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12月, 2012の投稿を表示しています

時間切れ間近。財政の崖問題:バッドディールよりはノーディールを望む

フィジカル・クリフ(財政の崖)の問題が大詰めを迎えようとしている。年末の期限までに決められなければどうなるのか?ブッシュ政権下で導入された大型減税策が 2012 年末で期限切れとなり、このまま新年を迎えると自動的に増税となる。さらに、大規模財政赤字削減が強制発動され、国防費を中心に 10 年間で最大 1 兆 2000 億ドルの歳出削減が実施される。 テレビをボーっと眺めている人にとっては、「財政の崖」は早急に議会が折衝して法案を通すべき問題であるのかもしれない。対策をとらなければ米国経済はマイナス成長となる可能性が高く、景気後退に陥る危険性がある。だからこそ、バーナンキがこの問題を大袈裟に財政の「崖」などと比喩したのである。法案が決められないのは共和党がサボタージュをしているからであり、オバマや民主党が選挙で勝ったのだから、わがままを言わずに早急に通せば良い。 CNN などを見ているとこういった意見が主流のようだ。 年末までに議会が何も決められず「財政の崖」から落ちる事態になると、具体的にどのような結末が待っているのだろうか?年収が 500 万円程度の個人であれば 17 万円ほど、子供が二人いる家庭であれば 19 万円ほどの増税となる。年収が 2000 万円程度の個人であれば 75 万円ほど、子供が二人いる家庭であれば 63 万円ほどの増税となる(1ドル100円で計算)。かなりの額である。さらには、健康保険、教育、失業保険などへの歳出が減らされるため、それ相応のサービス低下が発生する。失業保険は減らされ、職がない人には厳しい。住宅ローン減税なども下げられ、負担が増える。 様々な助成金も削減される。 例えば酪農家に対する助成金が国から来ており、それがなくなってしまうので、ただでさえ日本より高くて不味い牛乳の値段が倍増する恐れがあるとされている。 連邦政府(国)から州政府に多くの金が流れているため、州ごとに色々な影響が考えられる。カリフォルニア州など一部の州では、税金から州へ行く額が増えて、州の財政の足しになる。ただ州税に関しては不確定要素が多くなるため、納めすぎた税金の返還が遅延する可能性が言われている。 一部の州では相続税が「いきなり」復活する。年を越えて親が死んだ家族は大損する。どうせ死ぬなら大晦日までに死んで欲しいものだ。...

神風特攻を目指す麻生財務大臣

DC のヤラセの歌舞伎ダンス、「財政の崖」討議には辟易とするが、それが色褪せるほど日本の話題が金融界で活発に議論されている。日本の金融問題が世界経済の卓上に上がるのは久々の事であるが、必ずしも良い意味で上がった訳ではない。専門家の意見は、日本は最後の賭けをするつもりのようだという事で一致している。この社会的な実験次第で、今後の世界債券市場がひっくり返る可能性もあるからだ。 まさに実験が始まろうとしているのだが、麻生氏が次期財務大臣となったのは、非常に面白いと考えている。外国のメディアに対しても、かなり目立っている。安倍氏が首相に再登板したのを見て、自分も財務大臣として活躍する事で、再登板を狙っているのかも知れない。 財務大臣としての会見が開かれたようだが、報道のされ方に非常に違和感があった。会見にのぞんだ記者の質問のレベルが低いのはいつものことであるが、「一段の金融緩和が、世界的な通貨安競争に発展しかねない」という意見に対して麻生大臣はどう思うのかを問われた。 こういった意見に対して「通貨は市場が決めている、私たちは日本の経済成長のために仕事をするだけだ」と言えば良かったのに、麻生氏は反米自虐史観のような意味の解らない受け答えをした。さらに、円安傾向に対して他の国に兎や角言われる筋合いはない、と取られかねない発言をしたようだ。そして、日本の事に干渉するなと言った矢先に、ドルが強くなる事がアメリカの利益である、とアメリカには意見したとされる。これは、ブラジルの大統領ではなく、日本の新しい財務大臣の意見であるのだ。 初めに、記者が質問した「カレンシーウォー」などというのは投機筋が作り出した作り話である。通貨が切り下がる事で喜ぶ産業がある事は確かだ。必要以上に通貨が高くなりすぎると(日本の様に)弊害もある。しかし、通貨安を国の意志としている国など発展途上国だけである。アメリカがドル安を、イギリスがポンド安を望んでいると言った意見が流布されているが、陰謀論以外の何物でもない。中央銀行の政策に対してシティーやウォールストリートの色々な意図が働いてポンド安やドル安に誘導していると言うのが実態である。ドル安やポンド安が政治の意志であり、日本はセーフヘイブン、などとメディアで吹聴しているのは投機筋が儲けるためである。しかも、会見の冒頭には「最近の...

