パシフィックノースウェストで美味しいものといえば、サーモンである。日本では北海道で獲れた鮭が一般に食べられるが、あれはシロジャケであり、少し味が落ちる。輸入物として入ってくるサーモンは、圧倒的に養殖物のアトランティックサーモンが多く、アラスカ沖で獲れる鮭が日本に入ってくることは極端に減っているという。
太平洋方面では五種類のサーモンがいると言われている。何故このような回りくどい言い方をするかというと、鮭の分類は非常に厄介だからだ。太平洋サーモンはOncorhyncus属に分類されているが、大西洋サーモンのSalmo属の亜属とする説もある。Oncorhyncus属には、ニジマスやイワナなどのいわゆるマス属も含まれている。キングサーモンは日本では「マスノスケ」と呼ばれているし、ピンクサーモンは「カラフトマス」と呼ばれており、サケとはみなされていない。サケの仲間は海洋型と河川型で形状が完全に変ってしまうため、分類は非常に難しい。漁業で使う用語と学名が混ざり合って、自然とややこしい話になるのだ。
それでは、アメリカで太平洋サーモンとみなされている5種を紹介しよう。
シヌーク(キングサーモン・マスノスケ)
コーホー(シルバーサーモン)
サッカイ(レッドサーモン・ベニジャケ)
チャム(ドッグサーモン・シロジャケ)
ピンクサーモン(ハンプバックサーモン・カラフトマス)
私見ではあるが、この中で一番深い味わいを持つのはなんといってもシヌークことキングサーモンだ。脂の乗り方も素晴らしい。続いてサッカイことベニジャケ。キングと比べ、やや脂分が少なめだが、調理法によってはキングと対等に渡り合える。コーホーことギンジャケも悪くない。やはり、キングに比べれば脂の乗りが少ない。チャムことシロジャケも食用になりうるが、脂分が少なく、そのまま食べるには味が落ちるので、料理法を工夫する必要があろう。日本でよく食べる塩ジャケは、見事に脂分が少ないチャムの特徴を引き出す料理法である。ピンクサーモンも食べられないことは無いが、私ならわざわざ買わない。勿論、季節や獲れる場所によって魚の味は変わるし、個体差もあろう。要は、あなたが市場で如何に美味しそうなサーモンを選ぶかと言う事に全てがかかっている訳だ。
もし、天然物で新鮮な脂の乗ったパシフィック・サーモンを手に入れれば、私ならバーベキューで楽しもう。脂の乗った食べ物の調理法は、軽く炙って脂を溶かすのが基本。素材が新鮮であれば、調理に小細工などいらない。塩を振るだけでも十分美味しいが、適度に香草をまぶしてみるのもいい。後は、焼くだけだ。丸太に火をつけ、火から十分離して金網を置く。金網は十分に熱してから、皮を下に向けてサーモンを並べる。火との距離を巧くコントロールし、火が入り過ぎないように注意する。暫くすると、脂が滴る毎に火の勢いが増す。皮が十分焦げれば、スペアの金網を上に乗せて、サーモンを挟んでひっくり返し、火に近づけて、短い時間炙り、出来上がりだ。サーモンは火が通りやすいことで有名だが、皮は十分に焦がした方が美味しい。表面はパリッとして、中はふっくらとジューシーな焼き方が理想だろう。簡単そうに聞こえるが、一度に大量のサーモンを焼かないと巧く焼くのは中々難しい。パーティー向けのレシピだが、これこそがサーモンを美味しく食べる方法だと思う。
近年、アラスカ産の天然物サーモンは日本に向かっていないと聞く。それならどこに行くのかと業者に聞くと、中国だそうだ。中国人がサーモンを食べるのか?そうではないらしい。実は、アラスカ産のサーモンを中国で加工し、パックなどにつめ、アメリカに送り返しているらしい。日本が不景気で購買力が無くなっている裏で、お金を持ったアメリカ人達が魚の味を憶えたのだろう。白ワインを飲みながら、バーベキューのサーモンをほおばみ、秋のシアトルの残り少ない太陽のある夕暮れを楽しむ。
バーベキューについて
1 件のコメント:
さんまが食べたいなー。でも、あのサーモンはほんまうまかった。あーいう味は、なかなか日本でも出会えんよね。僕がいい店にあんま行ったことないせいかもしれんけど。
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