11/21/2011

オウム事件と死刑論議は完全に異なる違う問題

過去の書き込みを見ていただければ理解してもらえると思うが、私は死刑制度には賛成の立場である。個人の判断で法を犯した場合、罰せられるのは当然であると考える。社会的な警告という意味でも、死刑制度は必要であると考える。

オウム裁判が完全に終結したとういうニュースが流れた。起訴された全員の判決が確定したということだ。オウム事件は多感であった高校生の私に衝撃を与えた。今まで信じていた世界の価値観が、オウム事件(とその前に起こった阪神大震災)によって、根本的に覆されてしまった。マインドコントロールという冗談のような事に引っかかる高学歴の人間がいる。第一、私自体が信じている「常識」はマインドコントロールされたものかどうか?この問いに答えが見つけられなかった。やがて私はマインドコントロールされた「高速道路」から降りてしまい、シアトルの地で悠々自適に暮らし始めた(そして、時折私はその頃に下した判断について大いに反省する)。余談が長くなった。

オウム事件で13人の死刑判決、そして5人の無期懲役が今までに出ているのだが、根本的な問題について語られることは極めて少ない。マスコミなどでは、オウム事件は「日本犯罪史において最悪の凶悪事件」或いは「法治国家の秩序を一顧だにしない反社会性の極めて高い犯罪」などと判で付いたような解説がされる。それこそがある意味で、国家や警察権力のマインドコントロール臭く、気持ちが悪い。

オウムの事件を考えるとき、ナチスの犯罪に関わったドイツ国民や、大東亜戦争の結果として裁かれたB級又はC級戦犯の事を考える。それらの人達は、勝者の意図で懲罰的に裁かれた人達であり、色々なケースがあったにせよ、基本的には個人が国や組織の罪を肩代わりしたと考えている。オウムの件も、それと似たような構造があった可能性がある。

村上春樹などが比喩的に(というよりは実はかなりダイレクトに)オウムの罪を小説の場で著しているが、日本国内でそういった事に対して議論が起こっている様子はない。どちらかと言えば、「オウム真理教はただのキチガイ集団であり、サリンガスを地下鉄で撒く様な人間は死刑にするべきだ。そうすれば治安が安定する。」などと言った単純な物語が大勢を占めている。おそらく、メディア側も批判されるのが怖く、オウム問題に対して詳しく査証することを避けている風潮がある。新聞は「裁判は終結したが核心の一部は不明」などと思わせ振りな表現に始終している。いったい何が不明なのか?麻原が喋らなかった事で核心の一部が不明なのか?それとも、何か他に言いたい事があるのか?

個人の罪と組織の罪。組織に属する個人の罪。組織に埋没する個人。個人の責任という範囲が物凄くあやふやな中で私たちは生きている。死刑制度とオウム事件を同じ議題として扱っている時点で、社会は事の本質から目を逸らそう(或いは逸らさせよう)としているのだろう。

「前代未聞のテロ事件の首謀者は死刑囚の中でも特別との見方は法務省内でも強く、省幹部は死刑制度の是非をめぐる本格的な議論は、松本死刑囚の刑執行後になるとの見方を示した。」などという意見こそがマインドコントロールそのものだと思う。

ソブリンリスクの本質的な問題

ソブリンリスクの問題が未だに連日経済ニュースを賑わせている。やれギリシアがEU圏を離れる可能性があるだの、やれスペインやイタリアの10年国債利回りが7%を越えただの、やれアメリカ議会のスーパーコミッティーが借金天井の合意に失敗しただの、うんざりである。APECでオバマは温家寳に「このまま米国が政治問題に感けていると、間違いなく世界恐慌が訪れる」などと諌められていた。「お前が言うな」とまずは言いたくなるものの、「確かにその通りだ、良く言った」という感情も抱く。しかし、よくよく考えると、米中が目立っているだけで、世界は赤信号を皆で渡っている訳であり、全員が鏡の前に立ち、自分の事もきちんと顧みる必要がある問題なのだ。

