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10月, 2006の投稿を表示しています

マリナーズが勝てない理由

シアトル・マリナーズを愛する者として、昨今の不甲斐なさは非常に腹立たしい。マリナーズがメジャー記録の116勝をあげ、破竹の勢いだった2001年にはセーフコフィールドに頻繁に通ったものだが、今シーズン私は2度しか球場に足を運ばなかった。実際に、ESPNのアテンダンスレポートの統計によると、セーフコフィールドは2001年には平均4万3300人の観衆を収容し、メジャー30球団中1位であった。2002年は93勝したものの、アメリカンリーグ西地区で3位に終わりプレーオフ出場は出来なかったが、前年の余波を残し収容観衆1位(43739人)を記録維持した。2003年はヤンキースに首位の座を明け渡し、2位に陥落(40351人)する。そして、2004年は10位(36305人)、2005年は12位(33619人)、2006年は15位(30626人)と凋落していく。何故そんなことになったのだろうか?やはり勝たないチームを見に球場に行っても面白くないのだ。 勝たないのはマリナーズが弱いからだろうか?そう結論付けるのは簡単だが、実際の問題はそうではないだろう。マリナーズの資金力が乏しいという人もいるが、実際マリナーズはメジャー球団中9位のサラリーを支払っており、そう悪くはない。負け体質になっている、リーダーが不在だ、などと言う人もいる。だが、私が思うに、一番の問題はアメリカンリーグの西地区の他球団が強すぎるのだ。 オークランド・アスレチックスは地味なチームだ。チーム打率は話にならないくらい低いし、ジトーやストリートがいるものの防御率も4点台で及第点ではあるがまあまあだ。なのに、勝ち続けるのだ。このチームは徹底的に統計を使うと言われている。選手の能力や相手選手の弱点を、コンピュータで統計学的知見を駆使し、徹底的に洗い出しているという。年棒に見合わないスター選手はどんどん放出する。相手選手の投げる球の確率や、特殊な状況下での作戦なども全て確率を知っているという。これがシーズン中盤からアスレチックスが急に強くなる原因であるらしい。選手を信じて単純な野球をするマリナーズは、今季アスレチックス相手に大きく負け越した。 ロスアンジェルス・エンジェルス・オブ・アナハイムは、2003年にオーナーがウォルトディズニー社からメキシコ系のモレノ氏に変わって以来、資金を惜しまず補強するようになった。FAでゲレロやコロ...

ワールドシリーズ開幕

今年のワールドシリーズはワイルドカードのデトロイト・タイガースとプレーオフ球団中最低勝率のセントルイス・カージナルスとの戦いとなる。最近はワイルドカードチームの活躍が目立つ。2002年のアナハイム・エンジェルスがサンフランシスコ・ジャイアンツとのワイルドカード同士の対戦を制したのを皮切りに、2003年はフロリダ・マーリンズ、2004年はボストン・レッドソックスがワイルドカードチームとしてワールドチャンピオンになっている。2005年はヒューストン・アストロズが、そして今年はデトロイト・タイガースがワールドシリーズに駒を進めている。 まあ、結局は、短期決戦とシーズンでは戦い方が変わるのだろう。言い古されていることだが、短期決戦では、ピッチャーが全てなのだ。タイガースは、二年目の先発バーランダーとルーキーであるセットアッパーのズマヤの活躍が大きい。この二人に、昨年レンジャースでカメラマンを殴ったケニー・ロジャースが加わり、チームが完全に変わってしまった。そして、イヴァン・ロドリゲスがピッチャーに指示を出す。球場の大きさが異なるので一概に比べられないが、今シーズンのタイガースはメジャー30球団中一位の(3.84)の防御率を記録した。対して、打撃は、オルドネスやギーエン、ロドリゲスがいるので、まあまあ上手くまとまったチームだ。 打率一位を誇ったのは、シーズン中盤から、モウアーとモルノーの活躍で追い上げ、ついにはタイガースから中地区首位の座を奪い取ったミネソタ・ツインズだ。ただ、サイ・ヤングピッチャーのヨハン・サンタナがいるものの、投手力をタイガースと比べると、総合的に一枚落ちてしまう。 打点に関してはニューヨーク・ヤンキースがぶっちぎった。ジータ、Aロッド、シェフィールド、アブレイユ、ジアンビ、松井秀喜。認めるのは悔しいが、オールスター打線だ。ただ、投手陣が、ワールドシリーズ三連覇した頃と比べて貧弱だ。マイク・ムシーナと王健民は信頼できるものの、ランディジョンソンは衰えが目立つ。4番手以降は、ビルに飛行機で突っ込んだライドルなどに頼る始末だ。マリアノ・リベラという絶対的な抑えがいるものの、中継ぎはかなり苦しい。これでは、タイガースに負けてしまっても文句は言えまい。 昨年優勝した井口資仁が所属するホワイトソックスは、今期はトーミーの加入もあり、打率や得点が上がったものの、防御率...

