6/23/2011

ドメスティック志向な成田空港

あっちに行ったり、こっちに行ったりして、時間が取れなくてブログ更新が滞っているのだが、先日成田空港で色々思うところがあったので書いておく。前からこの話題は書きたくて仕方なかったのだが。

成田空港がハブ空港になりえるかどうかと言った議論が起こっていたが、成田は間違いなくハブ空港である。唯一の欠点は、成田から国内の他の空港に向かうアクセスであるが、それは無駄な縦割り・公平政策を見直して、きっちりと対処するべきであろう。関西空港は国内線も国際線も兼ね備えているので、国際的なハブ空港に成り得るのかと言えば、結局それは未だに叶っていない。結局4000万人の人口を抱え、日本の過半数の企業の本社機能が集約する首都圏の空港という地の利があるため、成田空港は自動的にハブ空港であり、日本の競争力の低下とともに徐々にハブ機能が失われるだろうが、これからも暫くは成田が北アジアの玄関としての地位を揺るがされる事はないだろう。問題は、努力しなくても成田はハブ空港であるので、顧客サービスなどの点でなっていないという事にある。

私は米国に住んでいるため、北米の航空会社、特にデルタ航空を利用する。北米からの飛行機はまず成田に到着する。シアトルから成田に飛ぶボーイング777はその後成田で給油を済ませて上海浦東に向かう。ロサンゼルス-成田はその後バンコクに行く。デトロイト-成田は台北へ。ニューヨーク-成田はマニラへ、ポートランド-成田は北京へ、アトランタ-成田はシンガポールへ、ソルトレイクシティー-成田は香港へ、ミネアポリス-成田は釜山へ、それぞれ給油後に向かうのだ。シアトル-成田路線などを利用すると、盆や正月で無い限り、成田で降りる乗客よりも乗り継ぐ乗客の方がはるかに多い。デルタ航空を利用すれば、国際線のまま成田から大阪や名古屋への乗り継ぎも出来る。成田は完全なハブ空港なのだ。

私は最近、北米から成田経由でアジア各国に行くことが多いのだが、びっくりするのは、成田空港の国際感覚の無さである。国際空港を名乗っている癖に、成田空港は日本人のみを見て商売しているのだ。直ぐに目に付くことと言えば、英語や中国語の表記の足りなさである。マクドナルドのメニューは英語すら書いていない。良く利用するラーメン・カレー屋は、ラーメンを英語でRamenと書いてあり、日本語が解らない外国人相手に商売する気があるのかどうかも疑わしい。

先日、成田空港を利用すると、無料WiFiデスクが出来ていたのだが、驚いたことに、日本語でのみ説明しており、英語や中国語表記は一切無かった。私がフリーWiFiを利用していると、外国人が私にWiFiの利用の仕方を聞いてきて教えなければいけなかった。ホームページで登録しなければいけないのだが、日本語のみの表記である。1時間ほどいたのだが、私は6人の人から助けを求められた。きちんと英語のホームページを用意していさえすれば、このような事態にはならないはずである。

クリスマスなど、混雑している時に成田空港で乗り換えると、乗り換え客用のセキュリティーチェックの場所が物凄く混む。しかし、地上係員は英語を喋れなかったり、喋っても聞き取れないほどの酷いアクセントがあったりして、日本語が解らない人にはその人達が何を伝えたいのか理解できない。3つのラインがあったのだが、係りの人は、名古屋行きのお客さんだけ一番右の「速い」ラインに並ぶように言った。しかし日本語だけで言ったために、日本語の解らない外国人利用客が便利で速い一番右のラインに殺到して、素早く身体・荷物チェックを済ませる。日本語が解る外国人や私のような日本人で真面目に係りの人の話を聞いた人間は、地上係員の不手際のせいで1時間以上もかかるラインで待たされる事になった。ヘラヘラしていた地上係員に文句を言ったのだが、なしのつぶてだ。何で怒っているのだろうか、くらいにしか思っていないのだろう。

日本は世界で一番効率の良い国だと自負していたのだが、それは私の過信であった可能性がある。日本の効率性は、物解りの良い優秀な日本人の「客」に支えられているものに過ぎないのではないのかと考えるようになった。ルールを知らない部外者がやって来れば、全く上手く対処できない。どころか、「これだから外国人は…」、などと言った文句まで言う。このような国際感覚の無さが、国際市場での日本の脆弱性に繋がっているのでは無いのだろうかとさえ勘繰りたくなる。「知らない」のが当たり前。「解らない」のが当たり前であるのだが、成田空港は「利用したいのであれば客が全てを理解しておけ」、と言った殿様対応をしているのだ。

日本の空港行政論議には、「日本から海外に行く利用者」や、「海外から日本へ来てお金を落とす訪問者」だけではなく、航空会社の都合で成田空港を通らざるを得ない乗り継ぎ客の視点も重視して欲しいと思う。現在はただの通過客であっても、成田空港での経験などをもとに、次回はストップオーバーして東京を観光したい、などと思うかもしれない。そういう視点が悉く欠けているように思う。

成田空港は、まず手始めに全てのサインや表記に、最低でも英語と中国語(繁体字が必要で簡体字はいらない。日本では歴史的に繁体字を使用していたのだから、中国大陸の読み辛い簡体字を表示する必要は無い。韓国語も、殆どの人が英語を理解するのでどうでもいい)を表記するべきだ。そして、中国語と日本語が同じ表記の物は見辛いので訳さないで欲しい。係員には、日本の玄関口で世界中のお客さんに対応しているのだと、自負して欲しい。

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