一般の人達と国の経済対策について喋っていると、違和感を覚える事が多い。というのも、多くの人達が、日本は過度の借金漬けであり夕張市のごとく破産するのではないのか、という意見を持っている。輪転機を回せば紙幣などいくらでも発行できるので、理論上国が破綻する事はない。しかしながら、輪転機をフル回転させるような事態になると、円が相対的に安くなり、強烈なインフレのプレッシャーが生まれる事になる。だが、日銀や財務省が節度のある政策を執り続ける限り、ハイパーインフレに陥る事はまずないだろう。マクロ経済の観点からすると、デフレよりもインフレの方が健全なので、ある程度のインフレは歓迎するべきである。
プライマリーバランスが黒字化したほうがいいのか?と問われれば、そんな簡単な話ではない。もしロシアのように大きく黒字化すると、それはそれで問題になる。現時点では、日本が近い将来にそのような問題に直面する可能性が低いので、こんな事を討論しても意味がない。ただ、財政赤字が急激に大きく膨れ上がる事態は、「日本売り」の投機的なシグナルを発してしまい、日本の資産や円が投資家に売りたたかれる事態が起こりうる。多くの人は、このような事態を心配しているのではないか?
結論からいうと、プライマリーバランスの問題は、大きく動かさなければ問題ない。税収が減れば、それ相応の予算を組めばいいわけだ。ただ税収が減っている状態は、現在のような不景気と直結する場合が多く、その時に増税の話をする事は全くのナンセンスである。増税は景気が良い時にするもので、不景気下で実行して投資や消費を滞らせると大変な事になる。それこそ、対処のしようがない事態に陥る可能性すらある。金融危機を引き起こしたくなければ、景気浮揚を待ってから増税するしか方法はない。
不景気下では、通常お金をばら撒くものである。消費を増やすと、短期的にGDPが膨らみ、その後の政策次第で、経済が過度に停滞するリスクを防げる場合がある。ただ日本国では、個人消費が完全に滞っているので、どのように消費を増やすようにばら撒くかが問題だ。ばら撒かれたお金が貯蓄に回されると、ばら撒く意味は全くない。公明党が以前イニシアティブをとって実施したギフト券も殆ど意味がなかった。もう一つの問題が利権団体の存在だ。予算を組んで、利権団体に無駄に吸われることなく、消費者にどのようにすればお金を回せるのか?この答えを持っている人は今すぐにでも執政者になって欲しい。
そんなわけで、日本に横たわる問題は、予算配分の柔軟さが殆どないということだ。つまり、予算を削減したくても削減できない。何故か?それは、以前のコラムにも書いたように、利権団体や黒い団体の影響下で、税金を蜜源とするとんでもない構造が出来上がってしまっているからだ。だから税金の収入が減っている時点では、そのような団体を排除して、予算を削減せざるを得ない。政治家にとってもっとも重要な事項は、予算を削るのが先か、利権団体を蹴散らすのが先か、という問題だ。それは、リーダーシップの問題である。いずれにせよ、相当の気概がなければ日本の首相は務まらない。喧嘩できない人には経済対策は不可能なのだ。
麻生氏はばら撒くといっている。恐らくそれは正しいが、上記の問題をクリアーした上でどのようにばら撒くのかを明確にする必要がある。予算をじゃぶじゃぶ使っても、お金が消費に回らなければ、中長期の景気浮揚はあり得ない。ケインジアンがいう机上の空論は、日本の権力構造上が原因であろうか、実証的に通用していない。与謝野氏が唱える増税は、現時点では口にもするべきではない。或いは与謝野氏はあて馬なのか?上げ潮派の言っている事は全くもって正しいが、どうやって「上げ」るのか?今は明らかに下がっている段階だ。
何れにせよ、我々は直接自民党総裁を選べないので、高見の見物しか仕方ない。ただ、個人として不確定要素が多すぎる。我々が自分たちの資産を守る見地から、インフレ下とデフレ下では異なった活動をしなければならず、政策がぶれる事で不確実性が生まれ、我々個人の未来を不透明にしている。このような状況下では投資しにくいし、安心して消費も行えない。
実はタイムフレームを除外すると、経済政策上、誰の言っている事も決して間違っていない。リーダーシップさえ発揮できる人が首相になれば、政策の枝葉末節は恐らく関係ない。そして、新しい総理大臣が不公平性の元凶である黒い癌を排除できるかどうかが全てであろう。癌を取り除かない限り日本に未来はない。どうせ誰がやっても同じの経済政策を議論するよりも、癌の取り除き方をしっかりと議論してもらいたい。ただ、このような事は、戦略上伏せておいたほうが賢明なのだろうが。
しかし、このような匿名のブログでさえも、気兼ねして癌の実態を事細かく描写する事が出来ない。日本が患っている病みは非常に深刻である。
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