シーホークス、プレーオフ確定。我等のルーキーQBラッセル・ウィルソン

2013-2014シーズンについてはこちらから。 この記事は2012-2013シーズンの物です。 シアトル・シーホークスが、 QB のアレックス・スミスを欠くサンフランシスコ・フォーティーナイナーズをシアトルのセンチュリーズ・フィールドであっさりと 42 - 13 で下して、二年振りのプレイオフ進出を手中にした。 同一リーグの好敵手との試合という事で、ゴールデンチケットとなった 12 月 23 日の試合である。シアトルでは、チケット売り場から一定以上離れてさえいれば「ダフ行為」は合法である。ダフ屋やネットオークションによって、この日のチケットは一番安いチケットで 197 ドル。平均は 457 ドルとなった。中には、 2000 ドルで買った「バブリー」な人もいたようである。 昨年はクオーターバックのジャクソンが話しにならず、テネシー・タイタンズに移ったハッセルバックの穴を埋められないまま、シーズンはあっさりと終了した。 今期は誰をクオーターバックで使うのかも不明なまま、プレシーズンが始まった。監督のピート・キャロルはグリーンベイから獲ってきたマット・フリンではなく、なんとルーキーのラッセル・ウィルソンを QB に指名したのだ。背が低いウィルソンは、ドラフト三巡目での指名であり、そこまでは期待されていなかった。昨年のジャクソンよりは断然に良いまでも、ルーキー特有の甘い試合が目立ち、二歩進んで三歩交代するような内容のフットボールが続き、 4 勝 4 敗で 10 月を終えた。シーホークスはウィルソンでは勝てない、などというスポーツアナリストも現れた。 しかし、そこからである。ラッセル・ウィルソンは持ち前の機動性に富んだ動きを生かす。しかも、パスの精度が確実に上がってきた。ここぞと言う時には大きなプレーまで決めるようになる。フロリダで惜しい星を落としたものの、シーホークスの連勝が止まらない。 12 月に入ってからは無敵である。アリゾナ相手に 58 - 0 という高校生 VS プロのような点数差を決めると、カナダのトロントでのバッファロー戦では二週連続で 50 点という恐ろしい鬼記録を残す。 そして、相手は手負いだったと言うものの、同地区一位のナイナーズを下し、プレーオフ進出を決めたのだ。圧倒的な内容であった。コーチであるピート・キャ...

予定通り安倍氏が再選。市場はリスクオン。短期間で儲けられるだけ儲けよう!

