結論から言うと、非常に良かった。ダライラマ14世と会えば、多くの人が尊敬の念を抱くであろう、という事が解った。ダライラマ法王は80歳の高齢でありながら、冗談を愛し、機知の富んだ話をされる。私は、常日頃、冗談の上手さで相手の知性を測っている。大抵において、冗談が上手い人は非常に頭が良いものだ。このようなレンズで判断した所によると、ダライ・ラマ14世は、非常に頭が切れる人物であった。だが宗教家にありがちな、全てを知っているという態度を全くとらず、自分の専門外の事は解らないとはっきりとおっしゃった。知らないという事をはっきりと言う事は非常に難しいことだ。ダライラマ14世は、頭の切れと、謙虚さを兼ね備えた人物であるのだ。多くのアメリカの文化の端切れを齧った人のせいで勘違いされがちではあるが、謙虚さは日本だけではなく西洋でもはっきりと尊敬を持って受け入れられる物であるという事はここではっきりと記しておきたい。
ただ一つだけ悲しかったことがある。会場の外に、中国人学生(明らかに年上の連中も混じっていた)のグループが反ダライラマのデモを行っていたことだ。情報が閉ざされている中国国内でダライラマの事を悪く思うのは仕方ないのかもしれない。しかし、情報が溢れるアメリカに在住し、両方の立場から公平な情報に触れる機会を持つ中国人留学生がダライ・ラマに対して、反対のデモを行うというのは、理解に苦しむ。もう一つ理解に苦しむことがあった。中国人学生がダライラマに対して反対している映像は、中国人コミュニティーや共産党政府にとって非常にネガティブなものになるということだ。中国人が徒党を組んで、共産党政府が流布している信条を繰り返している光景は、多くの民主主義国家で生きている人間の目からすれば異様である以外の何物でもない。
恐らく中国共産党政府は、対外イメージ政策のことなど何も考えていないのだろう。共産党の一党支配が齎す幾千もの矛盾や不公平感の中で、どのように国内の人々を支配するかだけに興味があるとしか思えない。聖火リレーで、その都市に住む中国人を導入して歓迎行事をさせた映像を国内で流し、共産党政権の人気取りをする。それ以外に何も興味は無いのだろう。私は、いつの日か近い将来、中国共産党の縛りが解けた中国人の生徒達と、対等な立場で、タブーなく色々な事について討論できる日がやってくるものと信じている。ヤンキースファンとレッドソックスファンの怒鳴りあいのような状況は、球場とそのまわりの酒場だけにとどめておいて欲しいものだ。