日銀が総括検証などという大立ち回りを演じ、で、出てきた結果に市場が動揺しているように感じられる。というのも、普段であれば、日銀のアクションに対して、識者連中からすぐに批判の嵐が報じられるものである。が、今回の検証に関しては、識者のコメントが妙におとなしい。
理由は、「日銀の総括検証」が作文として優れていたからだと思う。当たり前のことを難しい言葉で表現し、識者が戸惑っているように思える。さらに、もしかすると、のような思わせぶりな政策も含んでいるので、勇み足の意見表明を避けているのだろう。
検証では以下の言質が出てきた。
1.オーバーシュート型のコミットメントをする
2.長期金利の買い付け量を変化させてイールドカーブ・コントロールをする
3.マイナス金利の深堀は現時点では行わない
4.ETF・REITなどの買い入れ額は維持
つまり、これは、
1.出口戦略は今のところない(出来ない)、つまり緩和は継続するが、量などは減らす可能性が極めて高い
2.長期金利の買い上げ量を減らして、10年債などの利率を上げる(価格を落とす)
3.金融機関に配慮しているが、マイナス金利は将来的には下げる可能性もある
4.ETF・REITなどの買い入れは意味がなかった
という意味である。
これを持って、日銀検証は無意味だとか、日銀は永久緩和を決定したのだとか、イールドカーブコントロールなどできっこないとか、意見する事は簡単だが、未来に対するインプリケーションを建設的に考えなくてはいけない。
イールドカーブをスティープ化させたいという願望は、利率を下げてインフレを起こすという、日銀の当初からの政策目標である。長期金利はインフレ期待を含んでいるのだから、インフレ期待が芽生えてくれば、長期金利がじわじわと上昇すると考える方が自然な因果関係であった。ただ、景気が悪いという認識のもと、量的緩和を行ったことにより、長期金利が当たり前のように下がってしまったわけだ。つまり、長期金利の上昇は緩和からの逆向に他ならないわけである。イールドカーブを日銀が本当に押し上げられるのか?それは国債の需要を減らすという事であり、日銀の購入分程度の影響は駆使できると思う。それを上回る需要があればどうにもならないが、長期国債をこれから買おうとする投機家はどんどん減ってくることが予想される。逆に、多少なりともプラスがつくのであればある程度は買おう、とする生命保険や銀行の需要はあり得るかも知れない。すると、短期国債から長期に乗り換える動きが出てくるわけで、短期的なアセットアロケーションが需給を荒らす可能性がある。
最悪のケースは、長期国債の値上がり(利子低下)の望みが薄くなったので、長期国債の需要が激減する可能性だ。そうすれば、金利は跳ね上がることになる。それを無くすために、日銀はさらに長期国債を市場から買い漁らなければならなくなる(普通のインフレターゲットの手順)。これは180度逆に、緩和の量を増やすという結果になってしまう。これが行き過ぎると、実質的な日銀の国債引き受けと受け取られ、流れはさらに加速する可能性がある(すでに日銀のやり口は引き受けなのだが)。
どちらに転がるかは結局マーケット次第であるが、日銀がイールドカーブをコントロールできると言っているのだから、「ほなやってみなはれ」と、市場は傍観しているのではないか?むしろ7月の末の日銀会合で政策検証をするというニュースがでると、長期金利の急騰が起こった。何をか況やである。日銀はこのような動きを警戒しているのだろう。
新たなアクションは副作用が大きすぎるような気がしてならない。という事は、検証したにも関わらず、結局は緩和量を徐々に引き下げるだけの、緩和撤退に終始するものと思われる。機関投資家の様子見が終わると、金利相場は荒れる可能性が高い。さすれば、もちろん外貨市場が大荒れするだろう。ただ、様子見は何らかのイベントが起こるまで、暫く続くだろう。台風前の静けさがしばらく続き、嵐がやってくるという感じか?
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