「アベノミクス」は歓迎である。方向が明確に定まっており、市場が動くのが確実なので、波に乗るだけで儲かるからだ。円安と短期間の株高路線は疑う余地がない。私もその線でポジションを取っている。投資家らからすれば、こんなにありがたい政治家は今までいなかった。安倍氏はまさに兜町、輸出製造業そして土建屋のヒーローである。 ただ、投資家の儲けは必ずしも日本の経済成長に繋がらない事がポイントであるし、その事については何度も当ブログで書き続けてきたので省略する。が、日本経済がスタグフレーションで酷い事になろうとも、短期で儲かれば良いと考えている人が大勢いるのだろう。日本人もアホじゃないので、投票率が低かったのは、こういったふざけた意思が完全に国民に見透かされており、安倍首相を積極的には支持できなかったのが原因である、と信じる事にしたい。 選挙戦略のための口先だけであり、実際に安倍氏が「負けるのが見えている危険な賭け」を実行しなければ、それは素晴らしい口先介入だった、となる。不要な民主党議員の首を切って、口先だけでモメンタムを変えて、メデタシ、メデタシとなる。ただ、日本のマスコミの嫌らしさは半端ではないので、そんな事は許されないと考える。安倍氏が一年以上総理大臣の椅子に座りたければ、言った事を実行するしかないのではないだろうか?安倍氏は前回の反省もあり、有言実行してくる可能性が高いと思っている。 外務大臣と財務大臣は将来の首相候補にやらせて来たのが自民が強かった頃の伝統だ。ただ、余裕がなくなって来たのか、昨今はこれが崩れてきた。麻生元首相を財務大臣に据えるなどと言った無意味な人事案が出ているようだが、危険なアベノミクスを実行するためには余程のリーダー力を持った識者をこのポジションに置く必要があると思う。或いは、失敗が見えているので使いやすい人を持ってくると言う考え方もあるだろう。 日銀総裁人事はさらにややこしい。白川総裁は切るのが確実であると考えられており、来年三月の二人の副総裁を初め、ハト派で固めるようだ。竹中平蔵教授のような人の名前も出ているようだが、マクロ経済が専門でない有名人に白羽の矢を立てても仕方ないし、本人も辞退するだろう。次期日銀総裁は史上最低の日銀総裁の称号が授与される可能性が高い。アベノミクスを押し付けられて、日銀バランスシートを毀損し...

大韓民国大統領選。保守本流の朴槿恵と左派お笑い候補たち

2012 年は選挙の年だという事で、中華民国から始まって、ロシア、フランス、アメリカ、中国と色々な国の未来について占ってきた。最後を締める筈だった大韓民国だが、まさか日本が先に政権交代を果たす事になるとは思わなかった。 韓国の大統領選に関して言えば、もし大韓民国の人々がまともであるとすれば、朴槿恵が儒教の色が濃い北東アジアで、近代史において始めての女性の国家トップとなる事になる。左派の文在寅は泡沫お笑い候補の極左・李正姫のせいで、反李明博票を取り合いする。結果は、朴槿恵にまともな票が流れる事となろう。レイムダック化を必死で防ごうと反日カードを切らざるを得なかった月山 明博さんだが、振り返ってみると韓国の歴史上でもトップクラスの大統領であったと思うのだが、どうだろうか? 朴槿恵が大統領の座につけば、お決まりの前任者逮捕は今回は起こらないのではないだろうか? ただ、韓国は大統領の任期が 5 年 1 季のみであり、政権末期は政権が必ずレイムダック化してしまう。この制度を変えないことには、韓国の民主主義は成熟しようがない。 大統領選を見ていると、衆愚的なパフォーマンス合戦が目に付く。さらに、候補者やメディアの国際常識の欠落した韓国でしか通用しない常識がやたらと目に付くのだが、まあ、そういう事は敢えてこの記事では書かない事にする。民主主義が衆愚的になるのは、どこの国でも仕方ないものだ。 東アジアの発展のためにも、是非とも朴槿恵候補に頑張ってもらいたい。

ワシントン州でついに大麻解禁!注意点など

仮にあなたが大麻草を吸うためにシアトル旅行を画策している場合、下記の理由で、早くとも2013年12月までシアトルを訪れる事はお勧めできない。残念ながら、現時点では旅行者が気軽に大麻草を手に入れられる環境にはない。 ご存知の様に、ワシントン州では議案 502 が州民投票により可決されたため州法の下、 2012 年 12 月 6 日より 21 歳以上の成人が 1 オンス(約 28 ミリグラム)以内の大麻草を保有しても違法ではなくなった。スペースクッキーや 72 オンス以内のマリファナ使用液体類、例えば大麻オイルなどについても保有が認められる。議案は 1 年の期間を経て、マリファナの流通や栽培、販売に関する免許制度を構築する、としている。 シアトル市内においては語弊があるかも知れないが、既にマリファナの所持や使用に関しては半ば認められていた。 2003 年以降、 40 gまでのマリファナを個人の使用目的で所持する事に関して、法執行をしないという、灰色のシアトル市「議決 75 」と呼ばれる条例があったのだが、今回のワシントン州「議決 502 」により、少なくともシアトル市条例とワシントン州法の間にあった法のグレーゾーンが消し去られた形となる。 現時点において医療目的以外のマリファナの売買は違法である。ただし使用や保有に関しては州法下では問題がない。シアトル警察は大麻草に関しては、連邦法を無視して州法を遵守する事に決めた。ただシアトル警察は、連邦政府による法執行についてはシアトル警察の管轄外であり、これを予測もしくは制御する立場にはない、という見解を発表している。極端な話、ワシントン州内でマリファナの使用をすると、連邦政府の管轄であるFBIに検挙される可能性があり得る。連邦政府(国)がどう動くのかはこれから見極める必要があろう。 マリファナの保有は認められるものの、公共の場でマリファナを他人に見せることは出来ない。ワシントン州ではマリファナを公共の場で使用することも、公共の場所で飲酒ができないのと同じ理由で禁止されている。逮捕はされないが違反者には切符が切られて罰金を課せられる事になる。禁煙区域において(玄関から数フィート以内など)、マリファナを喫煙する事はもちろん違反となり、罰金の対象となる。 ワシントン州は、2013年の12月1日を目処...

