アメリカの住宅ブームは、2006年5月、バーナンキが利上げの演説を行った直後に終焉したと見られている。それまで天井知らずで上がり続けていた住宅価格の伸びが鈍化し、市場に住宅在庫が溢れるようになって来た。南フロリダ(マイアミ近郊)、カリフォルニア、ワシントンDCなど、ホットだった市場が崩れ始めた。2007年にはアメリカの平均住宅価格が1929年に始まった大恐慌以来始めてマイナスを記録することになるようだが、現在の住宅バブル崩壊は局地的に限定されており、まだ全米中の住宅価格が下がっている状況では無い。
アメリカの住宅市場がバブルの様相を呈していることは、日本では常識だった。しかし、残念ながらアメリカ人はそうは思っていなかったようである。シアトルの人達は、未だに住宅価格が下がるとは思っていない。シアトルに関しては価格の伸びは鈍化しているとはいえ、住宅価格が下がっている事実は全く無い。
ただ、市場には在庫が溢れている。現在がピークだと解っている人達が家を売り出している。しかし、皆強気で値引きしないので中々売れない。買い手は待っていれば住宅価格が下がるだろうと、のんびりと構えている。だから、在庫は余り、価格はまだ下がっていないのだ。今後は、首が回らずに持ち家を早く売る必要がある連中が、価格を下げてでも売り抜こうとするだろう。その時こそ、シアトルでも住宅価格が下がり始める瞬間だ。
アメリカではリスクフリーの金利が5%強つくので、年間で5%以上住宅の値段が上がらなければ、それは実質的には価格がマイナスに転じているのと等しい。つまり、実質価格はすでにシアトルでも下がり始めている。だが、名目価格が下げに転じると人々の心理状態は変ってしまうだろう。現在、投機目的で家を何軒も持つ人がいる。そのような人達が家を売り払い始め、住宅デフレのプレッシャーは日に日に増すことだと思われる。
シアトル近郊では、アパートの値段が近頃急激に上がっている。これは、家を買わずにアパートを借りる人が多くなっていることの証拠で、住宅市場の流動性が低下しているからだろう。街中のいたるところで、家やアパートの代わりに、タウンハウスが林立している。これは低所得者層をターゲットにすれば、税金を取得でき、空き家になるリスクが軽減されるからだ。今まで見なかったような場所に、コンドミニアムの広告がやたら増えた。ディスカウントの字すら良く目にするようになった。シアトルの住宅市場が下を向いていることは明らかだ。
だが、私がこのような意見を言うと、アメリカに住む多くの人達が敵意をむき出しにし、私に突っかかってくる。そんな事はありえない、と。日本でもバブルが崩壊する前夜はこのような状況であった。ある人達は、私の意見に対して、「それでは何年で住宅価格の調整が終わるのか?」と聞いてくる。そんなこと知る訳が無い。ただ目安としては、住宅ローンで支払わなければならない金額と、家を借りた場合に支払うレントが同じくらいになれば、住宅価格がフェアヴァリューに戻ったということではないだろうか?現在、大雑把に、モルゲージの支払いはレントの二倍以上である。調整が進んでしかりの状況であろう。
ここに書いた事は、これから起こりうるだろうストーリーだが、勿論、アメリカ政府や邦銀が黙ってみていない可能性もあろう。バーナンキは学者時代よりデフレーションこそが諸悪の根源だと言っている。デフレに落とさないために、アメリカがスタグフレーションの道に進む、などというシナリオも考えられなくはない。そこまでのハードランディングをせずに、インフレで低空飛行を続けるということも考えられよう。さらには、アメリカのバブルの損失を前話でも書いたように、日本に押し付けるという裏技は十分にある。実際に、日銀は日本があまりサブプライムの問題と関係ないはずなのに何故かオペを出した。つまり、日銀は、円キャリートレードで支払能力の無い人にお金を貸す行為を救済しようとしているのだ。まあ、政府が何をやるかは解らないが、私たちは個人で身を守るしかない。個人レベルでも、アメリカ不動産価格の調整というような素晴らしいチャンスを見逃さない手は無いだろう。
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8/13/2007
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