12/09/2006

イラク戦争の怪

政治的な話は控えようとも思っていたが、昨今のブッシュ政権の路線転換は非常に気になるので、敢えてこの場で言わせてもらう。2007年のセネター(上院議員)から民主党が事実上の議会多数を占めることが決まってからは(49対49だが、無党派のヴァーモント州のサンダースは社会主義にも近い左派、コネチカット州のリバーマンは元民主党)、次の大統領選を意識してか、ブッシュは弱腰外交をスタートさせた。これも政治戦略上の策略であるとは信じたいが、非常に無責任な決断だと思う。

ラムズフェルドが更迭され、元CIA長官のゲーツが新たな国防長官に指名された。民主党は鬼の首でも獲ったかのように、イラク戦争を否定し始める。イラク研究グループは12月6日に奇怪な内容のレポートを提出した。その中で、ジミー・カーターは、ブッシュ政権のイラク政策を否定し、テロリスト国家であるシリアやイランとの対話を薦めている。さらに、イラクの民間兵に後を託して、アメリカはイラクを去るべきであるという意見すら書いている。これはある意味、イラク政策を間違っていたと認めたうえで、白旗を揚げろと言っているような物だ。さらに議会の支持を受けられなかった国連大使のジョン・ボルトンも国連大使の座を去ることは規定路線となっている。無能国連のアナン議長は、これみよがしとイラクは内戦状態であるとマスメディアに話し、世界の世論を反イラク戦争に持っていこうとする。

私は別に共和党を擁護したいわけではない。ただひとつ気になるのは、アメリカの政治の無責任さである。民主党は反ブッシュを叫び、イラク戦争を批判する。しかし、イラク戦争は共和党とブッシュが独自にやっているわけではなく、「アメリカ」がやっているのだという認識が全くない。共和党に全ての濡れ衣を着せて自分たちは責任がないとばかりの態度には、呆れるを通り越して、憤りすら感じる。

イラクに侵攻したことが是か非かを論じることはしたくない。ただ、アメリカを中心とする軍隊は実際にイラクに侵攻し、フセイン政権を転覆させた。侵攻した際の建前上の理由は、イラクが大量破壊兵器を放棄することと、テロリスト勢力を一掃し世界平和を勝ち取ることであった。しかし、イラクに大量破壊兵器は見つけられなかった。そしてフセインを倒したアメリカ軍は、テロリストを根絶させることも出来ず、未だに問題は何も解決していない。それどころか、皮肉なことに、テロリストは以前にも増して増えているし、シリアとイランの二つの近隣するテロリスト国家が、独裁者の元でかつてない纏まりを見せ、力をつけてきた。

世界が思っているように、アメリカのせいでイラクが内戦状態に陥っているのか?違う。テロリストが問題を拗らせているのだ。中東は遅かれ早かれ民主化の道を辿り、世界の一員にならなければならない。しかし、孤立主義に固執するテロリストが実際に人殺しをする。それを軍隊や多国籍軍が鎮圧するのだが、その鎮圧を妨害しようとして、さらにテロが起こる。無知でまともな教育を受けていない人達は、それを全て外国や異教徒のせいにする。外国がやって来たから平和が無くなったのだと。まともなイラクの人間の意見は全くどこにも届かない。イスラエルやアメリカに反対する扇動者や無知な人たちの声だけがニュースに響く。

イラクをまともにしようと思えば、時間がかかるだろう。人々を一から教育しなおさなければならない。イスラムの教義を曲解した人々が、多くの人を殺し、世界から孤立しようとする。たとえば、イスラエルがガザで作った学校では、パレスチナ人たちはパレスチナの子供達がイスラエルの教育を受けることを拒否している。中東では、教育そのものが悪いと信じている人達が未だに多いのだ。アメリカやイスラエルがまともな考えを説こうとしても、中東にいる人々は聞く耳を持たないだろう。まともな議論が理解できるのはまともなレベルに達した人だけなのだ。中東の現状は黒船が来た時の頃の日本と似ているのかもしれない。尊皇攘夷を叫ぶものたちの影に隠れて、私腹を肥やそうとするものや、ただの不定浪士が町を荒らす。しかも、攘夷理論にかぶれた者達がさらに事態をややこしくする。イラクでも荒そうなものを集めて、新撰組でも作ってテロリストを一掃させたらいいのだ。

どちらにしても、ボトムラインは、民主党であれ、共和党であれ、尻拭いだけはきちんとするべきだ。対話が通用しないことが解ってるくせに、中東で対話を持ちかけている国連の議長やジミー・カーターの無能な発言には耳を傾けてはならない。残念ながら、解決方法は、おかしな狭義を伝播する原理主義者を文字通り一掃し、まともな教育の普及をしなければならないだろう。国連が主導するべきだが、多くの国連のメンバーはテロリスト国家であり、機能していない。アメリカがきっちりと警察の役目を引き受けるべきなのだが、問題は他国が血も流さず、金も使わず、傍観を決め込んでいることにある。テロリストを一掃すること無しに平和は訪れないと解っていながらも、フリーランチを求めていることにあるのだ。

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