オバマがホワイトハウスを後にする。金曜日からはトランプが45代目のアメリカ大統領になる。私の周りには、いまだにトランプは大統領に相応しくないなどと、民主主義に敬意を払っていない人たちが大勢いる。その人たちの泣き言を聞くと面白くて仕方ないのだが、問題の本質はここではない。
私は、政治には何も期待していない。世の中が政治家の顔ぶれを変える事があろうとも、政治で社会が変わるという事は、20世紀の後半ごろからは無くなったと考えている。変な方向に行くこともなければ、社会が良くなることもない。良くも悪くも、社会は安定してしまったし、政治家がタッチできる問題という物は枝葉末節のみであり、物事の根幹に触る事は基本的にできない。小泉改革とか、アベノミクスとか、日本人も色々と見てきたではないか。
私はオバマが大好きだった。理由は二つある。一つ目の理由は、オバマの演説は旨いし、見た目がスマートだという事だ。人間、見た目が9割である。二つ目の理由は、良くも悪くも、口だけで何もしなかったという事だ。何もしなかったために、ロシアや中共やイスラム教原理主義者などが調子に乗り、国際問題はこじれた。しかし、国内問題などについては、いちびった事はやらなかった。だから、景気は良くなり、失業率も減った。唯一やったヘマと言えば、中途半端なオバマケアをごり押ししてしまったことくらいだと思う。口だけで、イメージが良くて、何もしない国家元首こそ、最高の指導者だと思うのだ。(天皇陛下とかローマ法王に近いものがある)
で、トランプさんである。私は、トランプさんの言っていることは正しいと思う。ポリティカルコレクトネスに染まった息苦しい社会をある程度は是正して欲しいと、心の底から願っている。私は、アメリカの古い産業や山村の経済復興というプロジェクトに色々と関わって来たのだが、アメリカの田舎の人達が、政治的に置いてけぼりを食らっているのは火を見るよりも明らかである。政策は明白に大企業を贔屓しており、ハイテク以外の中小企業で務めている人達や、自営業をしている人達は可哀そうだと思う。国内では時給を上げたり、保険制度を充実させたり、環境のペナルティーを科している。が、外国で労働者を安い賃金で搾取して製造したような輸入品には、フリートレードを合言葉に関税は課さない。フリーが成り立つのは、世界中がフェアである場合だけである。不満が出ない方がおかしいと思うのだ。(ただ、そのおかげでアメリカの物価はここまで安いのだ。人件費がかからない「商品」だけの話だが。)
アメリカでは過保護なまでに未成年は庇われる。高校生でさえも親に学校まで車で送り迎えをしてもらうのは良く知られているが、大学生でさえも純粋培養で育てられる。外の世界を見ていない子供たちは、ことごとく人を傷つけないリベラルなアイディアに閉じこもってしまう。もちろん、その程度の余裕があるしっかりした家庭の子供だけの話であり、そういった事が出来ない家の子は兵隊になるか、ギャングか麻薬中毒者に成り下がるのである。
リベラルな民主党が去り、共和党が帰ってくる。トランプさんはアメリカを再び偉大に出来るのか?結論は火を見るよりハッキリしている。社会は思っているよりも複雑化しており、大統領くんだりが声を荒げたところで、色々な壁にぶち当たるだろう。色々引っ掻き回して、失敗しました。経済が悪化して、失敗は認めずにさようなら。四年後は民主党の誰かが大統領になって終わり、というパターンである。
アメリカ人は、意外と自分たちの国の政治システムに自信を持っている。政治には何も期待していない、という日本人には良くありがちな私のような意見は少数派である。が、アメリカにも冷笑主義(シニシズム)が吹き溢れる日がすぐに来るのかも知れない。アメリカもそろそろ一皮むけて、大人になって欲しいと思う。
ただ、それでも私は、トランプさんに期待している。政治を引っ掻き回すというのは、お茶の間にとっては絶対に面白いショーである。そして、既存の勢力たちにどこまでケンカを売る事が出来るのか?最初の100日とは言わず、一年くらいは暖かく見守りたい。アメリカのテレビ番組は詰まらないが、トランプの一挙手一投足をニュースメディアが伝えている様子は、リアリティーテレビを凌駕するような面白さである。民主党を応援している都会に住む若い負け犬たちこそ、デモとかやってないで、トランプを応援するべきだと思うのだが、如何なものだろうか?トランプさんは本気で既成のシステムに挑戦しようとしている。掛け声ではなく、本当の意味でのチェンジを実行しようとしているのだ。
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