12/01/2012

リフレ政策で日本経済崩壊(6):国のバランスシートを都合よく曲解する人達


この匿名のブログにも、読者からのコメントが時に寄せられる。態々国債崩壊シリーズを読んでくださった読者から、痛烈な意見が来た。面白おかしく要約すると「この毛唐野郎め、日本国債は借金ではなく、日本の資産だろ。日本国債ほど安全なものはない。日本国債崩壊を煽動しやがって!ボケが!」といった内容だ。まあ「崩壊」という派手な言葉を使っているが、著者の主張はこの国債崩壊シリーズを読んで頂ければ理解してもらえると考える。ただ、所謂「国家バランスシート」論が物凄く気になる。以前取り上げた、維新の石原党首の発言などにも、バランスシートを誤解した考え方があった。少しばかり説明する。

インチキをしていない限り、財務諸表が企業の経営状態をおおよそ反映している事は事実だ。バランスシートを見ることで企業の健全さをチェックできる。しかしバランスシートを作る上での、技術上の問題が多々知られている。従って、バランスシートを鵜呑みにすることは危険である。さらに、バランスシートはある時点の企業の状態を反映したものであり、時間が経てば色々な価値が刻々と変化する。価値が変化すると特別損益や利益が発生するわけだが、財務諸表はクオーターごとにしか発表されない。

もし財務諸表が絶対的であると仮定すれば、PBR(株価簿価倍率)の低い会社の株を買えば良い。あるいは、PBRが1を切る会社の株を買えば「絶対に儲かる」はずである。しかし現実には損をする場合が多い。貸借対照表の資本の数値は、必ずしも企業の経済的実態を真っ当に評していないことがあるからだ。たとえば、貸借対照表に計上されている資産の中には継続企業を前提として金額が評価されているものも多く、破綻して清算する場合には換金価値が無く資産金額が目減りしてしまう場合があるからだ。

プロはバランスシートを元に、その裏側を読もうとするわけである。ウォレン・バッフェートは財務諸表を読むのが趣味と公言している。村上ファンドがバランスシートを見て阪神電鉄株を割安と判断した事など、例には困らない。

そういった企業のバランスシートの考え方を国の財政に応用することも出来る。しかし、そのバランスシートを曲解して、色々な「とんでも意見」を出している人達が後を断たない。こんな事に付き合っているほど暇ではないので、最近目にした得に酷い主張を3点ほど並べておきたい。

  1.  政府が借金をすると、家計の金融資産が増える:家計の金融資産を貯金すると、銀行が勝手に国債を買うので、国の負債になる。従って、政府の資産側にその額が積み足される。勿論「バランスシート」なのだから借金が増えれば資産も増える。だから何?
  2.   国は資産が多いので、倒産しない:固定資産に計上されているもの、例えば道路や空港、港湾や箱物。どうやって売るの?道路なんて、一体誰がその額で買うの?負債を計上して作ったものなので、会計学的にコストがそのまま資産に計上されているだけの話。第一、利益がでる資産については、長期金融が騰がった瞬間に評価額が目減りする。まともな会計基準を用いれば、莫大な「特別損失」を計上しなければいけない事態に発展するのだが。
  3. 個人金融資産が約1500兆円あるので、このカネを政府が使えば良い:市中の銀行に貯金した時点で、ほとんどが勝手に国債に変換されています。1500兆の大半が国に借りられたままになっているのですが…

私が勝手に想像するに、大学で経済学や金融論の基礎知識を身につけずに、会計専門学校に通ったり、会社の会計の研修を受けたりして「テクニカル重視」の訓練を積んだ人達は、「曲解バランスシート論」に靡く傾向があるように思われる。経済問題を理解するためには、技術法だけでなく、コンセプトをきちんと理解して欲しいと思う。

長期金利が高騰すると、日本国中の資産価値を下落させる。すると特別損失と言う形で国のバランスシートに破滅的な影響をもたらす。簿価はあくまでも、昔の値段。今現在の価値(他の人が買い取ってくれる値段)は色々な要因で常に動くんですよ。こう説明すれば「バランスシート派(笑)」の方たちは納得していただけるだろうか。簿記価格とフェアヴァリューが違うからこそ、株を買うときに鞘取りの機会が生まれるのです。そして経済的に意味があるのはフェアヴァリューだけなのです。金融の基礎が解らない人は、物凄く単純化したとはいうものの、なるべく丁寧に説明したつもりなので前の記事を読んでください。

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