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8月, 2007の投稿を表示しています

宴の後に-アメリカ住宅バブルの崩壊

アメリカの住宅ブームは、2006年5月、バーナンキが利上げの演説を行った直後に終焉したと見られている。それまで天井知らずで上がり続けていた住宅価格の伸びが鈍化し、市場に住宅在庫が溢れるようになって来た。南フロリダ(マイアミ近郊)、カリフォルニア、ワシントンDCなど、ホットだった市場が崩れ始めた。2007年にはアメリカの平均住宅価格が1929年に始まった大恐慌以来始めてマイナスを記録することになるようだが、現在の住宅バブル崩壊は局地的に限定されており、まだ全米中の住宅価格が下がっている状況では無い。                        アメリカの住宅市場がバブルの様相を呈していることは、日本では常識だった。しかし、残念ながらアメリカ人はそうは思っていなかったようである。シアトルの人達は、未だに住宅価格が下がるとは思っていない。シアトルに関しては価格の伸びは鈍化しているとはいえ、住宅価格が下がっている事実は全く無い。 ただ、市場には在庫が溢れている。現在がピークだと解っている人達が家を売り出している。しかし、皆強気で値引きしないので中々売れない。買い手は待っていれば住宅価格が下がるだろうと、のんびりと構えている。だから、在庫は余り、価格はまだ下がっていないのだ。今後は、首が回らずに持ち家を早く売る必要がある連中が、価格を下げてでも売り抜こうとするだろう。その時こそ、シアトルでも住宅価格が下がり始める瞬間だ。 アメリカではリスクフリーの金利が5%強つくので、年間で5%以上住宅の値段が上がらなければ、それは実質的には価格がマイナスに転じているのと等しい。つまり、実質価格はすでにシアトルでも下がり始めている。だが、名目価格が下げに転じると人々の心理状態は変ってしまうだろう。現在、投機目的で家を何軒も持つ人がいる。そのような人達が家を売り払い始め、住宅デフレのプレッシャーは日に日に増すことだと思われる。 シアトル近郊では、アパートの値段が近頃急激に上がっている。これは、家を買わずにアパートを借りる人が多くなっていることの証拠で、住宅市場の流動性が低下しているからだろう。街中のいたるところで、家やアパートの代わりに、タウンハウスが林立している。これは低所得者層をターゲットにすれば、税金を取得でき、空き家になるリスクが軽減されるからだ。今まで見なかったような場所に、コンド...

サブプライム、クレジットクランチ、リキデーションクランチそして円高

アメリカでサブプライム・モルゲージ(低所得者層相手に高利で貸す住宅ローン)が焦げ付き始め、多くの貸し手が損を算上し始めた。モルガンスタンレーや英国系のHSBCがサブプライムで大損したという。さらにはサブプライムが原因で、飛ぶ鳥落とす勢いだったベアーズスタンの子会社が倒産したという情報まで入ってきた。7月の終わりにニューヨーク市場は暴落を始める。2007年前半は世界の株価が好調だった事も手伝い、利益確定売りが発生。マーケットは混乱し、売りが売りを呼んだ。株価のボラティリティーが異常に高くなり、ギャンブル相場に突入した。やがてサブプライム問題はクレジットクランチと呼ばれるようになった。つまり、誰にでも金を貸せないほど信用度が逼迫して来たのだ。ダウジョーンズ工業指数は一日の取引内で3桁のマイナスから3桁のプラスに転じるというような極端な動きをするようになった。 金融とは、資産の現在価値を見極める事であると言ってしまっても過言では無いだろう。現在価値を判断するためには、未来のキャッシュフロー(収入)と利率を予想しなければならない。企業にとっての利率とは資金調達コストであり、非常に厄介な指標だ。何故なら、中央銀行が都合によって金利を変えるし、リスクが高ければ高い利率を用いることになる。 まさに、ここ数年、問題があったのはリスクの評価であろう。大手の投資家は、リスクをほとんど無視していた。顕著な例は、発展途上国の国債の取引だ。普通、発展途上国の国債の金利は先進国に対して高いものだ。だが、フリーマーケット下では、その分為替が動く上、発展途上国には異常なインフレが付きまとうもので、金利が多少高くともそんなに儲からないのが常識である。しかし、近年では、リスクがあまり顧みられず、利率が額面どおり儲かってしまう異常事態になっていた。極端な場合には、北朝鮮の国債などにまで投資銀行が手を出していた。 債権から株に話を移すと、外国株のETF(Exchange Trade Fund)やミューチュアルファンドがアメリカの株に比べて高い配当を持続的に叩き出した。個人レベルでも、法人レベルでも、外国株が飛ぶように売れている。 日本でも同じような傾向があった。為替が動かないので、日本株に比べて、外国株の配当が異常に高くついた。 そして、リスクに関する問題で、かなり深刻なのが上記で述べた住宅ローンだ。アメ...