私は政治的なリスクとしてのソブリンリスク問題を楽観している。何故なら解決方法を全員が知っているからだ。支出を抑え、収入を増やす。これしか無い。ただ政治は水商売なので、選挙対策として大衆相手に目立つ必要があり、無理矢理ごねる連中が後を立たない訳だ。馬鹿な事や理に適わない事を言おうとも、マスメディアが取り上げてくれさえすれば、政治家は目的を果たせる。何を言ったかではなく、何度テレビに出たか、何回新聞に名前が載るか、という事が勝負の分かれ目なのだ。ただ、政治家は落し所を理解しているので(何故なら破綻は誰のためにもならない)、最終的にはこの問題は「政治的」に解決される。

私は、しかしながら、システム的なソブリンリスクの本質的な問題は解決できないと見ている。そして、本質的なソブリンリスクの問題を人々がしっかりと認識しない事には、マーケットのボラティリティーは年数を重ねるごとに益々大きくなっていき、人々は不必要な不確定要素を抱えることになる。事の本質は以下に列挙する。

1.政治家や官僚は「将来」に起こる事象には責任を持たなくて良いため、リスクは先送りにし、利益は早く刈ろうとする。
2.そのため、景気が良い時は税収を将来のために使うというよりも、現役世代で分配しようとする。
3.いかなる分配(減税・助成・政府支出・公的雇用など)も景気を益々浮揚させる効果があり、景気はさらにヒートアップし、好景気が過熱してしまい、バブルになる。
4.金は権力(ちから)である。金を一度もらえば、誰であれ(個人であろうと)力をつける。力がついた人たちから金を奪うことは容易ではない。一度始まったプロジェクトは終了させる事は困難である。
5.経済が悪くなると、税収が減る。だが3-4の理由で支出カットは容易ではない。
6.税収が悪くなり、仮に支出カットに成功すれば、景気は輪をかけて悪くなる。従って、さらに税収が減ってしまい、景気悪化スパイラルに陥る。
7.世界は技術の発達と規制緩和により、グローバルな相関性が上がっている。一国が崩れると、それが直ぐに世界中に波及する。
8.つまり、グローバリゼーション下では皆が運命共同体、そして国家のあり方その物が、バブル景気と不景気スパイラルを極端に巻き起こす。そして、相関度が強い現在の世の中では、世界中で同時に極端に激しくバブル景気或いはその後の不景気スパイラルが起こってしまう可能性が高い。

11/18/2011

ニュージーランド沖でM6.1の地震

18日、ニュージーランド北島の北島先端でマグニチュード5.3,5.8,6.1と地震が立て続けに発生した。数日前に投稿したゴンドウクジラの話と関係があるのか無いのかは不明である。

津波以降の世界では、6程度の地震はまるでミッキーマウスの世界のように感じるかもしれないが、2月にNZのクライストチャーチで発生し多くの死者を出した地震も、マグニチュードは6.1程度であった。その程度の地震でも、場所によっては大変な被害をもたらす可能性があるというのが、地震の恐ろしさではあるのだが。

科学者気取りの人達に鼻で笑われようが、ゴンドウクジラ座礁のニュースには今後も敏感になっておいて損はない。

11/17/2011

アメリカの息子や娘の家に避難するタイ人の富裕層

最近、知り合いのタイ人にスーパーマーケットなどでばったり会うと、両親や親戚などを連れているのを良く見る。バンコクでは卵ひとつ買うのにも苦労するとの事。アメリカの息子や娘の家で寛いでると言う事である。どんな状況であれ、お金とコネクションがある人達は人生で困らないと言う事か。

11/15/2011

ゴンドウクジラ、NZで集団座礁

ニュージーランドでパイロットウェール、つまりゴンドウクジラ、が61匹も陸に乗り上げて死んでいたというニュースが報じられた。鯨類にはマイグレーション(季節移動)をする物も多く、メロン体などで反響定位の際に音波を集中すると信じられている。そういった器官が外環境からなんらかの攪乱を受け、このような自殺行為に繋がるのではないかと考える人も多い。

ニュージーランドと茨城で今年の3月頃にゴンドウクジラやハナゴンドウが集団座礁したニュースの直後に、社会的に被害の大きな地震がそれぞれの地で立て続けに起こったのは記憶に新しい。ニュージーランドやオーストラリアにおける鯨類の座礁は珍しいことではないが、地震などで甚大な被害が来ないことを願う。

日本、非公式サッカー世界王者剥奪

2010年10月8日にアルゼンチンを破って以降保持していた非公式サッカー世界王者の座を北朝鮮に明け渡してしまった。白鵬にも土が着き、イチローも200本打てなくなる。どんな記録でも途切れるものだが、良く長い間頑張ったものだ。

11/13/2011

ハワイでTPPを話し合う?

