2011年が選挙の年と言われる一番の理由が、アメリカの大統領選挙が控えているからである。何もしないオバマと不景気に怒る民衆達。そういった構図の元、共和党の大統領候補戦は、ある意味で他国の総統を決める選挙よりも大事な政治イベントであると言い切っても過言ではないだろう。共和党は保守であるが、保守は経済右派(リバタリアン)と社会的保守派(ポピュリスト右派)の大きく異なる主張(と頭)を持つ二つの層があり、どのように共和党支持層の人気を獲得するかで大統領候補への道が開けてくる。ポピュリストが跋扈すると、ジョージWブッシュのようなジョーカーでさえも大統領候補になってしまうわけである。
大統領選を11月に控え、共和党の大統領候補選びがいよいよ熱くなってきた。化かし合い、ネガティブキャンペーン、人情味を見せてみたり、宗教色を濃くしてみたり、不倫問題がばれたり、発言をめぐる言葉狩りなど、まさに劇場型の争いとなっている。
明日の1月3日、アイオワ州の党員集会が開かれ、共和党大統領候補戦が始まる。ナショナルニュースでは共和党候補選びが毎日のトップニュースであるのだが、世論調査の結果が短期間に激動するので訳が解らない。
3ヶ月ほど前までは、本命候補は間違いなくロムニー前マサチューセッツ州知事(64)であった。ロムニーはマサチューセッツで知事をしたことからも解るように、穏健派である。マサチューセッツ州では保険制度を確立したり、同性愛結婚や中絶などに対しても、比較的リベラルな立場である。そのことで「社会主義である」だの、「アメリカの家族の形を無視する」だの、神を信じる共和党右派から叩かれまくっている。ミット・ロムニーのネックはそのバックグラウンドである。ロムニーはモルモン教である。ワイシャツを着て自転車に乗ったりして大学のキャンパスなどで二人一組で勧誘している、あの宗教だ。ロムニー自身もフランスでモルモンの布教活動をしていた話を公にしている。プロテスタント以外で大統領になったのは、カトリックのケネディーだけであり、多重婚を認める「カルト」とも看做されるモルモン教出身のロムニーが米国の大統領になる事に違和感を覚える人も大勢いる。キリスト教原理主義者が共和党の右派と組んでいる貧乏な州では、ロムニーは苦戦を強いられるだろう。因みに、ロムニーはハーバードのMBAとJDのダブルメジャーである。
黒人のハーマン・ケインはピザフランチャイズの社長をして、共和党の大統領候補に名乗りを上げた。ケインも穏健派である。一時期はモルモンを嫌う層を中心に一番人気に推される勢いだったが、セクハラ問題がメディアに流れ出し、セクハラを受けた女性が数人出てきて、大統領候補を降りてしまった。
その流れに乗じて一番人気になったのは、ニュート・ギングリッチである。ギングリッチは下院議長も努めた大物であるが、政界引退をして、近年は「外の傍観者」として政治に参加していた。消去法でギングリッチという選択なのか、ぱっとしない小太りの男が先週くらいまではロムニーを抑えて一番人気に推されていた。しかし、ロビイストやファニーメイなどから大量の政治献金を受けていることなどが発覚し、人気が凋落している。
その他では、キリスト教右派の支持を急に集めてきたペンシルバニア州上院議員のリック・サントラムが急激に人気を伸ばしている。信仰深さや家族の価値を前面に出し、朴訥とした真摯な雰囲気が、単純な社会右派の人達に受けているのだろう。
忘れてはいけないのがテキサス州下院議員で医学博士のロン・ポールだ。ぶれない発言の一貫性には惚れ惚れとする。徹底的に小さな政府を目指すと言い、商務省、エネルギー省、教育省、内務省、国土安全保証省は意味がないので即刻廃止。軍隊も国外から引き上げて削減を徹底的に減らす、と言い切っている。不干渉主義で、海外援助にすら非積極的である。オーストリア学派を信望しており、小さな政府を目指すその姿勢は、マーケットからは圧倒的な支持を受けているが、仲間内の汚い政治屋には頗る評判が悪い。完全なリバタリアンの経済右派である。
泡沫候補では、ティーパーティーの女性候補ミシェル・バックマンや神と対話するペリー・テキサス州知事などがいるが、この辺りは色物である。
結局のところ、大本命であるがモルモン教徒であり、マサチューセッツから来た中道派が、キリスト教右派渦巻く共和党の候補争いで勝てるかどうかが全ての焦点だ。ロムニーが共和党の大統領候補になれば、11月の大統領本選は面白くなる。ロムニー以外、たとえばギングリッチが勝てば、オバマは楽に再選する。長い戦いになろうが、戦いの火蓋は、明日のデモインから始まる。
(私はロンポールが一番好きです。次はロムニーです。その他は嫌い。)
0 件のコメント:
コメントを投稿