2/04/2016

アメリカ大統領予備選:三人の極端な候補たち(トランプ、クルーズ、サンダース)

資本主義が成熟すると、搾取する側の資本家と搾取される側の労働者間の軋轢が悪化し、やがては搾取されている側(労働者)が団結し、弱者(労働者)の弱者(労働者)による 社会を実現すべく強者(資本家)を駆逐する。これはかの有名なマルクスの資本論である。資本主義の矛盾は、やがて革命に繋がる、と。

アメリカ大統領選の予備選挙が行われているが、周りを観察してみると、マルクスの言っていることは概ね正しいのだな、と感じてしまう。(マルクスは共産主義に理想を抱いている癖に、肝心の共産主義については何も語っていない。資本主義の批判については、当たり前のことが並べてあり、聞くべき点も多々ある)

15年程前まで、社会のエリート予備軍たる学生たちは、喧々諤々と共和党の政策が如何に馬鹿らしく、民主党が如何に素晴らしいか、という事を討論していたものだ。しかし、現在のアメリカのリベラルな都市の学生たちの話題は、バーニー・サンダースの政策である。多くの学生が社会主義に靡いているのである。自分たちもエスタブリッシュメントを目指すために大学にやって来た癖に、エスタブリッシュメントを真っ向から否定している。そして、その方向にアメリカの未来の理想図を思い描いているようである。

バーニー・サンダースは、ニューヨークはブルックリン生まれのポーランドにルーツを持つユダヤ系である。1941年生まれであるから、現在は74歳だ。イスラエルに渡ってキブツで青春を送った事がある人達は、コミュニティーベースの考えに偏る人が多いが、サンダースも社会主義的な考え方を持っている。サンダースはキング牧師などの公民権運動に関わってきて、インディペンデントとして2005年にヴァーモント州の上院議員に選出されている。で、今回は院内会派を結んでいる民主党から大統領候補に立候補したわけだ。貧富の格差是正を公約としている。例えば、公立大授業料無償化、国民皆保険の導入、公共事業への1兆ドルの拠出、最低賃金の1時間15ドルへの引き上げなどである。既存の制度を大胆に変える「政治革命」を標榜している訳だ。まあ、大統領に選出される事は無いだろうが、なったところで、このあたりの政策を実行することは不可能である。だが、こういったアイディアに若者たちの多くがあっさりと靡いてしまうほど、アメリカの社会は不安定であるという事である。

共和党からはドナルド・トランプが来た。テレビで人気だった「歯に衣を着せぬ発言」を武器に、貧乏でバカな白人ルーザー層を取り込んでいる。不法メキシコ移民を強制送還させ、イスラム教徒の入国も全面禁止。保護貿易を推進して日本や中国との貿易不均衡の徹底するといった、いかにも田舎のシンプルな人が喜びそうな政策を騙っている。暴言王などと言われているようだが、私には「田中角栄がとった戦略」にしか見えないのだ。結局のところ、ただのポピュリストである。トランプが繰り返す経済政策は、共和党的ではなく、むしろサンダースに近いと思う。

だが、アイオワ州のコーカスを勝ったのはテッド・クルーズだった。テッドクルーズはカナダに渡ったキューバ移民の子供である。テッドクルーズはティーパーティー運動から湧いてきた下院議員だが、オバマケアに反対する立場から、予算の成立を阻むため、議会で21時間以上にわたる「牛歩演説」を行った事は記憶に新しい。小さな政府を支持し、中絶は禁止、オバマケアの破棄、そして銃規制は反対、と右翼政策を掲げる。さらには、積極的にISISも壊滅させると、宗教保守派に喜ばれるような政策を掲げている(あれ?小さい政府を目指すんじゃないの??)。人相が悪くて嫌いなのだが、かなりの切れ者だ。

私は、上記三候補が嫌いと言うわけではない。皆、必死に努力して役割を演じきっているのだ。が、そういった候補を積極的に応援する負け犬アメリカ人が多いという事実に辟易している。民主主義国家を標榜するアメリカでの革命は、選挙によるものだろう。そのうち主流派に駆逐されるとは思うが、こういう泡沫候補であるべき極端な連中にスポットライトが当たってしまうほど、現在のアメリカが孕む「資本主義」の矛盾は、かなり危険な状態にあるのだと思われる。ブルームバーグさん、出番ですよ。

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