APECの会合がハワイで行われている。オバマ大統領の地元シカゴではなく、11月に出生地のハワイで会っているという事をジョークにされる始末である。

フットボールの合間にナショナルニュースをチェックしていたが、「TPP」という単語を耳にすることは無かった。経済番組のCNBCで非関税障壁撤廃に向けて動き出しているという話題に触れられたが、「TPP」の名前は出ていない。TPPが「清武御謀反」と連日でトップ記事をを二分している日本の新聞各社との妙な温度差を感じざるに得ない。

そもそも、TPPは国論を二分するような重大事項なのか?GATTから発展させたWTOの枠組みや、ASEAN+中国+韓国+台湾+日本などの枠組みで出来ない事があるのか?TPPは存在意義そのものが意味不明の協定である。当初は、TPPはアジアの小国が大国と対峙するために出来上がったと聞いている。しかしアジアのみでの協定が出来上がってしまうと、アメリカが締め出される恐れがあり、焦ってアメリカが参加したに過ぎない。日本が正体不明のTPP参加を重要視する姿勢は、異様の一言に過ぎる。

アメリカでは現在、共和党の大統領候補を決めるべく「劇場型(笑)」討論会が激しく行われている。来年の選挙で再選はするだろうが、中間選挙前にオバマがレイムダック化しつつある。オバマは正体不明のTPPをどのように政局化させられるかに注目が集まる。

11/09/2011

大相撲でインシュリンを使うのがドーピング??(笑)

隆の山がインスリンを摂取していた事が新聞に大きく報じられている。色々な問題が内包されているのは承知であるが、明らかにおかしな煽動的な報道が各紙を覆っている。それは、

「奥村副大臣は会見で、五輪などでドーピング検査を実施する世界反ドーピング機関(WADA)の禁止薬物であるインスリンを相撲協会が禁止していないことについて言及。「私もびっくりしたし、世界から見ても批判があると思う。しっかり指導していきたい」と角界の常識が世間の常識と懸け離れていることに疑問を投げかけた。」

というものだ。まるで、インシュリンがスポーツ選手にはあるまじきドーピング薬物であるような書き方である。何故、五輪競技でもない相撲という興行に、五輪の禁止薬物を採用する必要があるのか?全く目的が異なる世界反ドーピング機関の基準が金科玉条のごとく扱われるのは何故か?例えば北米のバスケットボールなどでは糖尿病患者がインシュリンを注射する事は認められている。何故相撲では駄目なのか?そもそも体重を増やさなければ不利を被る相撲という競技において、糖尿病というリスクは避けて通れない。インシュリンを禁止すれば相撲という競技が成り立たなくなる可能性すらある。

上記の奥村副大臣の記事は、1)インスリンが世界広くで禁止薬物として認められているドーピングであると煽動し、相撲協会をいじめようとしている、或いは2)奥村副大臣が事情を全く解っていないただの馬鹿、かのどちらかである。

何れにせよ、マスメディアと政治家の質にはいつも苛立たされる。

TPPは日米の大企業のためにある

TPPが第二の開国だ、なんだの言っている人が多数いる。

TPPは環太平洋戦略的経済連携協定のことで、農業品や工業品などの関税と非関税障壁を撤廃することを目指す多国間協定である。農業分野や郵貯問題の件などで懸念を表明する人達も大勢いる。相手にするだけ無駄なのだが、グローバリゼーションそのものを悪と看做す連中や、米国陰謀論を唱える人達は基本的にTPPに反対している。

TPPにおける誤解であるが、TPPが米国の押し付けであると考えている人達が日本国内に少なからずいる。米国の主要ニュースではTPPの「T」の字も目にしない。韓国と米国のFTAはニュースで多く報道されていたが、TPPはメディアも全く取り上げない。米国の総体としては、TPPには殆ど関心がないと言っても過言ではない。

