11/21/2011

ソブリンリスクの本質的な問題

ソブリンリスクの問題が未だに連日経済ニュースを賑わせている。やれギリシアがEU圏を離れる可能性があるだの、やれスペインやイタリアの10年国債利回りが7%を越えただの、やれアメリカ議会のスーパーコミッティーが借金天井の合意に失敗しただの、うんざりである。APECでオバマは温家寳に「このまま米国が政治問題に感けていると、間違いなく世界恐慌が訪れる」などと諌められていた。「お前が言うな」とまずは言いたくなるものの、「確かにその通りだ、良く言った」という感情も抱く。しかし、よくよく考えると、米中が目立っているだけで、世界は赤信号を皆で渡っている訳であり、全員が鏡の前に立ち、自分の事もきちんと顧みる必要がある問題なのだ。

私は政治的なリスクとしてのソブリンリスク問題を楽観している。何故なら解決方法を全員が知っているからだ。支出を抑え、収入を増やす。これしか無い。ただ政治は水商売なので、選挙対策として大衆相手に目立つ必要があり、無理矢理ごねる連中が後を立たない訳だ。馬鹿な事や理に適わない事を言おうとも、マスメディアが取り上げてくれさえすれば、政治家は目的を果たせる。何を言ったかではなく、何度テレビに出たか、何回新聞に名前が載るか、という事が勝負の分かれ目なのだ。ただ、政治家は落し所を理解しているので(何故なら破綻は誰のためにもならない)、最終的にはこの問題は「政治的」に解決される。

私は、しかしながら、システム的なソブリンリスクの本質的な問題は解決できないと見ている。そして、本質的なソブリンリスクの問題を人々がしっかりと認識しない事には、マーケットのボラティリティーは年数を重ねるごとに益々大きくなっていき、人々は不必要な不確定要素を抱えることになる。事の本質は以下に列挙する。

1.政治家や官僚は「将来」に起こる事象には責任を持たなくて良いため、リスクは先送りにし、利益は早く刈ろうとする。
2.そのため、景気が良い時は税収を将来のために使うというよりも、現役世代で分配しようとする。
3.いかなる分配(減税・助成・政府支出・公的雇用など)も景気を益々浮揚させる効果があり、景気はさらにヒートアップし、好景気が過熱してしまい、バブルになる。
4.金は権力(ちから)である。金を一度もらえば、誰であれ(個人であろうと)力をつける。力がついた人たちから金を奪うことは容易ではない。一度始まったプロジェクトは終了させる事は困難である。
5.経済が悪くなると、税収が減る。だが3-4の理由で支出カットは容易ではない。
6.税収が悪くなり、仮に支出カットに成功すれば、景気は輪をかけて悪くなる。従って、さらに税収が減ってしまい、景気悪化スパイラルに陥る。
7.世界は技術の発達と規制緩和により、グローバルな相関性が上がっている。一国が崩れると、それが直ぐに世界中に波及する。
8.つまり、グローバリゼーション下では皆が運命共同体、そして国家のあり方その物が、バブル景気と不景気スパイラルを極端に巻き起こす。そして、相関度が強い現在の世の中では、世界中で同時に極端に激しくバブル景気或いはその後の不景気スパイラルが起こってしまう可能性が高い。

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