳が北京ダックの店として有名だが、今回は地元の人の勧めもあり、大董烤鴨に行った。この店は鴨を注文してから出てくるまでに40分くらいかかるので、燕京ビールで喉を潤わせ前菜を楽しむ。私のお勧めは、フォアグラだ。トリュフに似たキノコのソースをかけたフォアグラが、日本円にして1000円程で楽しめる。濃厚なフォアグラの味は、一緒に行った北京の人達には評判が良くなかった。そして松鼠魚。基本的には糖醋魚の一種なのだが、良く解らないが頭と尾が上を向く様子がリス(松鼠)に見えるという。身に切れ目を入れ、深く揚げる事により魚の身がまるで松笠のように見える。香ばしく、上品でお勧めの一品である。

ついに北京ダックが完成だ。時間をかけてじっくりとローストされた綺麗な光沢のあるこんがりとした鴨を我々に見せに来てくれる。そして、適当な大きさにカットする。店によると北京ダックには3種類の食べ方があるらしい。しかし、普通は小麦で作った麺(皮)の上に、北京ダックを数切れと、白髪葱と甜面醤を載せるのがスタンダードだろう。この店の北京ダックは脂が少なかったし、それを売りとしている。これは、北京の人に言わせれば上品であるらしい。しかし、プラグマティックな人に言わせればパンチが足りないとも映ろう。

北京ダックは確かに美味しい。素晴らしい技法を用いていることも良く解る。しかし、私はどうしても、ファーストフードの感覚が捨てきれない。まるで、ブリトーやラップ、或いは手巻き寿司のような感じがするのだ。甜面醤の味が常に勝ちすぎてしまうのも、ファーストフードっぽい。レストランでは北京の人達が巻き舌の中国語で会話している。一緒に行った北京人たちは、料理のディスプレイや店の雰囲気の良さを強調する。味よりも見た目にこだわる、北京人の執念のようなものを感じた。それこそが文化であり、文化は大衆のレベルできっちりと残っていた。

大董烤鴨
北京市东四十条甲22号南新仓国际大厦1~2楼

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