7/09/2022

シンゾー・アベを振り返る

シンゾー・アベは、政治家として自分の考えを解りやすく伝えることが出来る人物だった。小泉元首相は、若手を引き上げようと、安倍晋三に重役を任せる。派閥内で力がある訳ではなかったが、自民党の三世議員として党の序列をきちんと理解し、典型的なぼんぼんでクリーンであり、私利私欲で政治をするような政治家ではない。パペットとしての役割を完全に上手くこなせていた。首相の一期目では、党に足をすくわれる形で、批判の的となり、自身の健康問題もあり、首相を辞することになる。

野田首相との約束で民主党から政権を奪還した自民党は、菅さんによる三顧の礼により二期目の首相に返り咲いた。完全なるパペットで失敗したという経験から、官邸主導なる政治手腕を用い、党と霞ヶ関を力で捻じ伏せる様な政治を実行した。政治戦略としては正しかったと思うし、日本史上で最長の総理大臣在任期間を勤め上げたわけだ。が、霞が関や党の重鎮に快く思われず、マスコミを敵に回してしまう事になる。ゴミ以下の扱いを受けていた野党の一部からは、安倍晋三さえを批判しておけば存在感が出るという、空しい政治戦略が取られるようになった。クリーンが売りの安倍さんに、いわれのないようなダーティーなイメージを上手く植え付けた。

外交の場では、圧倒的な成果を残した。短命な日本の首相が続いたせいもあり、長く務めることが出来た安倍元首相がG7や国際会議の場で存在感を残したというのもあると思う。外交こそが自分の活躍の場だというごときの活躍で、外国首脳とも対等どころか、むしろ議論をリードするような活躍を見せていた。

コロナ禍を上手く乗り切る事が出来ず、晋三は菅に首相の座を禅譲する。安部は清和会の重鎮として、パペットから、パペットマスターへと進化しようとした。その辺りから色々とボロが出るようになった。自分の政治レガシーを肯定するための理論武装や、党内での権力闘争にキングメーカー的な力を見せようとするような動きが目立った。

シンゾー・アベは、一回失敗した後、パペットとして超一流な政治家となった。しかし、しっかりとした理論的な背骨が通っておらず、劇場型のパフォーマンスだけでは、影響力のあるパペットマスターとしては成就出来なかったのだと思う。三本目の矢を放っていなかった癖に、今更アベノミクスがどうのこうの。今更そんな話をしたところで、岸田さんが唱える無味無臭の「新しい資本主義」にさえ打ち勝てない。

主義主張もない暗殺者の銃弾に倒れ、SPの警護もきちんと受けられず、在任期間が最長であった元首相としては余りにも空しい犬死になってしまった安倍晋三。

ただただ、空しい。

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