
感謝祭に七面鳥を作った話をしたが、三日経った現在、いまだ半分も終わっていない。部屋中に七面鳥の脂の臭いが漂い、吐き気すらする。仕方なく七面鳥の焼汁と肉を使って、シチューとカレーの二品を拵え冷凍した。気分が悪くて仕方ないので、美食の話に移りたい。
一般的に多くの中国系の人に最も人気がある料理は、四川料理であろう。川菜と呼ばれており、八大菜系の一つである。説明するまでもなく、四川料理は「辛さ」を売りにしており、麻婆豆腐などが代表料理として挙げられよう。辛いだけと思われがちだが、上品さも兼ね備えている。酢などを駆使して、甘酸っぱさを出したりもするのだ。代表料理と言えば、宮保鶏丁(鶏とカシューナッツのぴり辛炒め?)、青椒肉絲(チンジャオロースー)、回鍋肉(ホイコーロー)などであろう。
広東料理と比べると、四川料理はかなり高級感があり、値段も張るというイメージがある。最近では、地域色を前面に出した中国料理のレストランは少なくなったと言うものの、看板に四川料理を掲げている店はやはり高級店が多いように思う。私は四川省には未だ足を運んだことがあらず、一度本場の味を食べてみたいと思っている。次の中国への旅では、何とか理由を見つけて成都か重慶(現在は四川省からは独立して直轄市である)に行ってみたい。
北京でかなりレベルの高い四川料理に巡り合った。それはやはり比較的高級店であった。建国門路と東三環にある北京中国大飯店(チャイナワールドホテル)には国貿商城という高級ショッピングモールが隣接する。ルイヴィトン、ジバンシー、カルティエ、ラルフローレン、プラダ、ヒューゴボス、フェンディ、ケンゾー等いかにもなブランドの店が目白押しだ。ちなみに、実際にブランド品を買っている客の殆どは外国人であった。外国マネーと失業率を低く抑えるために人為的に操作されえいる中国経済の話はまた何時の機会かにおいておいて、とりあえず、その二階にある四川料理のレストランに入る。
料理よりも値の張る龍井茶を注文し、やがて料理が運ばれてくる。熱い胡麻油が運ばれてきて、その中に服務員が牛肉や野菜を放り込む。サラダも、服務員がその場で棒棒鶏ドレッシングをカクテルして提供する。非常に面白い。コールドディッシュも歯ごたえを残したクラゲにピリ辛ソースがなんとも言えず繊細だった。何よりも驚いたのが宮保鶏丁。この料理は世界どこでも食べられるのだが、こんなに繊細な宮保鶏丁を食べたのは初めてだった。きっちりとした甘酢にでしゃばり過ぎない辛さを絡めた秀作だった。
食後は豆花。服務員が豆乳を持ってきて、焼け石を中に入れ豆乳を暖かくし、直ぐに取り出す。蓋をして数分経てば、豆乳が固まっている。そこに、ピーナッツ、蜂蜜、韮ソースなどの中からお好みのものをトッピングとして載せる。豆の味がはっきりと出ており、非常に美味しかった。
余談だが、横浜にある四川料理を売りとするどこぞの店もそうだが、日本では四川料理にケチャップがふんだんに使用されている。私がこのレストランを評価する理由の一つが、ケチャップや化学調味料に頼らずに繊細な味を保っているという事実であると言うことは、特筆に価しよう。
俏江南四川餐庁 (サウスビューティーレストラン)
建国門外大街一号 国貿商場2階 L220
中華人民共和国 北京市