米国はTPPに全く関心はないのか?そんな事はない。TPPにより恩恵を受ける企業の多くや、非関税輸入障壁によって輸出の機会を奪われている分野は、ロビイストを駆使して、日本のTPP参加を促している(ロビイストこそがDCの良心だ!!)。その人達は、米国内ではマイノリティーである。だが、同時に米国ではTPPやFTAに反対する人達が物凄く多くいる。こういった米国人たちも相手にするに及ばないのだが、グローバリゼーションの推進は中産階級の没落に繋がるなどと叫んでいるのを良く耳にする。

では本当にTPPに興味があるのは誰か?第一が日本政府であろう。韓国が米国とFTAを締結した。それに遅れを取ると、日本の面子が立たない、と考えている人達がいるのだ。本来ならば多国間協定であるTPPに加入するよりも、米国と日本の間で二国間FTAを結べばいいのであろう。ただ、日本国内やアメリカ国内の政治的な問題などにより、それは難しい。現在は興味なしとはいえ、将来の中国を巻き込むという構想上、多国間協定を推進するほうが政治的に有意義だと考えている人達も大勢いる。どちらかと言えば、保護貿易に傾倒しそうな菅直人が、急にTPPを第三の開国として推進するなどとほざきだしたのは、(財務省で騙されたのだが)このあたりの事情があるのだ。

第二に日本の大手企業がTPP参加にやたらと熱心である。当たり前だ。関税障壁を取り払えば、商売の効率が飛躍的に上昇するからだ。現在は無意味な法律で縛られているが、人的交流や外国資本を用いての投資環境が日本国内で良くなる事を望んでいる企業も多い。(そういえばスーパーマーケット屋の息子がTPP参加にえらい積極的ですね。)

勿論、TPPによって不利益を被る人達は大勢いる。特に、現在利権を保っている連中の中には、TPPを恐れている人達が大勢いよう。例えばゼネコン。TPPに加入すれば、外国のゼネコンが日本の公共事業に自由に参加できるようになる。農業分野での議論は退屈であるが言われ尽している。現状の「規模の経済」を駆使できない農業政策をもってすれば、外国の農製品にコスト上太刀打ちできない。そして郵政を守りたい連中たち。現在は郵便局のお金を自分達の貯金箱のごとく使っている連中がいるが、そういったインチキが今後出来なくなる恐れが出てくる。役所の人間もTPPを疎いと考えている。当たり前だ。異質な外国人や外国企業が大挙して日本で活動すれば、お役所仕事が一気に増えるからだ。

利権を持っている連中は、「米国陰謀論」や「保守主義」に訴えるように、TPP参加に反対しようとするだろう。テレビで「米国はTPP参加で日本を隷属させるつもりだ」などと陰謀論を騙るコメンテーターや国会議員をみれば、思い込みが激しいか、背後に何らかの利権があるかだけだと考えていただきたい。TPP反対は共産主義者や文系経済音痴の人達がなびき易いトピックでもある。

霞ヶ関はTPP参加によって、長期的な日本衰退を色々な方法で避けようとしているようだ(移民推進政策、利権の縮小、競争の促進、農政の改革など)。しかし、そう言った最終目標を政治的な理由で声高に言えないので、歯痒くつまらない議論が続いていることは残念である。どこのアホが「米作りの兼業農家」や「田舎の土建屋」や「郵政利権集団」を心配してTPP反対に同調するのか?大企業に加味するのは悔しいが、私には日本がTPPに参加することに反対する理由が全く無い。

11/06/2011

関西を浮上させるために必要な事と市長選

意識的に書かないようにしていたのだが、大阪市長選が間近に迫っている。結論から書くと、私は橋下徹を支持する。関西は長い間、国家の意思として力を削がれてきたと信じているのだが、その兆候を食い止めようとすれば、橋下改革を断行し、あるべき方向に進んでいくしかないと考えている。

どういうことか?歴史を紐解くと、廃藩置県の際、大阪市と神戸市を含む摂津藩が解体され、大阪府と兵庫県に分けられた。さらに京都府がある。東京と違い、関西圏には大阪市、京都市、神戸市という比較的力が拮抗する地方自治体が凌ぎを削ることになった。大阪市は大阪府に、京都市は京都府に、そして神戸市は兵庫県に属している。しかし、関西という社会的な枠組みはあるものの、政治的な枠組みが無いため、首都東京と大阪府、京都府、そして兵庫県が樹状に縦に繋がっていた。

