まあ、言い尽くされている感もあるが、トランプとバイデンの討論会は、それはそれは酷い物だった。FOXニュースのクリス・ウォレスが巧くさばけなかったという批判もある。クリス・ウォレスはFOXニュース内では良識派で、アジテートされたような意見を拒むまともなジャーナリストである。保守派からはFOXニュースの中では甘すぎるという評価が下る一方、リベラル派はFOXニュースの人という事で受け付けられない。私はクリス・ウォレスが大好きである。
トランプは、バイデンを熱くさせて自滅させる作戦を取った。自らの成果を語らず、相手の上げ足を取り、さらには極左からバイデンを切り離し、民主党の内ゲバを狙った感がある。結論から言うと、完全に失敗したと思う。バイデンは中道路線であることを強調したが、極左の人達は特に意見を述べていない。それによって若者の投票率が下がるかというと、それも違う気がする。
トランプは悉く、自らの成果をカメラの前で伝えるという事をしなかった。民主党員でも共和党員でもない中立の人たちにはアピールできなかったと思われる。きっちりと宿題をしていないんじゃないか、とさえ勘繰られてしまう。ゴタゴタだけが目立ってしまい、トランプが自滅したように映像的には見て取れた。
が、この作戦が悪かったのかどうかを論じるのは早すぎる。なんだかんだ言って、バイデンもトランプの挑発に乗ってきた。汚い表現を何回も使った。多くの視聴者は、アメリカの政治に対して諦めに似た感情を抱いたと思う。トランプの当初の目的だった投票率を下げるという目的に対しては、意外と上手く嵌った感がある。
まだ二回討論会が残っているので、トランプが急にまともな発言をしたりする事もあるのかも知れない。いずれにせよ、トランプ陣営は意外と深く考えてこの討論に臨んでおり、まだまだサプライズがあるかもしれない、と第三者的にはリアリティショーを見たような気になったのではないだろうか?
今のところ、トランプの再選の目はほぼ無いと見ているが、バイデン民主党の次の四年というものを考えると、結構気が重くなってしまう。
東京の人もトランプとバイデンくらい罵り合いを日常生活でしていれば、こんなにギスギスした社会にならなくても良いような気もする。