最近、周りの人と話をしていると、政府はどんどん予算をつけて景気を良くするべきだ、みたいな「ゆるゆる財政派」の人たちが増えている。エリート層に属する賢い人たちさえも、こういった話題をする。日本は自国通貨で借金をしているので、日本円の信用はゆるぎない、みたいな話をするのである。大学でマクロ経済を数年勉強していれば、こういう発言はあり得ないと思うのだが、Youtubeとかで流れているエキセントリックな話を聞いて信用しきっている人たちが大勢増えていて、ちょっと怖い。2020年の選挙はインチキだというトランプの話を信じ切っているアメリカのアホな「保守層」にも似た、世間の空気の怖さを感じるのだ。
共産主義者の藤井京都大学工学教授や、偽名中小企業診断士DV三橋とかの話を鵜呑みにしている人が多いと思われる。前二者はマクロ経済を理解していていないので相手にする必要はないのだが、高橋洋一のように、デマゴーグで物の見方を胡麻化して、財政出動・財務省憎しのポジショントークで可笑しな言説を流布している人もいる(私は高橋洋一が好きですが、財政の話は同意できません。数字を胡麻化しています。)。馬鹿な話を鵜呑みにするアホは少ないと思っていたのだが、以外にも日本人はアホばっかりだという事で、ちょっとだけ真面目に解説しておきたい。
ファクトとして、自民党が与党に返り咲き、安倍晋三が日本国首相に返り咲いたことを受けて、日本銀行(BOJ)は2013年の4月に「量的・質的金融緩和」の導入に踏み切った。2016年9月に日本銀行(BOJ)は、10年物国債の金利に目標値を設定し、国債買い入れを通じてイールドカーブ全体を望ましい水準に誘導するという名目でイールドカーブ・コントロール(YCC)を導入した。
ここからは、上記のファクトに基づいた経済分析である。これらの政策は、日銀が長期国債を際限なく買い入れるという、実質上の財政ファイナンスである。日銀や日本政府の信用がなくなったと信じられた時点で、仕手筋、ヘッジファンドが仕掛けはじめ、やがて普通の内外の国債保持者(例えば日本の銀行に預金している私たち)がお金を引き上げ始め、「はい終わり」である。日銀に出口戦略は無いし、ソフトな解決策もない。日本のファイナンスは既に詰んでいる。問題は、いつに問題が露呈するか、だけである。明日か、2年後か、10年後か、それだけの話である。
これに対して、財政ゆるゆる派の人たちは反論する。
1)こんな話は90年代から話題になっており、30年以上問題ないではないか?これはその通りだが、「今までなかったから、これからもない」という話ではない。国際的な比較や、日本の銀行預金者の腰が重すぎたりで、いままでは過激な事が起こってこなかった。いつ日本の信用がなくなるか、と言う話だからだ。不連続だ、連続だ、みたいな話もあるが、円の実質為替レートはどんどん下がっているし、日本の国力はどんどん下がっている。こういった話が意識された今年の前半、円はドル相手に大きく値を下げた。
2)日銀のバランスシートだけ見るのは無意味、政府と統合したバランスシートを見るべき。国債は相殺される。この意見の問題点は、国債を誰が買っているのかという問題だ。つまり、政府と日銀の国債分を帳消ししたとしよう。すると、私が銀行に預けている300万円のお金を没収し、かわりに私のアパートの前の国道の5坪分を与えましょう、みたいな話になる。政府の資産を直接保有出来て、良かったね、と。そういう話しが出る前に、私は勿論、銀行の預金を引き揚げる。
3)日本は資産がいっぱいあるので、問題ない。上の話をまず読んで欲しい。流動性のある資産の方が多い、という話もある。配当の出る様な資産も多くあるという。利率が少しでも上がってしまうと、配当の出る資産はディスカウントされる。利率を少しでもあげれば政府も日銀もかなりのダメージを背負ってしまう。
まあ、どちらにしても、解決方法がないので、建設的な議論をしても無駄である。要は、あなたがどうするか、という話だ。Youtubeの訪問者数を伸ばしたい三橋や藤井の話を鵜呑みにするのであれば、別に何もしないでぼーっとしておけば良いと思う。私は怖くて銀行にお金を置いておくとかは出来ない。