リフレ政策で日本経済崩壊(7):社会は国民がつくるもの、クレームは何も産まない。

日銀など政策決定者の本当の政策目的は、長期金利が高騰しないようにすることであるのだと思われる。長期金利の高騰は、金融機関における巨額の損失発生だけではなく、日本国中の資産価値を下落させるという破滅的な影響をもたらすからである。そのために日銀による長期国債の購入が必要なのだ。しかし、その政策が長期金利を低下させるにあたり、副作用として物価は低水準に留まっている(いわゆるデフレ)。この方法以外に、財政赤字の多い日本が生き残る道は考えられない。白川総裁はそれを完全に理解しているのだが、市場の暴走を恐れて手の内をばらす事はできない。よって、ああいう奥歯に物が挟まっているような態度を取っているのだろう。白川総裁が日銀の総裁であり続け、きちんと独立性を保たれた上で意思決定をしてくれるのであれば、「最悪の事態」だけは回避できそうであった。  しかし、ここに来て政権交代である。クレーマーになる事は容易い。特に民主党を批判する事はアホにでもできる。自民党は漁夫の利であっさりと政権復帰を果たす事になりそうだ。ただ安倍首相の遊説を掻い摘んでチェックしていると、上記の日銀政策を無視して物価上昇を政策目標として掲げているのだ。それは非常に危うい。 日本の財政については回復不可能であると考えるに至っており、遅かれ早かれ長期金利は上昇し始め、円は暴落する。どうせ日本経済はハードランディングに陥るので、どうでも良いと言えばそこまでなのだが、それでも安倍首相の金融政策については危惧している。安倍氏はネット右翼化したのか、過激な政策を提言している。大方の識者は、これを口先だけの実現不可能な政策と捉えているようだが、マーケット的には様々な思惑が生まれやすい「面白い」環境になっており、評価は立場によって変わってくると思う。  12月16日の選挙の後、間違いなく自民党に政権が移譲され、安倍氏が次期首相に返り咲く事だろう。安倍氏が言っている政策を仮に実行すると、日本財政は間違いなくハードランディングする。今言っている政策を実行しなければ、来年の参議院で自民党はボロ負けし、再び国会が捩れる。またもや一年以内に首相交代であろう。 私がこのブログ上に書いている事など、ほとんどのエコノミストにとっては常識の範疇である。ただ、どのような結論が日本マーケットに待ち伏せしているのか、非常に興味...

