1/07/2014

史上稀にみる激闘の末、フロリダ州立大がオーバン大を下す。

BCS(ボウルチャンピオンシップマッチ)ナショナルチャンピオンシップゲームが月曜日に南カリフォルニアはパサディーナのローズボウルで行われた。全米一位のフロリダ州立大と全米二位のオーバン大学の、大学一位を賭けた決定戦となった。

前評判ではタラハッシーにあるフロリダ州立大学(FSU)の圧倒的な優位が予想された。FSUのクオーターバックは一年生のジャーミス・ウィンストンは、ハイズマントロフィーを受賞した。ハイズマントロフィーとは、大学フットボールの年間MVPの事で、一年生としては昨年のジョニー・マンズィルに続く史上二例目のケースとなった。ウィンストンは、アラバマ州のバーミングハム郊外の出身であり、母親はオーバン大学のファンを公言していた。ただし、少々素行の悪いウィンストンは、フットボール以外の事で全米メディアを震撼させた。というのは、2012年の12月に、ウィンストンが女性をパーティー会場か何かで合意なしにレイプしたという物だ。その後、この話は双方の弁護士が裏で合意して、警察の捜査は行われなかったが、口の悪いものはウィンストンを「強姦魔」などと呼んでいる。

オーバン大学は、アトランタとモンゴメリの中間に位置するアラバマ州のオーバン市にある州立大学で、元々は農学系専門の男子大学であったが、現在は研究を中心とする総合公立大学となっている。余談だが、南部訛りの黒人でもなければ「オーバン」とは発音せず、普通は「アーバン」と発音する。アラバマ州にはタスカルーサにある州立のアラバマ大学と共に、学業においてもスポーツにおいてもライバル関係の双璧をなしている。アラバマ大学とオーバン大学のフットボールの試合は、アイアンボウルと呼ばれ、アラバマ中のみならず、全米の注目を集める。2010年にはキャム・ニュートン(現キャロライナ・パンサーズ)をクオーターバックに擁し、全米チャンピオンになっている。ただ、ニュートン卒業後にチームを立て直せなかった。2012年のシーズンは、SEC(南東部大学連合)のリーグ戦で8戦全敗のダントツ最下位だった。それが、2013年シーズンには、ヘッドコーチに昔の攻撃コーディネーターのマルザーンを新しく据えた。ルイジアナ州立大学以外には全勝し、7勝1敗の成績を残した。特に、シーズン終盤のジョージア大とアラバマ大との二試合は、奇跡の勝ちと呼ばれるほどの劇的な勝利で、全米二位に滑り込んだのである。

BCSは、来年からはプレイオフに変わる為、現行の方式では最後となる。来年からは投票上位4校が、シュガーボウルやローズボウルなど(毎年変わる)を準決勝戦として、勝者同士の決勝戦が行われるようになる。現行方式最後の勝者が負けなしのFSUかアンダードッグのオーバンか、という事で注目を集めた。

南東部まで氷点下に冷え込んだ1月6日だったが、南カリフォルニアは暖かい。恒例の、オーバン大の鷹(ウォーイーグル)を飛ばすパフォーマンス、そしてFSUの馬に乗ったインディアンが火をつけた槍を地面に突き刺すパフォーマンスが行われ、試合が始まった。

FSUが試合開始から飛ばす、一方でオーバン大の攻撃はチグハグだった。FSUが圧勝かと思われたが、オーバンのディフェンスが踏ん張り、ランニングもパスも全く許さない。FSUは初めの攻撃でタッチダウンを奪えず、3点ゴールしか入れられなかったのが響いた。

その後のオーバンは、ランニングバックのトリ・メーソンのランニングが面白いように決まる。クオーターバックのマーシャルは、パスは決められないものの、ランニングでヤードを稼いでいく。FSUはオーバンのランニングにディフェンスが出来ていなかった。第二クオーターの中盤、オーバンは3つのタッチダウンを既に決め、21-3になり、オーバン大の勝利で間違いないと思った。オーバンのディフェンス陣はブリッツを多用したアグレッシブなデフェンスを展開し、前半は1インターセプト、3サック。FSUのウィンストンは、インターセプトをされた後など、カメラ越しで呆然としており、ハイズマントロフィー受賞の面影はなかった。しかし、転機が訪れる。前半終了の3分ほど前、FSUが4Thダウンをフェイクのパントでファーストダウンを奪ったのだ。それからFSUが勢いづく。前半試合間際にタッチダウンを決め、21-10とする。その後のオーバンは、簡単なフィールドキックをミスするという失態を犯す。

サードクオーター。両者のディフェンスが光る。寧ろ、クオーターバックが両者ともに情けない。パスが全く決まらない。サードクオーターはFSUが一度だけフィールドキックを決めて21対13とする。

フォースクオーター。ここから試合が急に盛り上がる。FSUが怒涛のタッチダウンで21-19とし、ボーナスの2点を奪って同点にするかな、と思っていたが、アンスポーツマンシップの反則を犯したため、1点しか奪いに行けず21-20になった。

引き続きメーソンが走りまくり、オーバンがフィールドキックを決め、24-20。その後が酷い。オーバンのパントキックを、FSUのウィットフィールドがキャッチした後100ヤードを走り込み、なんとタッチダウン。残り5分でFSUが27-24と試合をひっくり返した。しかし、オーバンも黙っていない。マーシャルが無茶苦茶な態勢からのパスで前につなぎ、最後はメーソンが走り込みタッチダウン。残り2分で31-27と再びオーバンが勝ち越した。

FSUの最後の攻撃。残り2分となり、タッチダウン以外での逆転はない。フィールドゴールでは一点差で負けてしまうのだ。この思い切りがクオーターバックのウィンストンを目覚めさせた。そして、オーバンのディフェンスを神経質にさせた。オーバンのディフェンスは前衛線をしっかり締めてQBに圧力をかける作戦で巧くいっていたのに、急にディープに何人もディフェンスの選手をばらけさせた。そして、セーフティーなどが余り巧くディフェンスできていなかった。残り一分、ウィンストンからグリーンに49ヤードのパスが通り、万事休す。確実にゴール前まで詰められ、試合終了21秒前、タッチダウンを決められる。31対34でFSUがリードした。FSUが最後のBCSをモノにした。

これで2006年のフロリダ大以降、SECが独占していた大学チャンピオンの座を、久々にACCが勝ち取った。FSUは1999年以来のチャンピオンであった。勝ったFSUも負けたオーバンも、良く頑張ったし、見ていて非常に興奮するゲームであった。私の心の中のMVPは、オーバンランニングバックのメーソンである。

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