10月11日の会合で、日銀は期待通りに利上げを見送った。投票した中で、水野温委員を除く8人が金利の据え置きに賛成した。理由は、「欧米の金融市場に改善の動きがあるが、米国経済が下ぶれする恐れなど不確実性がなお存在する」からであるという。 グローバリゼーションの進行した世界において、金利の上げ下げが日本国内だけの問題であると考えるのは余りにもお粗末である。マクロ経済学の一年生の授業では、金利を下げると、貯金の意欲がそられ、代わりに投資にお金が流れ、短期的に全体生産が上がる、という。しかし、それは鎖国状態の国を前提としたものだ。開放された国では、金利が下がると、外国投資の魅力が上がり、国内を対象としない投資にお金が流れやすい状態を作る。外国を対象に投資された金は国内総生産には含まれない。投資にお金が行き過ぎると、短期的に消費を押し殺すことも知られている。私達は、円キャリートレードの実体などを観察し、経験的に鎖国状態のマクロ経済が成り立っていないことを良く知っている。水野委員が主張する「円安バブル」はまさにこの点を指摘している。 それでは、金利を上げるとどうなるのか?多くの人が口を酸っぱくするように経済が悪化するのだろうか?企業の中には、自転車操業をし、金利が高くなると儲けを落とすところも多く存在するだろう。金利が上がると、消費が減って、貯金が増えすぎるという懸念もあるが、消費が十分低い日本では殆ど心配する必要がない。金利を上げると、日経指数が短期的に落ち込むのは確実だ。円が高くぶれるのも間違いない。しかし、直接的な影響は限定されている。 一番の問題は、円キャリートレードの旨みが薄れて、中国を含む新興市場から大量のジャパンマネーが返って来ることだ。すると、キャッシュフローを無視して、投資が投資を呼んでいた状況を大勢の人が危惧し始める。ポートフォリオの見直しが進み、ある程度のお金が新興市場から引き上げると、パニックを引き起こし、株価が暴落し始めることすら考えうる。そのシナリオを世界が危惧する。多くの日本人にとっては、中国の明るい未来というシナリオが狂い、将来の利益を逼迫しかねない事態になる。それは、どんなことをしてでも反対しよう、という圧力が国内からかかるのである。しかし、その程度で弾けるようなシナリオであれば、要するにそれは妄想であろう。投資が投資を呼ぶという状...
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