ベトナム麺を食べ続ける理由

私は、タオ(道)イズムを継承するがごとく、できるだけ色々な食材を食べるように心がけている。レストランではなるべく同じものは食べないようにしている。それは、栄養面を考慮してではなく、寧ろリスク回避をしているのである。つまり、食べ物は基本的に体に悪いので、同じものを食べ続けて体の中に毒物などが溜まるリスクを軽減しようとしているのだ。 健康面を考慮すると、外食ほど怖いものはない。特にランチは恐ろしい。一体何が入っているのか解らないからだ。6-7ドルほどで、パンチを効かせた美味しい物が運ばれてくる。癖になりそうな濃厚な味を提供してくる店も多々ある。しかしそれらの店が、自然食品からスープを取っているとは考えられない。恐らく、様々な調味料を組み合わせて我々の舌に刺激を与えようとしているのであろう。油、砂糖、塩分は必要以上に使われているし、化学調味料も半端でなく入っている。肉や魚、野菜、卵なども安いものを使っているのは明らかであり、どのような経路で運ばれているのかは不明である。 しかし、それでも、ランチを食べに行くのは楽しいものだ。B級グルメを心から愛する私にとって、安物のランチが奏でる交響曲の響きこそが人生の楽しみである、といっても過言ではない。私がシアトルに移ってきた頃は、テリヤキ、中華料理、タイ料理、ベトナム料理、ハンバーガー、メキシコ料理、インド料理、ケバブと、徹底的に食べ尽くして楽しんだものである。しかし、一箇所に長くいればいるほど、マンネリ化の波は避けることが出来ない。旅行気分の非日常が、やがては日常生活に変わってしまい、そして人々は楽しみを忘れてしまうのだ。 経済的な理由、時間的な制約、一人で食べに行ける簡便性、健康に対する配慮などを総合的に考慮した結果、私はシアトルでファー(Pho)ばかりを食べる人間になってしまった。英語の綴りを見て、フォーと発音する人がいるが、正確には誤りである。ファー・ボーとはベトナムの牛肉麺である。米から作った冷麦に似た形の麺を用い、牛の骨で出したスープに入れる。ファーは、恐らくフランスの植民地時代に、フォンドボーなどのスープの取り方に影響を受けた料理であると思われる。 いつも行く店は決まっている。一人でドアを開け、人差し指を立てて、一人であることをアピールする。愛想の悪い親父が、ごった返した店内の空いている席を指差す。私は腰掛けて防水ジャ...

流通がアメリカの寿司の味を決定する

魚の話ばかりになるが、アメリカにおいて、あるいは寿司は日本料理と同義語であるのかもしれない。それほど寿司はアメリカに浸透している。以前に討論したが、大阪の寿司を好まない私にとって、アメリカの寿司は結構マシだと思うことが良くある。 日本に住む人から良く不毛な議論をふっかけられる。つまり、アメリカの寿司は実際に美味しいのか、というものである。大概の場合、そのような質問をする人は、日本の寿司が美味しいに決まっており、アメリカで食べる寿司は不味いに決まっているという思い込みを正当化して欲しいという、明確な意図を持っているものだ。このような意図が明から様な場合、喋るのも辟易とするのだが、一応丁寧に答える。「さあ、どうでしょう。自分で食べてみたらどうですか?」、と。 努力して一般論を言うと、アメリカの寿司は千差万別である。美味しい店もあるし、驚くほど不味い店もある。よく、作り手の技術が寿司の味を左右すると言う人がいる。それはあまりにも話を簡略化させ過ぎている。勿論、アメリカには白飯の炊き方すら解っていない無茶苦茶な店も星の数ほど存在する。しかし、そのような一定のレベルに達していないケースについてこの場で論じても仕方ない。私が言及したいのは、まともな寿司屋であれ、アメリカでは寿司の味のばらつきが激しいと言う事である。 寿司の味はネタの魚に左右される。しかし、アメリカに築地は存在しない。寿司シェフが魚市場に行って素材を選ぶことなどほぼ不可能だ。よって、魚の流通経路を確保させている店が、当然の帰結として美味しい寿司を出すことになる。逆に、流通経路を確立させていない店に入ると、かなり残念な結果となってしまう訳だ。 私がシアトルで良く行く「武蔵」という店がある。狭い店内にはアジア人と知的そうな顔をした白人がごった返す。店に入るまでかなり長い時間待たなければならない。この店は10ドル強でなかなかの寿司を出す。かなり大き目の握り寿司で、ネタも大きい。これをどう評価するかは意見の分かれるところだが、私は悪くないと思っている。サーモンは脂が乗って太めに切られていて食べ応えがある。ハマチは脂がしっかりと乗っている上に身が引き締まっており、絶品だ。ただ、私はこの店に小うるさい江戸っ子とは行かないだろう。何故なら、マグロが余りいただけないからだ。私は関西人であり、マグロなど数ある魚の一種に過ぎないと考...

