私は5年以上もアメリカで暮らしているのだが、そうするとアメリカの良い面も悪い面も公平に見えるようになった。人並みな感想だが、アメリカという国がとてつもなく豊かだと感じる一方で、様々な矛盾を抱えているとも感じる。だからと言って、アメリカに対する批判をする必要は無く、日本人としてアメリカが持つ優れたシステムだけを戦略的に取り入れていけばよいのだ。 日本とアメリカを比較した際、私が思うに、一番の違いは「社会システム」である。日本の「社会システム」は、残念ながらアメリカのそれと比べて30年は遅れている。社会システムを態々「」で囲っているのは、その定義が非常に怪しいからだ。故に、マクロな視点からではなく、ミクロなケースで見ていく必要がある。例えば、NPOの話をしたい。 日本でNPOと言えば怪しげな団体を思い浮かべられるかもしれない。社会主義者や左翼の吹き溜まりが、NPOと称して活動をしている場合も確かにある。日本ボーイスカウトや交響楽団、町おこしを活動している団体など、長期間に渡って実績を持つ優良なNPOも多々ある。しかし問題は、政策に関わるような洗練されたNPOは皆無であるという事だ。 アメリカではNPOが社会に密接に関わっている。例えば環境系のNPOであれば、町の小さなNPOでさえもPhD(博士号)取得者がいるのには驚かされる。独自の調査やパブリケーションを行い、市や州政府に政策の進言をしている。同時に経営の専門家もいて、資金面での遣り繰りも巧く行っている。大学生や院生たちがインターンとして活動に参加する。NPO同士、或いは大学や政府と組んで、リサーチやプロジェクトを行っているのも興味深い。政府は、自分たちが出来ないプロジェクトは直ぐにNPOに外注する。GIS(地理情報システム:コンピュータによる地図作り)や魚のポピュレーション調査など、政府が限られた予算や人員で全て出来る訳がないからだ。NPOは、サーモン専門、鳥専門、湖沼専門、地図製作専門、政策専門、ロビー専門、調査専門、市民とのコミュニケーション専門など、活動が特化している場合もある。 さらに、人材の流動性が面白い。先ほども言ったが、大学生や院生で環境に興味がある学生がインターンとして働く。大学を退官した教授などが、NPOの活動に参加する。大学院で学位を取った人達が、初めてのキャリアとしてNPOを選ぶ。政府で働いてい...
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