私は中国料理が好きである。中国料理といっても、四川料理(川菜)、山東料理(魯菜)、広東料理を代表とする粤菜など、八大菜系を中心に多様性に富んでいる。大陸以外でも、台湾や香港、シンガポールに行くと、それぞれ違うスタイルの中国料理に巡りあえるだろう。日本でも、ラーメンや餃子のような中華料理を食べることが出来る。そのようなややこしい話は別の機会においておいて、私は一般論として、中国料理を愛している。
さて、「世界で一番美味しい中国料理はどこで食べられるのか?」という討論は非常に興味深いところだ。先程も述べたように、大陸中国は広いし、華僑は世界中に拡がり中国料理を伝えている。私は、偏見は承知の上で、世界一美味しい中国料理は、ニューヨークで食べられると答えよう。この意見の裏には、大陸中国の中国料理が不味いという批判と、香港や台湾の料理が一番美味しいと思ってる香港人や台湾人の鼻をへし折ってやろうという意地悪な思いが交錯しているのだ。
単品だけではあるが、世界一美味しい中国料理を出す店。その名前は、「鹿鳴春」。英語で、「ジョーズ・上海」とも呼ばれている。ニューヨーク内に数店舗あるのだが、チャイナタウンの本店かフラッシングの店に行くことをお奨めする。基本的に、この店で美味しい物は「蟹粉小籠包(シェフォンシャオロンバオ)」である。他の料理については、及第点ではあるが特筆するようなものでもない。しかし、蟹粉小籠包には正直驚いた。蒸篭に入って運ばれてくる小籠包。そんなに薄くは無い皮だが、破かないように、恐る恐ると箸で摘み、蓮華の中に巧く収める。黒酢を少しつけ、生姜を載せる。熱々の小籠包を齧ると、中からスープがじわっと染み出る。そのスープは、豚肉から出る濃い味と蟹味噌の味が見事に織り交ぜられている。熱々の脂っぽい濃いスープは、強烈なパンチであなたを歓迎する。その味は怪しくもあなたを虜にし、深い思い出として、永遠と友人達に語り継がれることになる。小籠包は、前菜の位置づけなのだが、あなたはきっと服務員を呼びつけ、もう一籠、いや二籠注文せずにはいられない。
小籠包のレストランといえば、「鼎泰豊(ディンタイフォン)」であると仰る人も大勢いると思う。台北の新義路にある鼎泰豊の小籠包は、ニューヨークのものとは大きく異なっている。薄い皮の中には、熱々の非常に洗練された上品なスープが潜んでいる。私は、ニューヨーク同様の、強烈なパンチを期待していた。しかし、その上品さの前に、私は正直がっかりした。期待外れほど、人々に寂しい思いをさせるものは無い。鼎泰豊は確かに美味しい。小籠包だけではなく、他の料理もなかなかいける。しかし、台北であれば、そのくらいの味はどこにでもあるのだ。ニューヨークの味を知ってしまったが故に、台北で楽しめない。運命とは、かくも残酷なものである。
鼎泰豊の小籠包が恋人にしたクラスで一番可愛い女の子だとすれば、ニューヨークの小籠包は素性不明だがナイスボディーの艶やかな愛人といった所だろうか?あなたならどちらを選ぶだろうか?私なら、勿論、愛人を選ぶ。ニューヨークには、鹿鳴春以外にも美味い中国料理を出すレストランが沢山ある。質で言えば、中国料理の本場の香港にも引けを取らない。やはり、金がある所に、美味い物は自然と集まってくるのだ。
Joe's Shanghai (鹿鳴春)
9 Pell St Ste 1
New York, NY 10013-5134
0 件のコメント:
コメントを投稿