サーモンはBBQで食べる

パシフィックノースウェストで美味しいものといえば、サーモンである。日本では北海道で獲れた鮭が一般に食べられるが、あれはシロジャケであり、少し味が落ちる。輸入物として入ってくるサーモンは、圧倒的に養殖物のアトランティックサーモンが多く、アラスカ沖で獲れる鮭が日本に入ってくることは極端に減っているという。 太平洋方面では五種類のサーモンがいると言われている。何故このような回りくどい言い方をするかというと、鮭の分類は非常に厄介だからだ。太平洋サーモンはOncorhyncus属に分類されているが、大西洋サーモンのSalmo属の亜属とする説もある。Oncorhyncus属には、ニジマスやイワナなどのいわゆるマス属も含まれている。キングサーモンは日本では「マスノスケ」と呼ばれているし、ピンクサーモンは「カラフトマス」と呼ばれており、サケとはみなされていない。サケの仲間は海洋型と河川型で形状が完全に変ってしまうため、分類は非常に難しい。漁業で使う用語と学名が混ざり合って、自然とややこしい話になるのだ。 それでは、アメリカで太平洋サーモンとみなされている5種を紹介しよう。  シヌーク(キングサーモン・マスノスケ)  コーホー(シルバーサーモン)  サッカイ(レッドサーモン・ベニジャケ)  チャム(ドッグサーモン・シロジャケ)  ピンクサーモン(ハンプバックサーモン・カラフトマス) 私見ではあるが、この中で一番深い味わいを持つのはなんといってもシヌークことキングサーモンだ。脂の乗り方も素晴らしい。続いてサッカイことベニジャケ。キングと比べ、やや脂分が少なめだが、調理法によってはキングと対等に渡り合える。コーホーことギンジャケも悪くない。やはり、キングに比べれば脂の乗りが少ない。チャムことシロジャケも食用になりうるが、脂分が少なく、そのまま食べるには味が落ちるので、料理法を工夫する必要があろう。日本でよく食べる塩ジャケは、見事に脂分が少ないチャムの特徴を引き出す料理法である。ピンクサーモンも食べられないことは無いが、私ならわざわざ買わない。勿論、季節や獲れる場所によって魚の味は変わるし、個体差もあろう。要は、あなたが市場で如何に美味しそうなサーモンを選ぶかと言う事に全てがかかっている訳だ。 もし、天然物で新鮮な脂の乗ったパシフィック・サーモンを手に入れれば、私ならバーベキュー...

