11/23/2006

感謝祭のターキーとクランベリーソース


11月の第4木曜日はアメリカの感謝祭である。感謝祭はサンクスギビング・デイと呼ばれており、アメリカではクリスマスに匹敵する大きな祭日だ。多くの人々は実家に帰り、家族と共に神に感謝をして夕食を食べる。語弊があるかもしれないが、日本で言うところのお盆のような雰囲気であると言えばいいだろうか?感謝祭が終わると直ぐにクリスマスが来るので、アメリカでは文字通り「盆」と「正月」が一遍に来るのだ。因みに、アメリカの小売店の売り上げの半分はこの一ヶ月の間に集中するという。

一般的なサンクスギビングの日のスケジュールを紹介しよう。水曜日の朝の飛行機で実家に向かう。渋滞した高速道路を家路に急ぎ、その日は床に着く。概して北部の天気は悪い。雪や雨が降り続くのだ。翌朝10時、七面鳥にバターを塗り、お腹の中に細かく千切ったパン、セロリ、玉葱、人参を混ぜて詰め(スタッフィングと呼ばれる)、オーブンの中に入れる。ソファーに寝転び、借りてきたDVDを見ながら退屈に過ごす。そのうちアメフットが始まる。暇をもてあまして、家族でダラス・カウボーイズの試合とデンバー・ブロンコスの試合を、プリッツエルを齧りながら見なければならない。オーブンに入れている七面鳥からはジュースが一杯あふれ出しているので、時折その汁を刷毛で満遍なく七面鳥全体に塗る作業は決して怠ってはならない。午後4時ごろ、七面鳥が焼きあがる。感謝祭の日のディナーは早いのだ。

感謝祭には七面鳥の丸焼きが必ず出される。通常、ターキーには、二種類のソースが用意される。一つはグレービーソースであり、もう一つはクランベリーソースだ。グレービーソースは、七面鳥の焼き汁をパンに移し、首の肉、レバーと砂嚢のミンチを入れて煮込み、仕上げにとろみを付けた物である。日本でも良く食べられる味だ。クランベリーソースは、日本ではツルコケモモと呼ばれているクランベリーに砂糖を加えて煮込んだジャムのような物である。クランベリーソースとターキーの組み合わせは絶妙だ。日本人では好き嫌いが解れてしまうかも知れないが、肉と甘いジャムの組み合わせは以外にも良く合う。西洋料理には、果物を使ったソースが良く登場する。フランス料理の鴨ロースとオレンジソースなどが有名だが、やはり日本料理でこの手の組み合わせは滅多にお目にかからない。

個人的に砂糖が日本料理を殺したと信じている。砂糖は南蛮のものであり手に入れるのは難しかったため、昔の日本人たちは甘さを他のものに求めていた。それは味醂であったり、白味噌であったのだ。やがて、甘さを抑えることに美徳を見出し、それが食の文化となった。そのような背景があるせいか、砂糖が氾濫している現在においても、甘さに対して過敏に拒否反応を示す日本人は多い。私もその一人だった。しかし、アメリカに長くいると、やがて甘いものに慣れ親しんでしまったし、素材の味を壊さなければ、多少の甘さは逆に歓迎している。

今年の感謝祭は、残念ながら人の家に行く事が叶わず、自分で七面鳥を作る羽目になってしまった。先ほどスーパーで買って来たのだが、約20ポンド(9キロ)ある。オーブンに入れて6時間ほどは軽くかかりそうだ。一体何時になったら食べ切れるのか?衝動的な行動に、反省の念にかられている。クランベリーソースも鍋に一杯用意したのだが、果たして終わるのだろうか?来週は毎日、クランベリージャム入りのターキーサンドイッチを弁当として持参することになりそうだ。

現在、七面鳥をオーブンに入れてから約5時間が経ち、いい色に仕上がってきた。人気が消えた街はゴーストタウン化しており、歩いているのは身寄りが無さそうなアジア人だけだ。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

mashed potatoもおいしいよね。口直し的にターキーと合うような気がする。