話を解りやすくするために、高級フランス料理店の例を使う。あなたがデートで高級フランスレストランに行くことになったとする。あなたは当然きちんとした身なりでレストランの門をくぐり、座席に通され、ウェイターにジョークを言いながらワインを注文するだろう。やがてソムリエが持って来たワインを手に取り、目を細めてラベルをチェックし、「2000年のボルドーのカペルネは最高なんですよね。これ頼みますよ。」などと言うかもしれない。あなたのパートナーはきっとその一言に感銘を受けるだろうし、ソムリエは、あなたが知ったかぶりをしているのも了解した上で、顔からは上品な笑みを消さず、慣れた手つきでナイフをボトルの口に入れ、瞬時にコルクを抜いてしまう。そして、情緒ある音を立てながらあなたのグラスにワインを注いでくれるだろう。サリュート。最高のディナーのスタートだ。しかし、ここで仮定の話だが、隣の人達が乞食のようなみすぼらしい格好で座席に座っていればどう思うか?高級フランス料理店には大概ドレスコードが敷かれている。それは、店の中では客も従業員もが高級感を醸し出す役割を演じることにより、店全体の雰囲気を高め、それにお金を払いたい人達を店におびき出すためだ。もし、あなたが六畳一間のアパートに住んでいたとしても、高級フランス料理店に出向く時は、ヒューゴ・ボスのスーツに身を包み、サルバトーレ・フェラガモの革靴を履かなければならないわけだ。ネクタイだけはフランスのブランド。誕生日プレゼントのルイ・ヴィトンだ。これこそがエティケーットである。その場に身嗜みの整っていない人がいたとすれば、あなたは憤慨するだろう。高いお金を払っているのに、雰囲気が台無しだ、と。
話は大きく変わり、ワイキキのリゾートホテルに飛んでいく。私はワイキキ界隈のホテルに泊まるのが大嫌いなのだが、先日訳があって、ハイアット・リージェンシーに泊まらざるを得なくなった。一番嫌なのは、ホテルの朝食ビュッフェの時だ。朝6時。空が段々と明るくなってきた頃、私はジョギングを終えてシャワーを浴び、ホテルのレストランに行く。外の空気を満喫できる外の座席に通されて、従業員と挨拶をする訳だ。そして朝食を取りに行く。グアヴァ・ジュースをコップに注ぎ、パパイアとハニーデューを皿に盛る。更に、肉抜きでオムレツを作ってもらう。座席に戻り、ゆっくりとリゾート気分に浸りながら朝食を楽しむ。横の白人の家族は楽しく会話しながら、前の日本人の老夫婦は静かに、朝食を楽しんでいる。ゴルフシャツと短パンのいでたちのアジア系アメリカ人の若者は英字新聞に目を通している。波の音が聞こえ、鳥が囀る。気温は20度強で微風が気持ちいい。しかし、毎度ながら、雰囲気は突然にぶち壊されるのだ。
若い日本人の女の子の団体がレストランに通される。皆、例外なく着飾っている。タイトなデザイナー系のジーンズを履き、光る素材のついたシャツ。さらに、日本人のカップルがやってくる。男はヨーロッパのモード系で着飾っているし、女も朝からヒールで決めている。東京では違和感が無いお洒落も、リゾート地の朝食には余りにも相応しくない。
私は一気に萎えてしまう。私は金を出し時間を割いてリゾートの雰囲気を満喫しに来ているのだ。そう、ハイアットリージェンシーに泊まっている他の98パーセントの人達と同じように。その場にいる全員がリゾートの雰囲気作りに協力するべきであると思う。汚い格好で高級フランス料理店に入店すれば摘み出されるが、着飾ってリゾートの朝食ビュッフェを食べに行っても誰も咎めない。リゾート・カジュアルが出来ないようでは、リゾートに来るべきではない。私たちは、仮に日本で六畳一間のアパートに住んでいようと、リゾートを楽しむために飛行機に乗り安くない金を払っているのだから、雰囲気作りには協力するべきだ。それは、エティケーットの問題だ。デザイナー系のジーンズはリゾート地ではご法度だ。最高の海を目の前にした朝食なんだから、清潔にリラックスしたものを着るだけでいいのだ。半パンと開襟シャツを着用する、それだけでリゾート地の雰囲気を護れるというのに。
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9/28/2006
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