寿司不毛の地、大阪

私は大阪で生まれ、大阪で育った。関西人たちの多くは、大阪の食事のほうが東京よりも美味しいと信じている。話を簡略化すると、それはある意味で正しいかもしれない。しかしどれだけ譲歩しても、東京のほうが大阪よりもずっと美味しい物が三つある。ラーメン、天婦羅、そして寿司である。喧嘩は喰えども、大阪で寿司は喰うべきでないのだ。 これはある意味合いで、とても不公平な視点である。何故なら、寿司の定義そのものに問題があるからだ。寿司の定義は最近の歴史のある時点で完全に変わってしまった。関西と東京には全く違う寿司があった。そもそも寿司は「熟れ酸し(なれずし)」に起源を発する。琵琶湖で獲れたフナを米で発酵させる鮒寿司が代表だろう。すしとは、乳酸菌を使った魚の発酵食品だったのである。その後、米も食べるようになり、やがて魚も発酵させなくなる。関西では箱寿司が作られた。一方、江戸では、酢の普及と新鮮な江戸前の魚を使用することにより、江戸前の握り寿司が幅を利かせるようになった訳だ。しかし現在、寿司と言われれば江戸前握りをイメージする人が大勢を占めるようになった。寿司の定義自体が、特別な断りをつけない限り、東京生まれの江戸前握りを指す言葉に代わってしまったのだ。つまり、私が言いたかったのは、一般的に関西の江戸前握りはぱっとしない、という事だ。例えば、淡路町の吉野寿司ではなかなかの箱寿司を買えるが、これは残念ながら、一般人には「寿司」とみなされない訳である。 最近は情報や交通の発達のせいで、東西の差が少なくなってきたのは確かだ。だが、地域文化はやはり形を変えさえせよ、完全に消えることは無い。今でも大阪の老舗で寿司を食べると、必ずバッテラが出される。巻き寿司(太巻き)が出てくる事もあるだろう。しかし、江戸前の握りに味を占めてからは、大阪で食べる「寿司」にあまり共感がもてなくなってしまった。関西の握り寿司の酢飯は少し甘すぎると思うようになったし、魚と酢飯の割合にも満足できなくなった。恐らく、どちらも箱寿司の影響を受けているからだと考えられる。私は実際に大阪に住んでいる限り、握り寿司を崇めた事は殆ど無かった。 東と西の魚の違いはやがて討論することにして、大阪でもなかなか美味しい「寿司」を出す店がある。交通網や情報の発展は地域文化を悉く破壊して来たが、そのお陰で恩恵を受けることもあるのだ。大阪中央市場にある...

その北米王者は凱旋門賞にはいなかった

食べ物の話題を期待しいる方には悪いのだが、凱旋門賞を見ていて馬の話が書きたくなった。馬の話はなるべく避けて通りたかったのだが、ディープインパクトが良い競馬をしたので文章にしてみた。ディープインパクトが3着に沈んだというのは残念ではあるが、凱旋門賞とはそういうレースだ。新聞紙上に書いてある通り、3歳馬が断然有利なレースである。2002年のマリエンバード(牡4)および2001年のサキー(牡5)くらいが数少ない古馬の優勝馬だ。その前の事例になると、1993年のアーバンシー(牝4)まで遡らなければいけない。ロンシャンの起伏に3.5キロの斤量差はあまりにも大きいのだろう。 今回の凱旋門賞は三強対決と持て囃されていた。昨年の優勝馬ハリケーンラン、昨年のブリーダーズカップターフを制したシロッコ、そして日本が誇る三冠馬ディープインパクトであった。シロッコを他の二頭と比べるのは少し可哀想だが、まあ良いだろう。しかし私が残念でならないのは、本来ならあの場所にもう一頭の馬が走っていたはずだった、という事である。 その馬の名はバーバロ。2006年5月6日チャーチルダウンズ競馬場でケンタッキーダービーに出走した。フロリダでの前哨戦を戦ってやって来たので、人気はそれほど高くなかった。毎年同じようにオールドケンタッキーを皆が歌い、そしてスタートがきられる。北米ダートは逃げ馬が元気だ。強い逃げ馬が揃うダービーでは、毎年前半が早くなる「魔のペース」が作られる。次第に落ち着いてくるのだが、力の無い馬は順番に振り落とされる。中団につけたバーバロは、直線を向いた時には既に勝っていた。力が違いすぎる。バテて止まった馬を尻目に、チャーチルダウンズの直線を一頭だけで駆け抜けた。バーバロはデビューから6戦全勝。6馬身半差の歴史的な着差をつけて3歳馬チャンピオンに駆け上がった。 何故この馬が特別なのか?父親がダイナフォーマーだからだ。ダイナフォーマーは典型的な晩成の子を多く残し、ずぶく中々勝ちきれない。代表産駒であるダイネバーやパーフェクトドリフトの名前を挙げると、なるほどと思われるかもしれない。しかし最も重要な点は、ダイナフォーマーはロベルトの血を引き(サンデーサイレンスやブライアンズタイムと同じ)、芝の競馬でも期待できるという事だ。北米のダート路線はミスタープロスペクターの子孫が大活躍し、ヨーロッパの芝で活躍す...