リフレ政策で日本経済崩壊(6):国のバランスシートを都合よく曲解する人達

この匿名のブログにも、読者からのコメントが時に寄せられる。態々国債崩壊シリーズを読んでくださった読者から、痛烈な意見が来た。面白おかしく要約すると「この毛唐野郎め、日本国債は借金ではなく、日本の資産だろ。日本国債ほど安全なものはない。日本国債崩壊を煽動しやがって!ボケが!」といった内容だ。まあ「崩壊」という派手な言葉を使っているが、著者の主張はこの国債崩壊シリーズを読んで頂ければ理解してもらえると考える。ただ、所謂「国家バランスシート」論が物凄く気になる。以前取り上げた、維新の石原党首の発言などにも、バランスシートを誤解した考え方があった。少しばかり説明する。 インチキをしていない限り、財務諸表が企業の経営状態をおおよそ反映している事は事実だ。バランスシートを見ることで企業の健全さをチェックできる。しかしバランスシートを作る上での、技術上の問題が多々知られている。従って、バランスシートを鵜呑みにすることは危険である。さらに、バランスシートはある時点の企業の状態を反映したものであり、時間が経てば色々な価値が刻々と変化する。価値が変化すると特別損益や利益が発生するわけだが、財務諸表はクオーターごとにしか発表されない。 もし財務諸表が絶対的であると仮定すれば、PBR(株価簿価倍率)の低い会社の株を買えば良い。あるいは、PBRが1を切る会社の株を買えば「絶対に儲かる」はずである。しかし現実には損をする場合が多い。貸借対照表の資本の数値は、必ずしも企業の経済的実態を真っ当に評していないことがあるからだ。たとえば、貸借対照表に計上されている資産の中には継続企業を前提として金額が評価されているものも多く、破綻して清算する場合には換金価値が無く資産金額が目減りしてしまう場合があるからだ。 プロはバランスシートを元に、その裏側を読もうとするわけである。ウォレン・バッフェートは財務諸表を読むのが趣味と公言している。村上ファンドがバランスシートを見て阪神電鉄株を割安と判断した事など、例には困らない。 そういった企業のバランスシートの考え方を国の財政に応用することも出来る。しかし、そのバランスシートを曲解して、色々な「とんでも意見」を出している人達が後を断たない。こんな事に付き合っているほど暇ではないので、最近目にした得に酷い主張を3点ほど並べておきたい。 ...

リフレ政策で日本経済崩壊(5):スタグフレーションで日本中の資産価値は暴落

意外にも金融の基礎が抜けている人が多いので、少しだけ説明する。経済学者でさえも、結構金融の常識を理解していない事があり、びっくりする事がある。経済学を勉強しているのに株や金融に興味がないとか、ちょっとおかしいと思う。まあ、悠長な前置きをする必要はない。国債のバリエーションから説明しよう。 例えば額面価格が1万円の20年国債を買ったとする。現在の利率が1.68%なので、毎年168円貰える事になり、20年目には1万168円を受け取る(細かく言うと一年に二度、84円ずつ受け取る)。割引率に長期金利と同じ1.68%を使うと、現在の評価額は1万円丁度である。ただ、期待利率はデフレを考慮すると年間-0.5%が次の20年間続くと推定した場合、この国債の評価価値は14591円であり、買った瞬間に4591円の鞘取りが出来るわけである。多くの銀行は、今後ともデフレが続くと見ており、計算上、長期国債を買うことが得だと考えている訳である。  しかし安倍首相の号令の下、人為的にインフレ率が1%引き上がったとしよう。すると、国債の評価価値は8356円となり、購入者は1635円(16.4%)の含み損をする。2%インフレ率が引きあがった場合、フェアヴァリューは7044円となり、3000円ほど(3割近く)の含み損を抱える事になる。  一般の国債は毎年支払われる利子が変わらないため、利率が上がると計算上の評価額が下がるわけだ。逆に、インフレ連動債のように、インフレに従って支払額が変わるような国債の場合は、割引率が上がろうとも、評価額は変わらない。 長期金利の上昇で被害を受けるのは、国債だけに限定されない。長期金利に基づく長期ローンの数字が、あらゆる資産の評価価値を決めるための割引率として重要な指標となる。   仮にあなたが月に5万円で貸せるマンションの一室を持っていたとしよう。年に60万円が入ってくる計算にとなる。税金、維持費、空き室が出る事などは一切無視する。銀行の長期ローンがおよそ3.5%なので、これを割引率として使う。すると、この部屋のフェアヴァリューは、60万円÷0.035=1714万円である。この部屋がこの額よりも高かったり、低かったりすれば、鞘取り機会が生まれるわけだ。安倍さんの鶴の一声で、急に長期国債の利子が2%騰がったとする。すると、銀行のローンも5.5%くらいに...