地方自治体の長達は、近視眼的な視線しか持たず、大阪、神戸、そして京都という枠組みで喧嘩をする。全体的に関西経済圏を発展するというよりは、隣の街になめられないような自治が進められて来た。隣の町が何をすれば、わが町も何をする。リターンを考えない無駄遣いが罷り通ることになる(日本全国そうなのだが)。

さらに、大阪府の中には大阪市が内包されている。そして、二重行政が罷り通っているのだ。市立大学と府立大学があるなど明らかな物から、二重三重の公務員を雇ったり、公共費の利権が歪に入り組んでいたりなど、目に見えないことも多くある。しかし、それらは生活に密着しており、結局は税金を二重三重に取られているということになる。

私は「政府」や「公共」という物に対して懐疑的であり、かなりバイアスが懸かっているのだが、地方政府の公的な役割は民間のグローバルな長期競争力を強化することに尽きると思っている。それにより、外から富を呼び込むことこそが地方政府の存在意義である。しかし現在の大阪府や大阪市は、世界第九位の人口を誇る都市圏の中心の地方政府としての立場に甘んじ、その民や会社に虱のようにたかっている存在に過ぎない。自腹を肥やし、宿主を殺そうとしている寄生虫には、去らなければならない。そして本来の真っ当な地方政府の役割を考え直す必要がある。

関西地域を相対的に浮上させて、世界中からのお金を集めるつもりであれば、選択と集中をするしかない。開発するべきところを集中的に開発する。そして切るべきところは無視する。民間が出来ることは邪魔しない。競争力劣化に繋がる政治屋、利権者、ヤクザは排斥する。今までのように、「広く公平に弱者のため(笑)」の政治をしていたのでは、関西はすべからく負ける。弱者や税金にたかるハエを追い払わなければならないのだ。

そういう観点で考えると、関西圏が浮上するためには、中央政権に反骨し、関西という経済ユニットを東京というモンスターの影から切り離す必要があろう。中央政権は首都である東京を発展させたいので、関西の意思が国の政治の場でサポートされることは、まずあり得ない。国は関西を絶対に助けてくれない。活力があり、豊かな街にするためには、関西の事実上の独立以外に道がない。関西地域が事実上、政治主体としての日本中央政権から独立するためには、関西にまともな政治的な枠組みを作らなければならない。現状の縦割りの行政を簡潔にし、関西の意思が政治に反映され、中央政府と対等に渡り合えるようにしなければならない。大阪市と大阪府がいがみ合い、競争力を削いでいる現状の構図こそ、まさに中央政府や他の地域の人達が欲している事柄なのだ。関西地域の住民は、自分達の生活は自分で護る。そしてグローバル経済の流れの中で他所に勝つ。そういった目標に邁進するために自分達の首長を選ぶ必要がある。

橋下徹が投じる一石は、この流れに向けた布石であると考える。橋下氏が関西以外の地域で評判が悪いという話もある。橋本を選んで得をするのは関西人であり、その成功により損をする可能性があるのは他地域の人なので、そういう感想を持つ事は当たり前といえば当たり前だ。橋下のやり方が急激すぎるという批判もある。そうかも知れないが、利権に群がっている連中を排斥するためには、無茶をしなければ仕方ない。橋本が府と市を統合したところで、なんら問題は解決しないであろうという批判もある。しかし、先ずは府と市(大阪市と堺市)を統合して、スリム化していかないことには、最終的な目標には到達しない。現状維持は論外だ。平松邦夫氏が人間として好きだ、という意見も良く聞く。私も子供の頃、夕方6時半からの毎日放送で平松さんの番組を見ていたし、好感度はある。だが、政治家としての頭脳が足りない。

グローバリゼーションは全球化と訳される。グローバリゼーションの世の中では、第二都市の存在意義などゴミに等しい。よほど広い国土を持つアメリカや(中国も?)、政治と経済の中心がはっきりと分かれている中国やドイツなどを除き、第二都市が発達している国を探すのは難しい。それが解っているから、日本政府は関西地域を無視しているのだ。台北や香港・深圳、シンガポール、ジュネーブなどがグローバル化した世界の中で上手く対応しているのは、文化や言語などでしっかりと国境を作っているからに他ならない。関西が生き残るためには、教育や文化や言葉をはじめ、経済ユニットを心理的にも物理的にも東京圏から別ける必要がある。それはあるいは関西独立といっても過言ではないだろう。出来るだけ東京圏と大阪圏の人的・物理的移動を妨げなければならないのだ。しかしそれをしない限り、東京の一極集中が解決するわけはなく、残念ながら関西が今後浮上することは決してあり得ない。国際イベントをするなど、小手先で都市圏の競争力が回復するほど、グローバリゼーション化の競争は甘くない。

