私は岸田首相には何も期待していないし、いち早く降板して欲しいとすら思っている。ただ、日銀次期総裁に植田和夫教授を選んだことに関しては、評価している。 植田教授に日本の金融問題を解決できるなどとは毛頭思っていない。誰が舵を切ろうとも、日銀の現政策は行き詰る事が確実であり、解決方法は存在しない。そこを理解したうえで、次期日銀総裁は、英語を喋れて、博士号を所持しており、冷静に議論できる人であれば、最高の人選という事になる。植田教授は、それらを全て満たしている完璧な人選だったと思う。
金融政策をめぐって、宏池会と清和会の間に溝がある。目下では原料価格高騰と円安によるインフレが起こっている。油、マヨネーズ、卵、牛乳、昼食代、居酒屋。結構なものの値段が上がりまくっている。一方で、ガソリン、電気代や小麦なども助成金を入れまくって、低めに抑えられている。賃金に関しては、バイト代なども含め、肌感覚で上がっている感じがある。しかしながら、消費者物価を総合的に見た場合、日本では家賃や公共料金が固定されているので、総合的な計算上のインフレが起こりにくい(アメリカやヨーロッパでは家賃がバンバン騰がっている)。
アベノミクスが好きな人は、賃金の上昇など、本当の意味での2%のインフレ目標には達していないので、金融緩和を続けるべきであると言い続けている。かつてリフレ派は、どんな経路であろうと物価が上昇すれば景気が良くなる、みたいな事を言っていた。現在では、消費者物価はGDPデフレーターで見なきゃいけないので、日本はインフレを達成できていないとしている。需給のバランスが大切であり、アベノミクスにより需給バランスを通したインフレを作りたいとしている。
インフレやデフレというものは「見える結果」に過ぎず、インフレにしたから、デフレにしたから、経済問題が解決することはない。金融をいじらなくとも、インフレ前提の社会システムを変えれば、ある程度の社会問題は解決できるはずだ。何をやろうとも、我々の生活が劇的に良くなったりはしない。変化を作りだせば、美味しいとこを持っていける奴と、冷や飯を食う奴がでてくるだけである。
そう言った事を脳裏に入れておいてもらった上で、私はリフレ派のいう事も一理あると思う。インフレを作りたければ、それは需給にメスを入れれば良いわけだ。需要を増やすか、供給を減らすしかないわけだ。
日本の需要は自発的にどうすれば増えるのかを考える。米をもっと一杯作るのか?中国やインドに競り勝って、石油や金属や農産物をもっと大量に輸入できるのか?東京都市部でパワーカップルが一人一台ずつレクサスを買うのか?そういった需要の増やし方は、ほぼ不可能だ。こんまりのようなミニマリスト的な考え方が富裕層にも浸透している。高齢化で胃のサイズも小さくなり、炭水化物も不必要な脂質も抑えたい。排気ガスを吐きまくるようなランドクルーザーやポルシェに乗るのがダサく、自転車で移動する方が寧ろカッコいい。広い一戸建てなどは親の世代の異物で、狭めのマンションに住み、隣接したららぽーとに買い物に行く。いくら金を出そうと、誰も使わない。
一方、供給側はいくらでも切れる。コロナで困っている業者が多ければ、単純につぶれて貰えればよい。助成金はすべて切れば良い。作れないのなら、作るな、と。固定資産税も住宅家屋に減税せず、きっちりと壊せるようにすればよい。無駄な天下り先や電通などにもメスを入れ、不要な寺銭業者は退席してもらう。大型開発には許可を出さない。電車の延伸などもすべて禁止。従業員がいらなければ、すぐに解雇できるようにする。古い工場を潰して廃業すれば、逆に助成金をあげる。これは自民党が行うべき政策である。
マッスルを使いさえすれば、需要側でもインフレを誘発する政策もあるだろう。携帯電話の値下げはさせない。借地借家法を改正して、簡単に家賃を上げられるようにする。電気代やガス代やガソリン代は、原料価格に合わせて値上げする。電車代もエネルギー価格に合わせて値上げする。公立の教育機関も値上げしてきっちりと払ってもらう。高速道路や公共料金も値上げする。
このような政策を実施すると、すぐにインフレ目標に届くと思う。インフレにしたいのであれば、なぜやらないのだろうか?インフレになっていないのは、日銀の問題ではなく、自民党の問題である。