シリアの内戦を停める事が世界の利益につながる事は論を待たない。ただ、1)どちら側を支援して内戦を停めるのか?2)内戦後のシリアをどのように統治させる(する)のか?3)誰がどのような資源を使って内戦に介入するのか?といった質問に対して誰もが納得できる回答を用意することは不可能である。シリアは歴史的にはソ連寄りの国であったという事実。シーア派の総本山であるイランと国境を接しているという事実。そして、ユダヤ国家であるイスラエルとも国境を接しており、6日戦争(第三次中東戦争)やヨム・キプール戦争(第四次中東戦争)に従軍した人達が米国やイスラエルに多数いるという事実も、政治戦略を練る上での「棘」になっている。
昨年の9月11日にベンガジの在リビア・アメリカ領事館が襲われ、スティーブンス大使を含む4人の米国人が殺害されるという事件が起きたのだが、スーザン・ライス国連大使が情報解析過程に落ち度があった事実を隠蔽しようとした事実が政治問題化した。結果、スーザン・ライスは次期国務長官に内定していたにもかかわらず、その席には着けず、民主党のジョン・ケリー元大統領候補が国務長官を務める事になった。余談だが、12年ぶりの白人男性の国務大臣就任である。私はこの人事を非常に評価している。
さて、スーザン・ライスに代わる国連大使にはサマンサ・パワーが就任した訳であるが、この人を国連大使に選んだ時点で、アメリカがシリア問題に介入するであろうという事は読めていた。パワーは「集団人間破壊の時代」という本を著しており、虐殺問題が専門である。ルワンダの内戦による虐殺などを徹底的に批判している。シリアの内戦で虐殺が行われている以上、パワー女史が黙っている訳がないのである。
サマンサ・パワー女史に対する評価は色々あるのだが、シリア問題を解決する必要について、反対する人はいないと思う。ただ、アメリカが「世界の警察」として立ち回るべきかどうかは、議論の余地を残す。そして、バラク・オバマ大統領がシアリア攻撃に言及すると、共和党は「モンロー主義」的な主張をして反対の立場を取った。そして、ロシアのプーチンが妙な介入を試みた。ロシアとアメリカは「同性愛者問題」などでも揉めており、冷戦に戻るのか、などと大袈裟な事をいう人までいた。
で、それが回り巡ってロシアとアメリカが急接近し、シリアから化学兵器を無くすという政策に合意したというのだから世界は面白い。勿論、この合意により内戦が停まるかどうかは怪しい。この合意は糞の役にも立たない、などと悲観論を詠う識者も多い。ただ、国際政治の卓上で起きた非常に興味深い出来事に注視する必要があるだろう。
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