中央政権や民間企業は「便利」になるという蜜で日本の一体化、つまりは東京の中央集権を強力に支えようとする。しかし、その手に乗れば関西圏は東京経済に寄生するだけのお荷物となる。関西自身が自己的に完結した経済単位を築いて、日本という枠組みに飲み込まれないようにする必要がある訳である。

勿論、これは関西人としての視点であり、これを読む関西以外の人達が何を思うかは知った事ではない。それくらいのガッツを関西人には期待したいが、優秀な関西人から順番にすでに東京に移住しているから、ま、無理だとは思うが。

11/01/2011

中国バブル崩壊の予兆?

前々から言っている事だが、ギリシアの問題は一応の解決を見せた。政治が解決しようと思えばいつでも解決しえた問題であったからだ。ユーロは理想論で営む社会実験であり、今後様々な事象を是正していかなければならない。ヨーロッパ中央銀行を作ったり、国境を越えた労働市場の自由化を促進したりといった事だ。ただそれらは各国の政治として微妙な問題であり、紆余曲折を経るものと思われる。しかし解決方法を皆が知っているので、マーケットが乱高下しようが、絶対に解決する問題であるのだ。

現在の世界には幾つかの大きな地雷がある。1)アメリカ債権問題、2)日本の債権問題、3)ユーロの構造問題、4)中国バブル、5)新興国バブル、そして6)資源バブルである。1~3をひとくくりにして発展国のソブリン危機、4~6をひとくくりにしてリスクテーキング・アルタナティブ・インベストメントとして扱っても良いかもしれない。グローバル経済において、経済は根のレベルでは総て繋がっているのである。

ギリシアの問題が踊り場を越えると、中国経済に黄信号が燈っているというニュースが次々に出てきた。温州商人のニュースを以前紹介したが、中国経済減速のニュースが統計の数字になって表われ始めている。ブルームバーグによれば、中国の住宅価格指数が9月に0.03%下落したのに続き、10月には0.23%落ちたというのだ。100都市のうち、北京や上海を含む58の都市で不動産が下落しているという。イケイケドンドンだった中国の住宅・建築市場に翳りが見え出したのだ。

最近、香港のディベロッパーの株価下落のニュースが喧しかったが、バークレーは香港の住宅価格がハードランディングのシナリオ下で45%は下がるだろうと予想し始めた。香港政府の統計によると、9ヶ月連続で香港では住宅売買数が下がっており、6月から9月にかけて既に3%住宅価格が下がっているという。香港の不動産市況を見れば、東京や大阪の不動産価格の安さに驚いたものだが、盛者必衰の理をあらわすのは世の常である。

温州の新幹線事故以降、9割の公共事業がストップしていると言うし、主要な港には物品の在庫が溜まり、コンテナ船が着岸できないという話しも聞く。港の倉庫に積まれた物品を引き取ってもらおうと客に電話をすると、電話は既に通じないらしい。

この傾向が続き、共産党政府が魔法を使わなければ、「バブル崩壊」がいよいよ現実の物となる。「ざまあ見ろ、中共!」とハナで笑いたいところだが、ここまでインテグレイトされたグローバル社会では「対岸の火事」というコンセプトは存在しない。蝶がハワイで羽ばたけば、オクラホマでハリケーンが起きるのである。では中国資産バブル崩壊で何が起きるのか?以下に起きそうなことを列挙した。上の項目ほど可能性が高く、下に行くほど可能性が低くなる。

• シンガポール・香港・台北・ソウル・シドニー・バンクーバーなど中国マネーで潤っていた発展都市の不動産価格の急落
• 資源価格の急落
• 世界株安
• キャリートレードをしていたアメリカドルへの回帰、相対的な米ドル高騰
• ベトナム・インド・インドネシアなどに投資が避難
• 東京や大阪の不動産価格の上昇
• 株安が一段楽した後、日本国債の長期割引率の高騰

さあ、あなたは自分の身を護る為に何をするだろうか?